【プジョー 308 ディーゼル 試乗】いま買えるベストなディーゼル…中村孝仁

試乗記 輸入車
プジョー 308 Allure
プジョー 308 Allure 全 16 枚 拡大写真

タイトルに現在買えるベストなディーゼルと書いたが、あくまでも同セグメントもしくは同価格帯という断わりを入れようと思う。勿論その上のセグメントをも凌駕しているのだが、すべてではないからだ。

それにしても昨年の東京モーターショーで、プジョーはディーゼルを日本市場に投入するとアナウンスしたが、同じPSAグループのシトロエンやDSを含めると、一気に全9モデルにディーゼルを投入するということで、恐らくはディーゼル比率が、相当に高くなることが予想される。

『308 Allure』と呼ばれるモデルは、その中でもベーシックな1.6リットルBlue HDiを搭載するモデルで、その価格はハッチバックで300万円を切る299万円に設定された。相当に戦略的な価格で打って出たことになり、ガソリンのAllureと比較して価格差は20万円。恐らくはガソリンモデルと最も価格差の小さなディーゼルだといえよう。

ガソリンでも僅か1.2リットルながら、130ps、230Nmのパフォーマンスを持っていたプジョーのエンジン、これがディーゼルになると、1.6リットルモデルは120ps、300Nmとなる。1.6リットルという排気量のディーゼルモデルは日本市場ではプジョーだけ。もっとも近いマツダの1.5リットルと比較しても、『デミオ』ディーゼルが、105ps、220Nmだから、たった100ccの差が如何に大きな差となっているか、理解できると思う。

敢えて、試乗記で1.6リットルのAllureと2リットルの「GT」をわけたのは理由がある。それは性能の違いもさることながら、単に排気量を変えただけのエンジンではなく、その構造からして全く異なることや、ギアリングからタイヤサイズが大きく異なるなど、乗り味がまるで異なることからである。

まずそのエンジンの構造に関してだが、ボア×ストロークが全く異なることはともかくとして、2リットル車は後方排気であるのに対し、1.6リットル車は前方排気、即ち吸排気の位置が真逆だということだ。1.6リットル車に乗って圧縮比が17.0と高い割に実に静かだったのは、このあたりにも理由があるのかもしれない。

今回Allureの試乗車は24.8万円高いSW、即ちステーションワゴンモデルである。多少値段は高いが、こいつが個人的にはベストだと思った。その理由は、しなやかなかつてのプジョーらしい猫足が戻っている(ハッチバックもだ)ところへもってきて、ホイールベースで110mm長く、車重が60kgほど重いことで、とりわけリアオーバーハングが長いことから、前後の重量バランスが取れていて、実に乗り心地が良く、ハンドリング性能が高いことによる。

新しい308は安全面でも配慮がなされ、数多くの安全デバイスを標準装備する上、ACCやLEDヘッドライトなども標準装備されるから、装備はかなり充実しているといえよう。エンジンをかけていざスタート。アイドリングから実に静かで、コロコロという(ガラガラではない)ディーゼル音は届くものの、走り始めてしまえばそんなものは全く耳に届かなくなるほど静粛性が高い。フルスロットルで加速すれば、それなりにディーゼル音は聞こえるが、終始気になることは皆無であった。

そして驚かされたのは、そのレスポンスと運動性能、それに乗り心地だ。昔の猫足はスラローム走行をすると速い転舵に対して徐々にステアリングの位相遅れが発生したが、しなやかさをキープしたままその位相遅れを感じさせなくなった。快適この上ない乗り心地はこのクラスのベンチマーク車も脱帽せざるを得ないものだ。

燃費については試すほどの距離を走れなかったが、JC08モード燃費は21.0km/リットル。SWの場合は323.8万円となるが、重量税と取得税は100%減税されるうえ、自動車税も概ね75%減税されるというから、ガソリンモデルとさほど変わらない価格で手に入れることが出来る。勿論ハイオクに比べて、軽油はおおよそリッターあたり30円安く、しかも確実に燃費はこちらが上。300Nmで余裕の走りを持つとなれば、ディーゼルになびくのは当たり前。この値段と性能、それに乗り心地を加味したら、並み居る強敵を前にしてもベストなディーゼルといえよう。

■5つ星評価
パッケージング ★★★★★
インテリア居住性 ★★★★★
パワーソース ★★★★★
フットワーク ★★★★
おすすめ度 ★★★★★

中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、その後ドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来38年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。

《中村 孝仁》

中村 孝仁

中村孝仁(なかむらたかひと)|AJAJ会員 1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来45年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。

+ 続きを読む

【注目の記事】[PR]

ピックアップ

教えて!はじめてEV

アクセスランキング

  1. 「やっと日本仕様が見れるのか」新世代ワーゲンバス『ID. Buzz』ついに上陸! 気になるのはサイズ?価格?
  2. 最後のフォードエンジン搭載ケータハム、「セブン 310アンコール」発表
  3. 高機能ヘルメットスタンド、梅雨・湿気から解放する乾燥ファン搭載でMakuake登場
  4. 船上で水素を製造できる「エナジー・オブザーバー」が9年間の航海へ
  5. 「三菱っぽくないけどカッコいい」ルノーの兄弟車となる『エクリプス クロス』次期型デザインに反響
ランキングをもっと見る

ブックマークランキング

  1. 米国EV市場の課題と消費者意識、充電インフラが最大の懸念…J.D.パワー調査
  2. 低速の自動運転遠隔サポートシステム、日本主導で国際規格が世界初制定
  3. 「やっと日本仕様が見れるのか」新世代ワーゲンバス『ID. Buzz』ついに上陸! 気になるのはサイズ?価格?
  4. BYD、認定中古車にも「10年30万km」バッテリーSoH保証適用
  5. 「あれはなんだ?」BYDが“軽EV”を作る気になった会長の一言
ランキングをもっと見る