【テスラ 自動運転 試乗】「未来の自動車像」でないことを証明した…山崎元裕

試乗記 輸入車
オートパイロット(自動運転)に対応したテスラモデルSによる公道走行
オートパイロット(自動運転)に対応したテスラモデルSによる公道走行 全 8 枚 拡大写真

テスラ『モデルS』のカスタマーにとって、最もエキサイティングな瞬間。それは、運転席と助手席の間にレイアウトされる17インチサイズのタッチスクリーンに、アップデートソフトウエアが提供されたことを意味するアイコンが示された時ではないだろうか。そのソフトウエアをダウンロードすることで、時にモデルSには新たな機能が追加されることになるからだ。

◆自動運転「レベル2」を達成

2016年1月15日にテスラから提供されたアップデートソフトウエアも、その象徴的な例だった。これによってモデルSのカスタマーは、おもに高速道路と自動車専用道路での使用を想定して開発された、「オートパイロット」、「オートレーンチェンジ」、そして縦列、直角のいずれにも対応する「オートパーク」の各機能を得ることになった。これらの機能が追加されたことで、モデルSはアメリカの運輸省道路交通安全局=NHTSA が定める、自動運転基準の「レベル2」を達成。日本においても国土交通省からの正式な承認が得られたのだ。

そもそもモデルSには、2015年1月以降にセールスされたモデルには、あらかじめミリ波レーダーと単眼の光学式カメラ、そして合計12個の超音波ソナー、バックビューカメラが装備されていた。これらの情報を融合させることで、テスラは自律自動運転技術を成立させようとしたのだが、そのためのラストステップこそが、このアップデートソフトウエアの提供だったというわけだ。

そのダウンロードを終え、自律自動運転が可能となったモデルSを、自動車専用道路に似たシチュエーションを持つ、東京都内の一般道でドライブすることができた。ちなみに試乗車はデュアルモーターの「P85D」で、走りが最もスポーティーなキャラクターとなるインセインモードをチョイスすれば、0-100km/hをわずか3.3秒と、スーパースポーツ並みの暴力的な加速をも可能にする。もちろん今回の試乗は、自律自動運転を体験することにあるから、そのパフォーマンスをフルに楽しむのは、また別の機会に譲らなければと自分自身を説得する。

◆「未来の自動車像」でないことを証明した

光学式カメラが車線を認識し、メーターパネルにステアリングホイールのアイコンが点灯、これまでもACCで使用してきたレバーを2回引くと、モデルSは自動運転走行を開始する。カメラからの情報に加え、ナビゲーションシステムのマップデータによって制限速度が認識されているため、巡航速度はもちろんそれを守る方向に制御される。前車の追従やステアリングの制御は自然なものに感じられるが、特に印象的だったのはステアリングの制御が入るタイミングだ。これまでも車線維持の制御は他車で経験していたが、これほど自然に車線の中央をキープし続けてくれる例は皆無だった。そのタイミングが人間の感覚にきわめて近いために、まったくストレスを感じさせることなく自動運転を楽しめるのだ。

オートレーンチェンジはウインカーを操作することで車線変更を自動的に行うものだが、それが可能かどうかのタイミングの見極めは、ドライバー自身が行わなければならない。また高速道路の退出路への車線変更にも、この機能は使用することはできないが、テスラはもちろん、将来的にはさらに上位のレベルの自律自動運転の実現を狙っているのは間違いのないところ。もちろんそのためには、車体側に搭載される各種システムにも、アップデートが必要になるのだろう。

今回追加されたもうひとつの機能であるオートパークは、縦列駐車のシチュエーションを試すことができた。操作プロセスは実にシンプルで、縦列駐車が可能なスペースがあると認識されるとアイコンを点灯。ドライバーがそのスペースへの駐車を望んだ時には、オートパークをスタートさせるアイコンをプッシュするだけで、ステアリングはもちろんのこと、ブレーキ操作、そして一度の操作で完全な駐車ポジションが得られない時には、切り替えしまでをも完全自動で行ってくれるのだ。比較的大柄なボディーサイズを持つモデルSだけに、この機能は日本のカスタマーには大いに魅力的なものだろう。ただしこの機能は残念ながら発進には対応していない。

テスラからの次なるアップデートとは、はたして何なのだろうか。カスタマーは毎日のように、アップデートソフトウエア提供のアイコンが示されることを楽しみにしているに違いない。この感覚は、もちろんこれまでの自動車にはなかったもの。それがもはや未来の自動車像ではないことを、テスラは見事に証明してみせた。

■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★
オススメ度:★★★★

山崎元裕|モーター・ジャーナリスト(日本自動車ジャーナリスト協会会員)
1963年新潟市生まれ、青山学院大学理工学部機械工学科卒業。少年期にスーパーカーブームの洗礼を受け、大学で機械工学を学ぶことを決意。自動車雑誌編集部を経て、モーター・ジャーナリストとして独立する。現在でも、最も熱くなれるのは、スーパーカー&プレミアムカーの世界。それらのニューモデルが誕生するモーターショーという場所は、必ず自分自身で取材したいという徹底したポリシーを持つ。

《山崎 元裕》

【注目の記事】[PR]

ピックアップ

教えて!はじめてEV

アクセスランキング

  1. 伝説のACコブラが復活、「GTロードスター」量産開始
  2. トヨタ『ランドクルーザー300』初のハイブリッド登場!実現した「新時代のオフロード性能」とは
  3. ようやくですか! 新世代ワーゲンバス『ID. Buzz』日本仕様初公開へ…土曜ニュースランキング
  4. 「三菱っぽくないけどカッコいい」ルノーの兄弟車となる『エクリプス クロス』次期型デザインに反響
  5. 【BYD シーライオン7 新型試乗】全幅1925mmの堂々サイズも「心配無用」、快適性はまさに至れり尽くせり…島崎七生人
ランキングをもっと見る

ブックマークランキング

  1. 低速の自動運転遠隔サポートシステム、日本主導で国際規格が世界初制定
  2. 独自工会、EV減速でPHEVに着目、CNモビリティ実現へ10項目計画発表
  3. 三菱が次世代SUVを初公開、『DSTコンセプト』市販版は年内デビューへ
  4. 「やっと日本仕様が見れるのか」新世代ワーゲンバス『ID. Buzz』ついに上陸! 気になるのはサイズ?価格?
  5. 米国EV市場の課題と消費者意識、充電インフラが最大の懸念…J.D.パワー調査
ランキングをもっと見る