廃止まで3カ月足らず…留萌線廃止区間全駅を訪れてみた

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留萌線の終点・増毛駅の構内。休日は列車が到着するたびにマニアや観光客で賑わう。
留萌線の終点・増毛駅の構内。休日は列車が到着するたびにマニアや観光客で賑わう。 全 21 枚 拡大写真

ローカル線問題に揺れるJR北海道にあって、収支が一番悪い区間が留萌線留萌(留萌市)~増毛(増毛町)間16.7kmだ。JR北海道は4月28日付けで国土交通省に同区間の鉄道事業廃止を申請しており、12月4日限りでの廃止が事実上決定している。

JR北海道が発表している2014年度の線区別収支状況によると、留萌~増毛間の営業係数は4161(100円を稼ぐのに4161円かかる)。2番目に悪い札沼線(学園都市線)北海道医療大学~新十津川間の1909、3番目に悪い石勝線新夕張~夕張間の1247と比べても2倍以上の開きがある。まさに断トツのワースト1だ。

留萌~増毛間は、全線の大半が「日本海オロロンライン」の通称を持つ国道231号線と並行しており、ここに沿岸バスの留萌別刈(増毛)線が1日9往復運行されている。鉄道の場合、一部区間が集落の多い国道から離れていることに加えて、線路脇に斜面が多く、融雪期になると土砂崩壊や雪崩の危険性があるため長期運休になることがしばしばあった。その場合は代行輸送が行われたものの、タクシーで足りるほどの輸送量だったという。

鉄道が廃止される場合、早朝・夜間の輸送が問題となっていたが、JR北海道がこの点を含めた代替公共交通機関の整備を条件に、留萌市長と増毛町長が今年4月までに廃止に合意している。廃止打診の報道が流れてからおよそ10カ月での決着で、2年半の猶予が与えられている石勝線新夕張~夕張間とは対称的とも言える状況だ。そんな留萌~増毛間の全駅を、列車と徒歩を交えて訪れてみた。

深川から乗車した11時08分発増毛行き4925Dは、お名残乗車が集中する日曜日とあって3両編成。うち1両は回送扱いで、留萌到着後は深川行きの4928Dとなる。ふだんは1両だけの留萌線にあって3両はなかなかの長大編成だ。発車ぎりぎりに乗り込むと、キハ54形の座席はロングシートも含めてほぼ満席。JNRマークが付いた扇風機はぶんぶんと音をたてて回っているが、人いきれで車内はむんむんとした空気が充満していた。不思議なことに窓を開けている人はあまりいないが、なかには窓に吸盤を付けてそこにビデオカメラを固定して車窓風景を撮影している猛者もいた。廃止が近くなるとこうした人をよく見かけるようになるが、一種の流行のようにもなっているのだろうか。

留萌に到着すると、回送となっていた深川寄りの1両が切り離される。このため停車時間は13分と余裕があるが、筆者が乗車した日は深川で接続する特急が5分遅れた関係で、留萌にはその分延着。切離し作業はかなり慌ただしく行われていた。

留萌を発車しても、4925Dはますます混雑が激しくなり、立ち客まで出る状況に。筆者は終点・増毛のひとつ手前の箸別(増毛町)で下車したが、1両分にも満たないような短いホームだけの駅に4人が降り立ち、たちまち撮影大会に。この駅の1日あたりの平均乗降数は1人以下(限りなくゼロに等しい)だから、数人が降り立つと、もはや日常とは言えない光景になる。

増毛から折り返してきた上り列車に乗り次に訪れたのは、留萌のひとつ隣の駅である瀬越(留萌市)。この駅は高台の下に位置する、日本海を望むなかなか風光明媚な駅で、駅の背後からは日本海を入れて進入する列車を撮ることができる。ただしこの季節は夏草が生い茂っているため、坂道を相当高く上らないと、春先のようにすっきりと撮ることはできない。ここでは筆者を入れて2人が下車したが、すでに車で来た先客が3人ほどいて、平均乗降人員が10人以下に過ぎないこの駅にしては、またしても相当な賑わいとなった。

1時間ほどで留萌から折り返してきた下り列車を待って、隣の礼受(留萌市)へ。ここは「ヨ」と呼ばれる、貨物列車用の古い緩急車を待合室にした、いわゆる「貨車駅」だが、待合室はだだっ広いホームとは不釣り合いな感じがする。ここからも海は見えるものの、瀬越のようにすっきりとした眺めではなく、下り列車は次第に国道沿いから離れて行く。ここからは列車ダイヤの都合で朱文別駅まで徒歩。鉄道の営業距離は6.5kmだが、舎熊(しゃぐま)を除く駅は国道からやや離れているため、実際には8km近く歩いた計算になるだろうか。

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《佐藤正樹(キハユニ工房)》

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