【アルファロメオ MiTo 試乗】ドライビングに夢中になるのは「血が通っている」から…森口将之

試乗記 輸入車
アルファロメオ MiToと森口将之氏
アルファロメオ MiToと森口将之氏 全 24 枚 拡大写真

『MiTo(ミト)』が日本に上陸したのは2009年だから、すでに7年が経過していることになる。でもまったく古びていなかった。むしろ個性という面では、相変わらずこのクラスでダントツじゃないだろうか。

伝統の盾に丸いヘッドランプ、オフセットしたライセンスプレートからなるフロントマスクも、やはり丸にこだわったリアコンビランプも、5人乗りのハッチバックとは思えないほど大胆。むしろミッドシップスポーツ『4C』と似ている。3ドアオンリーであることも、スポーツカーっぽい顔やお尻に合っている。好き嫌いがはっきり分かれそうなほど攻めた造形、さすがアルファだ。

ディテールも凝っている。たとえばルーフエンドのアンテナは、単なる丸棒ではない。空力特性を考えて、断面が楕円になっているのだ。リアゲートの“MiTo”のロゴも、たぶんイタリア以外では生まれ得ないだろう。細部にまで手を抜かない仕立てが飽きさせない。

キャビンに入ると、今度はイタリアンブランドならではの粋なコーディネートに魅了される。ブラックとグレーの2トーンでまとめたインパネは、シックなスーツ姿を思わせる。だからこそ、キャメルカラーのレザーシートが映える。張りの強い着座感ともども、クラスを超えたクオリティを実感する。

それでいて実用性も高い。スポーツカー的なスタイリングの3ドアからは想像できないかもしれないが、3人掛けの後席は身長170cmの僕ならひざの前も頭上も余裕を残して座れる。リアのエンブレムを押してアクセスする荷室も、予想以上に深い。おしゃれなだけじゃないのだ。

ミトのエンジンは吸気バルブの駆動にカムシャフトを使わず、油圧を用いるという独創のテクノロジー、マルチエアを採用した1.4リットル直列4気筒ターボ。最高出力135ps、最大トルク19.4kgmなので、1260kgのボディを軽々と加速させてくれるのだが、キモはそのときの加速感にある。

ターボの癖は最小限で、発進直後からリニアに力を盛り上げていく。そのときに発するフォーンという響きがとにかく心地良くて、「この先はどうなっているんだろう?」と、ついついパドルを弾いて右足を踏み込んでしまうのだ。

もちろんマルチエアはそんな気持ちに応えるように、スーッと爽快に吹け上がってくれる。おとなしく走っているとスムーズな6速デュアルクラッチ・トランスミッションも、ギアのつながりが心地良いのは元気に駆けているときだ。

セレクターレバーの奥にあるアルファ・ロメオD.N.A.のスイッチをN(ノーマル)からD(ダイナミック)に切り替えると、エンジンやトランスミッションのレスポンスが鋭く、ステアリングが重くなる。こっちが本来の姿だと思ってしまうほど、回したくなるエンジンにドンピシャだ。

ステアリングもまたその気にさせる。切れ味がシャープだからだ。しかもドライバーが求めれば、それに見合った快感を返してきてくれる。コーナーの入り口でブレーキ掛けると、導かれるようにスッと車体がインを向き、前後輪をバランス良く接地させながらコーナーを抜けていってくれるのだ。

路面の状況を伝えつつ不快なショックはたくみに抑え込む乗り心地もそうだが、ただ速く鋭いだけでなく、そこに血が通っている。だからドライビングに夢中になれるんだろうと、ひさびさにミトのステアリングを握って思った。

■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★
オススメ度:★★★★

森口将之|モータージャーナリスト&モビリティジャーナリスト
1962年東京都生まれ。自動車専門誌の編集部を経て1993年に独立。雑誌、インターネット、ラジオなどで活動。ヨーロッパ車、なかでもフランス車を得 意とし、カテゴリーではコンパクトカーや商用車など生活に根づいた車種を好む。趣味の乗り物である旧車の解説や試乗も多く担当する。また自動車以外の交通 事情やまちづくりなども精力的に取材。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。グッドデザイン賞審査委員。

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《森口将之》

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