【ホンダ フリードハイブリッド 試乗】“フリードがある生活”をいかに提案できるか…井元康一郎

試乗記 国産車
ホンダ フリードプラス ハイブリッド
ホンダ フリードプラス ハイブリッド 全 16 枚 拡大写真

ホンダが9月に発売した小型トールワゴン『フリード/フリードプラス』を短距離ながらテストドライブする機会があったので、ファーストインプレッションをお届けする。

試乗したのは量販グレードの「G」で、新世代安全システム「ホンダセンシング」が装備されていた。ガソリン版に続き、ハイブリッド版もテストドライブしてみた。ドライブコースは横浜および三浦半島界隈で、全区間2名乗車。

基本的な走りのテイストはおおむねガソリン版と同じ。異なるのはやはり、ハイブリッドパワートレインのパフォーマンスだろう。1.5リットルミラーサイクルエンジンに電気モーター内装のDCT(デュアルクラッチ変速機)を組み合わせた「i-DCD」は基本的にフィットのものと同じで、車両重量の大幅増をカバーするため最終減速比が2割ほど低められている。

合成出力は137psと、『ヴェゼル』や『シャトル』の152ps版に比べて低いが、高速での合流、市街地における発進加速など、日常走行の領域ではアンダーパワーという感じはまったくなかった。スロットルを踏み込めば、法廷速度域まできわめて軽やかに加速した。動力性能面での軽快さは合成出力100psどまりでアンダーパワーぎみのトヨタ『シエンタハイブリッド』をはるかにしのいでいた。燃費も、平均燃費計値が22km/リットルと、こちらもシエンタハイブリッドに対して優越しているように感じられた。

i-DCDの弱点だったスムーズネスも、2013年秋にフィットハイブリッドが発売されてから3年が経過したこともあってか、熟成は着実に進んだという感があった。都市高速や市街地など限定的な条件のもとでドライブしただけなので確定的とは言えないが、ECONモードONで比較的高い車速までEV発進しても、エンジンがかかるときにフィットハイブリッドのようにギクシャクしたりせず、おおむねスムーズにハイブリッド走行へと切り替わるようだった。このくらいのスムーズネスが確保されていれば、大きな不満は出ないだろうと思えるレベルであった。

弱点と思われたポイントはパッケージング。フリード/フリードプラスはフロアが意外に高く、一方で2列目シートの座面はホンダ車には珍しいことに、結構低い。そのため、成人男性が2列目に乗ると、やや“体育座り”的な姿勢になってしまい、膝元空間が十分に確保されているにもかかわらず窮屈に感じられてしまう。後日、3列シートのフリードに座ってみたが、フリードも似たり寄ったりであった。室内寸法の絶対値は大きいが、居住感の良さではシエンタハイブリッドに後れを取っているように思われた。ガソリン版と同様、乗り心地もしかりであった。

また、明確な弱点とは言えないが、デザインが無難に過ぎ、フリードのアイデンティティがハッキリしないというのもややネガティブに感じられた。全体としては2013年に当時デザインディレクターの座にあった南俊叙氏が提唱した「エキサイティング H デザイン」の文法に沿ったもので、フロントマスクは「ソリッドウイングフェイス」という、左右のヘッドランプとグリルを連続性のある1つのエリアにまとめたもの。そのテイスト、造形がフィットとあまりに酷似しているため、とくにフロントビューは一見、フィットという印象を与えてしまう。率直に言って、フリードプラスよりフィットプラスという名前のほうがしっくりくるのではないかと思えたほどだった。旧型がエグいデザインで顧客の歓心を集めていたことにかんがみて、白物家電的ではないファクターがもうちょっとくらいあってもよかったんじゃないか、などと思えた。

総じてフリードプラスハイブリッドは、レジャーカーとしてはなかなかのポテンシャルを有している。良好な燃費と圧倒的な貨物積載力は、たとえば大型望遠鏡を携えて山の中に行って天体観測をする、造園が趣味でしょっちゅうホームセンターで大荷物を買い込む、車中泊をするといったカスタマーにとってはなかなかいい選択だ。

が、極端に高さのあるものを積むのでなければ、フリードプラスより価格が安く、動力性能では優越しているステーションワゴンのシャトルハイブリッドで十分事足りるのも事実。また、アンダーパワーではあるが走り味と居住感が素晴らしいシエンタハイブリッドも強敵。フリードプラスについては、このクルマでどういうカーライフの変化が期待できるかといったことについて、顧客とのコミュニケーションをしっかり取ることが、ホンダにとっては肝心だろう。

■5つ星評価
パッケージング:★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★
オススメ度:★★★

《井元康一郎》

井元康一郎

井元康一郎 鹿児島出身。大学卒業後、パイプオルガン奏者、高校教員、娯楽誌記者、経済誌記者などを経て独立。自動車、宇宙航空、電機、化学、映画、音楽、楽器などをフィールドに、取材・執筆活動を行っている。 著書に『プリウスvsインサイト』(小学館)、『レクサス─トヨタは世界的ブランドを打ち出せるのか』(プレジデント社)がある。

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