【スカニア 新型発表】サステイナブルな未来へ進化する大型トラック

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新型スカニア。用途によって高さや幅の異なるさまざまなキャブ(運転台)が用意されるが、今回発表されたのは背の高いハイキャブ仕様。
新型スカニア。用途によって高さや幅の異なるさまざまなキャブ(運転台)が用意されるが、今回発表されたのは背の高いハイキャブ仕様。 全 23 枚 拡大写真

スウェーデンの商用車大手であるスカニアが23日、パリで新世代大型トラックの発表会を開催した。95年にデビューした“4シリーズ”以来、実に21年ぶりとなるフルチェンジ。同社が新型車にかける意欲は、パリ中心部のグランパレを発表会場に選んだことで充分に窺い知れる。1900年のパリ万博のために建てられた歴史的な展示会場だ。しかし、それだけではなかった。

手荷物検査を経てグランパレに入り、案内に従って仮設の通路に進むと、まずその壁面に描かれたメッセージに目を奪われた。地球温暖化や人口増などの環境問題、さらには物資輸送量の増大、コネクテッド・デバイス(ネット接続機器)の劇的な普及といった昨今話題の社会現象が、簡潔なグラフィックスと文章で掲示されている。

最後のパートに書かれていたのは「モノと人の移動について根本的に考え直すときだ。だから我々はサステイナブルな輸送システムへのシフトを加速する」。大上段に構えた力強いメッセージこそ、スカニアの本気度を表現するものだ。

やがて発表会が始まると、販売/マーケティング担当のクリスチャン・レビン副社長がスカニアの歴史を紹介。続いて来賓として、元国連事務総長のコフィー・アナン氏が登壇した。いわゆるサプライズ・ゲストだ。アナン氏は持続可能性=サステイナビリティの重要性を説き、「低炭素ソリューションはもうすでに利用可能であり、多くの人がそこに参加することが必要だ」と訴えた。

そしてスカニアのヘンリク・ヘンリクソン社長兼CEOが壇上に登場し、「サステイナビリティとプロフィットは両立できる」と、これまた力強く表明。「無駄を省くのは我々スカニアのDNAだ」とした上で、コネクティビティや代替燃料、エネルギー効率化に向けた同社の取り組みを紹介した。

コネクティビティについては、欧州ではすでに20万台以上のスカニア車の走行データがリアルタイムで収集されているとのこと。20億ユーロを投資して作り上げたシステムだ。このデータの分析結果が個々のユーザーにフィードバックされ、例えばメンテナンス時期が近いと判断したら、スカニアがユーザーに知らせるという。「私たちに電話しなくて結構です。私たちからご連絡しますから」とヘンリクソン社長兼CEO。

壇上左右から2台の新型スカニアが登場すると、会場の熱気はピークを迎えた。ヘンリクソン社長兼CEOが新型に込めた思いを述べた後、商品説明はクリスチャン・レビン副社長。そのなかで印象的だったのが、「燃費を5%改善した」という言葉だ。内訳は「エンジンの改良で3%、空気抵抗の低減で2%」であり、「年に15万km走るなら、2000リットルの燃料を節約できる」。だから前述のように、「サステイナビリティとプロフィットは両立できる」のだ。

レビン副社長はさらに今後の顧客サービスの方針を説明。コネクティビティで収集した走行データを活用し、「テイラーメイドのアプリケーションを提供していく」という。メンテナンス情報だけでなく、個々のユーザーの実情に即した燃費改善策の提案やドライバーに対するエコ運転のトレーニングなど、包括的な取り組みがそこに含まれる。

スカニアの大型トラックは欧州で、メルセデスやボルボなどの競合車に比べて必ずしも価格が安いわけではない。しかし耐久性や燃費の良さでランニングコストを抑えられることがユーザーに評価され、シェアを伸ばしてきた。新型はその勢いを受け継ぎ、さらに進化させる存在と言えるだろう。大型トラックの世界におけるサステイナブルな未来に向けた一歩が、グランパレという由緒正しき場所で確かに刻まれたのである。

《千葉匠》

千葉匠

千葉匠|デザインジャーナリスト デザインの視点でクルマを斬るジャーナリスト。1954年生まれ。千葉大学工業意匠学科卒業。商用車のデザイナー、カーデザイン専門誌の編集次長を経て88年末よりフリー。「千葉匠」はペンネームで、本名は有元正存(ありもと・まさつぐ)。日本自動車ジャーナリスト協会=AJAJ会員。日本ファッション協会主催のオートカラーアウォードでは11年前から審査委員長を務めている。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

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