政府が推進する戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)の対象課題のひとつである「革新的燃焼技術」において、プログラムディレクター(PD)を務めるトヨタ自動車の杉山正則エンジン技術領域領域長は10月15日に都内で行われたシンポジウムに登壇した。
杉山PDは革新的燃焼技術で掲げている2020年までに乗用車用エンジンの最大熱効率を現在の39%から50%にまで引き上げる目標について「荒唐無稽なものでなく、実現可能性が高くなってきた」との見通しを示した。
杉山PDは立ち上げから1年間の成果として、約4ポイントの熱効率向上が実証できたことを報告。「SIPで50%を狙うために、本当にできるのかサイクルシュミレーションで、その熱効率を予測した。それに対して単気筒ではあるが実機で検証した結果、ほぼ同等の熱効率を確認できた」と明かし、目標の達成は可能と説明した。
その一方で「過去40年間で最大熱効率が10%しか上がらなかったのは事実で、それはエンジンに燃料を与えて、そのアウトプットから何が起きているか推定をするという最適解を追求する土俵がなかった時代がずっと続いたため」とも指摘。
このため「今まではアウトプットから推定していたが、それがかなり限界に近づいている。かつ規制などの要求もスピードアップしているので、この部分ではやはり大学の力、サイエンスの力で、その現象をもう一回解明し直すことをしないと次の10%は出てこないと思っている」と述べた。
その上で「今まではやれる範囲で最善を尽くした状態だったが、これから先はやれる範囲を超えて、もっと頑張るというのがSIPの目的だと認識している」と強調した。