【日産 e-NV200 試乗】走りの良さや維持費は魅力だが航続距離は大きな課題…松下宏

試乗記 国産車
日産 e-NV200
日産 e-NV200 全 11 枚 拡大写真

『e-NV200』はガソリン車の『NV200』をベースに、『リーフ』用の電気モーターやリチウムイオン電池を搭載して作られた電気自動車で、乗用車のワゴンと商用車のライトバンの設定がある。

外観デザインはともかくインテリア回りの仕様は、商用車ベースのクルマなので何とも安っぽいイメージで、電気自動車らしい未来感覚が薄いのは残念なところだ。

リーフに比べるとミニバンボディは重いため、航続距離はやや短くなって7人乗り仕様で185kmとされている。実質的に走れるのは100km程度と考えたら良いだろう。

走りの元気の良さは正に電気自動車のものだ。車両重量はガソリン車のNV200に比べるとざっと300kgほど重い1660kgもあるが、瞬時に254Nmの最大トルクが立ち上がる電気モーターの特性から、走り出した瞬間から力強い加速が得られる。

信号待ちからの発進や高速道路の合流車線での加速など、加速を必要とするときにアクセルを踏み込めば、ガソリン車とは比較にならない俊敏な走りを示してくれる。

市街地での通常の走りは静かで滑らかなものだ。乗り心地も含めて快適そのものである。信号待ちのときなど、オーディオを聞いていないと室内はしんとした静けさに包まれる。車外音はそれなりに入ってくるが、ガソリン車のような振動や騒音はない。

操縦安定性の高さは背の高いミニバンボディとは思えない。車体中央の低い位置に、重いリチウムイオン電池を搭載しているので、重心高が低くなって安定性に優れた走りを実現する。パイロンスラロームを試すとスポーティカーのような安定性を示した。

ガソリン代に比べると電気代はべらぼうに安いので、買った後の維持費が安上がりだ。金額は条件によって異なるが、年間では少なくとも10万円以上は安上がりになる。購入時のイニシャルコストは高いものの補助金も含めて考えると、トータルの経済性で電気自動車が有利になる。

問題は航続距離だ。自宅での充電をベースに考えると、実質100kmの航続距離では片道50km先にまでしか行けない。現在では充電スタンドの数が増えて出先で急速充電をするのも容易になってきたが、それでも充電を繰り返しながら遠出をするというのは余り現実的ではない。

24kWhの電池が空に近い状態で充電を始めると、満充電にするのに30分×2回が必要だ。充電スタンドに先客がいたら、更に待ち時間が加わる。なので一般のユーザーが使うワゴンとしては、必ずしも良いクルマとはいえない。

逆に商用車ならe-NV200が条件に合うケースが出てくる。限られた都市内でルートセールスをするような業種であれば、夜に充電して昼間走らせるという理想的な使い方ができる。ワゴンよりもライトバンの方に可能性があるのがe-NV200だと思う。

■5つ星評価
パッケージング:★★★
インテリア/居住性:★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★★
オススメ度:★★

松下宏|自動車評論家
1951年群馬県前橋市生まれ。自動車業界誌記者、クルマ雑誌編集者を経てフリーランサーに。税金、保険、諸費用など、クルマとお金に関係する経済的な話に強いことで知られる。ほぼ毎日、ネット上に日記を執筆中。

《松下宏》

【注目の記事】[PR]

ピックアップ

教えて!はじめてEV

アクセスランキング

  1. 【メルセデスベンツ Eクラスオールテレイン 新型試乗】Eクラスを選ぶならこれが一番。ただしお値段は…中村孝仁
  2. どこだ? 日産が7工場を閉鎖予定---可能性のある工場すべてをリストアップした
  3. 地面が光る「埋込型信号」が日本初導入、「横断歩道がわかりやすくなった」効果に期待
  4. インフィニティの中型SUV『QX60』、改良新型は表情一新…初の「SPORT」も設定
  5. マツダ『CX-5』新型、7月10日世界初公開へ
ランキングをもっと見る

ブックマークランキング

  1. リチウムイオン電池の寿命を2倍に、矢崎総業、バインダフリー電極材料を開発
  2. 茨城県内4エリアでBYDの大型EVバス「K8 2.0」が運行開始
  3. 低速の自動運転遠隔サポートシステム、日本主導で国際規格が世界初制定
  4. 独自工会、EV減速でPHEVに着目、CNモビリティ実現へ10項目計画発表
  5. コンチネンタル、EVモーター用の新センサー技術開発…精密な温度測定可能に
ランキングをもっと見る