機械に生命を与える色とは…マツダの新色「マシーングレー」開発秘話

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マツダの新色「マシーングレー」開発秘話を聞いた
マツダの新色「マシーングレー」開発秘話を聞いた 全 10 枚 拡大写真

ニューヨークモーターショーで『ロードスターRF』と同時に発表された、マツダの新色「マシーングレー」。『アクセラ』で初めて市販車へ導入されて以来、「ソウルレッド」に次ぐ人気色となっている。商品改良のタイミングで『アテンザ』にも採用されたこのマシーングレー。一体どのような経緯で誕生したのか。デザイン本部の岡本圭一氏に聞いた。

写真:アテンザ、アクセラに採用された「マシーングレー」

◆カラーも造形の一部であるという考え方

----:街を走るマツダ車のソウルレッド比率が増えていると感じるのですが、実際に増えているのでしょうか?

岡本圭一氏(以下敬称略):マツダのボディカラーで注目されるようになったのが、ソウルレッドです。2013年の東京モーターショーでは展示車すべてをソウルレッドとしました。ソウルレッドの人気は高く、ここ1、2年ではトップの人気カラーになって、20%程度のシェアを持っています。

----:やはり「魂動デザイン」からボディカラーへの考え方も変わりましたか?

岡本:マツダでは、魂動デザイン以降、カラーも造形の一部であるという考え方を持っています。「色と造形は一体でデザインしていくことが大切である」という考え方です。魂動デザインのねらいはダイナミックな造形で、かつ面が繊細で美しい変化までこだわっているというもので、カラーもそういった造形をより際立たせるということに着目しています。カラーデザイナーは光と影の表情を大切にしているのです。

----:光と影の表情を従来の塗料で表現するのは難しいのでしょうか

岡本:そうした方向性を表現しようとすると、色を創作していくだけでは限界があるのです。そこで塗料の質感までもデザインして行こうということになりました。実際にソウルレッドはそういう考え方から生まれています。ソウルレッドは「鮮やかさ」と「深み」を両立させなくてはなりませんでした。色としてはやはり赤なのでできる限り鮮やかさを追求するのですが、鮮やかさを追求すると、印影感は出ないんです。これでは立体表現としてはよくない。だからといって普通に深みを追求していくと全体的にディープになり、赤というよりはボルドーのようになってしまいます。我々の求めている赤は情熱的でスポーティな赤で、それをキープしながらシェードでいかに深みを持たせるか? これは技術的には相反する方向です。そうした技術の両立が難しかった。しかしそれらをブレークスルーして両立しました。

----:今回のマシーングレーも同じ思想なのですか?

岡本:アクセラで始まり、今回アテンザのマイナーチェンジで新たに採用したマシーングレーは、緻密な金属感に徹底的にこだわる、それと同時に造形を際立たせるための深みにチャレンジしました。これも技術的には相反するものです。まずマシーングレーという色を作るにあたり、我々作り手の思いをメッセージとしてお客様に伝えたい。色にメッセージを込めたい。そのために、マツダはどんな会社か? ヘリテージに立ち返り考えました。マツダというのはロータリーエンジンに代表されるように、独自性があり、マシンにロマンを持っている、それが脈々と受け継がれている…そうした集団の性格を色に込めて発信したいと思ったのです。

◆冷たい金属にみずみずしさをプラスする

----:マシーングレーとは具体的にどんな色なのでしょうか

岡本:実際はマシーングレーをどんな色にするか? ということで、ピュアに「精巧な機械の美しさ」を前面にイメージさせることになりました。マシンというのは金属でできていますので、まず金属質感にこだわった。金属の特徴は、光があたると全面的に光るが、影は急激に暗くなる。ハイライトとシェードのコントラストがきわだってに高い。それが硬質感を出しているので、塗装でもそうした表情を作ろうということになりました。ただ、単純に金属、マシンは冷たいイメージになるのですが、魂動デザインはただの機械、無機質ではなく、生命感を持たせることが必要です。そこで、冷たい金属にみずみずしさをプラスすることで生命感を与えるようにしたい、と考えたのです。

----:マシーングレーは有機的な雰囲気を持つ金属質がよく表現されていると思います。ポイントはどこにあるのでしょうか?

岡本:冷たい金属にみずみずしさをプラスする表現には非常にこだわりました。金属といっても色々な表情があるのです。アルミは全体が白く光る これはすごく先進的なイメージをもっている。しかし、我々はあえて鉄の表情にチャレンジしたのです。鉄は色々な表情をもっている。加工次第では人間味のある暖かい表情を見せたり、精密に加工するとすごく精緻感ある輝きを放つ。鉄のもつ黒光り感が造形を引き立てるヒントになりました。とくにシェードで黒く落ちるという点です。アルミは鉄のようには黒く落ちない。この鉄の黒く落ちるところに近づけたい、ということで色の創作を始めたのです。

----:普段、金属になじんでいない人にはなかなか気づけない部分だと思いますが、かなり違うものなのでしょうか?

岡本:(アルミと鉄の磨いたプレートを差し出し)実際に鉄とアルミがどれくらい違うか見て下さい。これは開発の初期段階のものですが、当社の板金工場で磨いたものです。反射することころは同じように反射します。が、シェード部分を見ると鉄は全体に黒光りをしています。すごみのある質感を目指したいということで、頑張ってこの表情をボディカラーで出しましょうということになったんです。これを目標に、シェードが黒光りしながら、ハイライトは面で光って、写りこみがみずみずしい艶感を出す、と言った表情を作りました。

----:デザイン部門だけではできないことですよね?

岡本:はい。今回、こうしたチャレンジャブルな塗装開発をするにあたり、開発プロセスも新たな取り組みをしました。通常ではデザイン部門がある程度のターゲット色を作りますが、今回はデザイン部門が作ったものを設計部門に渡し、設計部門で基本要件をクリアさせる。その後、生産部門に最終的なライン条件などを入れて、量産車として世の中に出す…という流れです。今までと同じプロセスで色を作っても通常のメタリック塗装にしかならないだろう、ということで根本的な部分から変えたかったのです。デザインの初期段階から、塗装の関係部門のキーマン、スペシャリストを交えて開発をおこないました。マツダではこうした開発を「共創活動」と呼んでいます。こうした活動があったからこそ、新しい質感表現が実現できたのです。

《諸星陽一》

諸星陽一

自動車雑誌の編集部員を経て、23歳でフリーランスのジャーナリストとなる。20歳代後半からは、富士フレッシュマンレースなどに7年間参戦。サーキットでは写真撮影も行う、フォトジャーナリストとして活動中。趣味は料理。

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