【池原照雄の単眼複眼】トヨタの自動運転実験車で首都高を走る…2年で目覚ましい進化

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自動運転実験車「Highway Teammate」によるデモ走行
自動運転実験車「Highway Teammate」によるデモ走行 全 8 枚 拡大写真

すべてのシーンでクルマが自律判断

トヨタ自動車がレクサス『GSハイブリッド』をベースに改造した最新の自動運転実験車をメディア向けに公開し、首都高速道路内での同乗試乗を行った。自動車専用道路内での自動運転技術を搭載した車両であり、東京オリンピック・パラリンピックに間に合わせるよう2020年ごろの実用化を目指していく。トヨタは2013年秋にも首都高内で実験車をデモ公開しているが、この2年間での大幅な進化が確認できた。

今回、同乗試乗した首都高のコースは、江東区の有明を起点に片道約8km。予め首都高の走行区間を設定した実験車は、ETCゲート通過後に、ドライバーがハンドルに設置されたスイッチをONにすると自動運転モードに入った。他の車両やレーンなどを認識しながらウインカーを出しての本線合流、走行レーンや車間距離の維持、さらにレーンチェンジ、本線からの分流をすべてクルマが自律的に判断してこなしていく。

◆地図から得る3段階の制限速度に沿って走行

きつめのカーブが多い首都高だが、ハンドリングは滑らか。しかも、走行区間では50km/hから80km/hまで制限時速は3段階あったが、刻々と速度も変化させる。制限時速は、地図情報から得ているという。ドライバーに運転の責任が課せられている今の法規制に沿った実験車であり、ドライバーがハンドルやブレーキなどの操作を行えば、瞬時に自動運転モードが解除される。試乗中にそうした場面が一度あったが、再びモードスイッチを押すと、直ちに自動運転に復帰した。

2年前に「AHDA」(オートメイテッド・ハイウェイ・ドライビング・アシスト)という名称で公開した実験車両は、先行車両とITS(高度道路交通システム)専用の電波帯で車車間通信して追随走行しながら、走行レーンを維持できる技術だった。ブレーキングやハンドル操作をクルマに委ねるこの実験車も驚きだったが、今回のように合流やレーンチェンジはできず、その際はドライバーが操作していた。

本題からそれるが、2年前の車両で実験していたITS専用電波帯を利用した通信機能部分は、9月にマイナーチェンジした『クラウン』に車車間と路車間通信による安全技術「ITSコネクト」としてオプション設定されている。

◆消えたルーフ上の「トンガリ帽子」

自動車専用道で想定される様々な運転シーンをこなすようになった今回の実験車は、この2年のあらゆる技術要素の進化を示す。つまりレーダーやレーザーといった各種センサー、周囲の状況認識や操縦判断を下す人口知能、走路維持などに欠かせない高精度の地図情報などである。

例えば、これまでの自動運転車といえば、ルーフの上で円筒形のレーザーセンサーが回転するトンガリ帽子のような装置を付けてきた。レンジファインダーなどとも呼ばれ、周囲360度の状況を3次元で認識する重要なユニットだ。今回のトヨタの実験車では、この見栄えのよくない装置がルーフから消えた。装置を6分割して前後のバンパー内などに設置したためで、「2020年に向けて(センサー類は)より現実的な構成ができた」(BR高度知能化運転支援開発室の鯉渕健室長)と評価している。

◆長いようで短い(?)2020年までの時間

この2年の進化を考えれば、2020年よりかなり早い時期での市販もできそうな印象を受けた。だが、コストもそう気にせず、目下のもてる技術を注ぎ込んだ実験車を市販車までもっていくまでの距離は、まだありそうだ。

製品企画本部の葛巻清吾・安全技術企画主査は「クルマ側の技術だけではだめで、自動運転に対する市民の理解、さらに高精度な地図データや通信環境などインフラの整備も必要になる」と指摘する。また、鯉渕室長は「(センサーなどを)あらゆる気象条件などに対応できる普通の自動車部品にしなければならない」と話す。2020年までの4年余りは長いようで短い――開発のキーマンたちからは、そんなニュアンスも伝わってきた。

《池原照雄》

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