【ポルシェ 718ボクスター 海外試乗】自然吸気時代のフィーリングに迫る、4気筒ターボ…山崎元裕

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ポルシェ 718ボクスター
ポルシェ 718ボクスター 全 24 枚 拡大写真

ポルシェのミッドシップ・オープンスポーツ『ボクスター』がビッグマイナーチェンジされ、新たに『718ボクスター』のネーミングが与えられることになった。この718の称号は、1950年代から1960年代にかけて、モータースポーツでポルシェに数々の栄光をもたらした、『718』に由来するものであり、それは同時に今回の718ボクスターにおける、技術面での最大のトピックスを物語っている。

動力性能と環境性能を両立させることは、もはや世界中の自動車メーカーにとって最優先すべき課題だ。ポルシェとてその例外ではなく、この718ボクスターでは搭載エンジンをこれまでの水平対向6気筒から、水平対向4気筒へと変更。それが718のネーミング復活の直接の理由であることはいうまでもない。当然のことながら排気量は従来のモデルから縮小されたが、そのハンデをターボによる過給によって補われる、というよりも自然吸気時代からさらなるエクストラが得られている。

まずはベーシックモデルとなる、300psの2リットル水平対向4気筒ターボエンジンを搭載する、718ボクスターのステアリングを握る。ミッドにエンジンを搭載する関係から、ターボは車体の中央線上からオフセットする位置に搭載され、したがってエグゾーストマニフォールドは、左右で不等長のデザイン。それが排気効率、そしてエグゾーストサウンドにどのような影響を与えているのかが、ドライブ前の最も大きな関心事だった。

ポルシェのエンジニアは、不等長エグゾーストは排気効率にはほとんど悪影響を与えないと説明するが、あくまでも個人的な感覚に委ねられるサウンドの第一印象は、個人的にはやや残念に思えるものだった。特に低速域で耳に届くサウンドは好みとは大きくかけ離れたものだった。

一方でエンジンのパフォーマンスは、実に魅力的なものだった。アクセルペダルを踏み込むと、トルクは低速域で一気に立ち上がり、ここからナチュラルに力強さを増していく。驚くべきはターボラグという言葉などとは無縁のレスポンスで、それは自然吸気時代のフィーリングにも確実に迫る。ちなみにベーシックな『718ボクスター』ではウエイストゲートによる過給圧の制御が、そして最高出力が350psとなる2.5リットル仕様の『718ボクスターS』では、加えて可変ベーンによる制御を加えた、バリアブルジオメトリー式のターボをポルシェは採用している。

Sのエンジンフィールは、もちろん50psのアドバンテージをダイレクトに感じさせてくれるもの。高速域でのアクセルレスポンスはさらに鋭くなり、スムーズさにもより大きな魅力が生み出されている。ミッションは、いずれのモデルでも6速MTと7速PDKのチョイスが可能だが、今回のドライブで特に好印象を得たのは2ペダルの7速PDKだった。その制御のスムーズさは、多くのメーカーが採用するデュアルクラッチ式ミッションの中でも特筆すべき存在といえる。

シャシーの進化も、718ボクスターへのマイナーチェンジでは見逃すことのできないポイントだ。リアサスペンションにはラテラルメンバーが追加され、それによって0.5インチワイド化されたリアホイールからの入力に対応している。前後のダンパーもリファインされ、結果としてコーナリング時の動きは、よりジェントルに、そして同時にミッドシップスポーツとしての軽快さを感じるようになった。直進付近でギア比を高めたことで、ステア時にはよりリニアなノーズの動きを感じるようになったコーナリングは、やはり718ボクスターの走りを最も魅力的に感じるシーン。

走りの魅力は、今回のマイナーチェンジによって確実に高まったと評価してよいだろう。これだけの進化を感じるのならば、例のサウンドの変化など、大きな問題とすべきではないのかもしれない。718ボクスター、そしてそれに続くクーペモデルの『718ケイマン』。ポルシェのミッドシップ2シーター・シリーズは、これからさらに市場での注目度を高めそうだ。

■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★★
オススメ度:★★★★

山崎元裕|モーター・ジャーナリスト(日本自動車ジャーナリスト協会会員)
1963年新潟市生まれ、青山学院大学理工学部機械工学科卒業。少年期にスーパーカーブームの洗礼を受け、大学で機械工学を学ぶことを決意。自動車雑誌編集部を経て、モーター・ジャーナリストとして独立する。現在でも、最も熱くなれるのは、スーパーカー&プレミアムカーの世界。それらのニューモデルが誕生するモーターショーという場所は、必ず自分自身で取材したいという徹底したポリシーを持つ。

《山崎 元裕》

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