ブリヂストン、先進安全技術を公開…センシング技術や次世代低燃費タイヤなど

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●CAIS 装着車両
●CAIS 装着車両 全 42 枚 拡大写真

ブリヂストンは4月9日に栃木県那須塩原市の同社プルービンググラウンド(試験場)にて、「春の安全イノベまつり」と名付けた、技術情報公開を行った。

このイベントではセンシング技術「CAIS(カイズ)」、次世代低燃費タイヤ技術「ologic(オロジック)」、疲れないタイヤ『Playz(プレイズ)PX』とその開発に用いた「感性アナライザ」について、プレゼンテーションと体験試乗が行われた。

センシング技術「CAIS(カイズ)」は、Contact Area Information Sensingの頭文字を取って名付けられたもので、タイヤ内部に加速度、圧力、温度などを計測するセンサーを取り付けてさまざまな情報を取得、処理して運転に活かしていこうというもの。センサーは物理的にタイヤ内部(トレッド面裏側)に取り付けられる。センサーと処理コンピューターは無線で接続されるため、配線は不要。センサーに必要な電気は同様にタイヤ内部に収められた振り子式発電機から供給される。

今回紹介されたのは、加速度センサーを使った路面状態の判別技術。タイヤ内でタイヤと共に回転しているセンサー部のトレッドが路面に当たる際と路面から離れる際に、センサーの加速度が急激に変化することから、このときの波形を解析することで路面状態を判別することが可能だ。

この技術はすでにNEXCO東日本のグループ企業であるNEXCOエンジニアリング北海道が2015年から冬季の道路管理に使用している。凍結防止剤を散布する際にどこに散布すればいいかを判断するためにセンサーを取り付けたクルマを走行させている。凍結防止剤は一度作ってしまうと、その全量を散布しなければならず、散布量を決められることはコストダウンと環境保護に役立つという。

また、NEXCOエンジニアリング北海道用としては、加速度センサーのほかに車外に集音マイクを設置している。これは極弱い雨で路面が濡れているセンシングするためのもの。路面のすき間などに入り込んだ水分がタイヤによって蒔きあげられると、それが凍結してブラックアイスバーンを形成するからだ。

現状ではこうしたことに使われているが、今後はさまざまな制御に使用が可能。たとえばABSの制御に使用することでより効果的な制御ができるという。現在の急制動では路面の状況に関係なく、初期制動は高めの油圧が掛かるにようになっているが、路面状況が把握できるようになればそれに合わせた油圧で制動を開始することができ、より効果的な作動が可能になるといったようなこと。クルマのなかで唯一路面と接しているタイヤから、直接的な情報が得られるようになれば、クルマが一気に進化する可能性も高い。

一方、次世代低燃費タイヤ技術「ologic(オロジック)」は、簡単にいってしまえば幅を狭くし、代わりに径を拡大したプロファイルを採用するタイヤを生み出した。その技術はBMWの電気自動車『i3』にも採用された。従来では考えられないような高い内圧を採用するのも大きな特長。幅は狭くしても大径としたことで接地面積はほぼ同等を確保、約30%のころがり抵抗軽減を実現した。さらに幅が細くなることで空気抵抗も減る。

ただし、タイヤ径が大きくなるため、装着できるクルマが限られるのも大きな難点。従来タイヤは自動車メーカーがサイズを指定し、そのサイズで要求性能を満たすように設計するが、「ologic」はブリヂストンがタイヤとして何ができるかを提案しているので、現在存在するクルマとのマッチングが悪くても仕方ない。一部の小型車では装着したはいいもの、タイヤハウスに余裕がまったくなくステアリングが切れないこともあったという。

「ologic」は実際にステアリングを握っての体感が許された。試乗車は日産『リーフ』で、装着された「ologic」タイヤのサイズは165/60R19。比較用として205/55R16サイズの『ECOPIA(エコピア) EX20』を履いたリーフも用意された。試乗した「ologic」タイヤはBMW i3用とは異なる新しいトレッドパターンを採用したモデルで、空気圧は320kpaとなっていた。

「ologic」の注目点はまず第一に、特殊なプロファイル、特殊な内圧であるのに関わらず、普通のタイヤと同じように乗れてしまうところ。細いトレッド面を見たら、プアに感じて当たり前だが、これがびっくりするぐらいに普通に走れてしまう。さらにコーナリングなどに関しては比較タイヤよりもコーナリングフォースの立ち上がりが鋭く、クイックなハンドリングを楽しめる。

乗り心地に関してもダンピングが効いたもので良好。タイヤ外径が大きいということは、それだけフラットに近づくことと同様なので、快適性が増すのは当然のことだ。それでいてウェット時の排水性やグリップ性能でも従来タイヤをしのぐ。そして、もちろんのことだが燃費性能も高いのだから、「ologic」の潜在性能は非常に高い。現在も多くのメーカーから数多くの問い合わせがきているといい、業界全体としての関心度の高さがうかがえる。

《諸星陽一》

諸星陽一

自動車雑誌の編集部員を経て、23歳でフリーランスのジャーナリストとなる。20歳代後半からは、富士フレッシュマンレースなどに7年間参戦。サーキットでは写真撮影も行う、フォトジャーナリストとして活動中。趣味は料理。

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