【スズキ スイフト ハイブリッドRS 試乗】軽さがもたらすのは「ポジ」だけではない…井元康一郎

試乗記 国産車
スズキ スイフト ハイブリッドRS
スズキ スイフト ハイブリッドRS 全 12 枚 拡大写真

昨年12月27日発表、今年1月4日に発売されたスズキのBセグメントサブコンパクト『スイフト』第4世代モデル。そのうちマイルドハイブリッドのスポーティグレード「ハイブリッドRS」、ターボの「RSt」、アイドリングストップなしの快適性重視グレード「XL」の3種をショートドライブしてみたのでリポートする。

最初に乗ったのはハイブリッドRS。これは燃費効率の高い1.2リットル「デュアルジェット」エンジンに出力2.3kW(3.1ps)というごく小さいモーター兼発電機「ISG」を組み合わせたもの。マイルドを名乗っているが、実質的にはアシスト能力がないか、ごく限定的なマイクロハイブリッドの部類に入る。ちなみにスズキはAセグメントのトールワゴン『ソリオ』に真正のマイルドハイブリッドシステムを投入した。スズキ関係者によれば、「市場のニーズがあればスイフトにも搭載は可能」とのこと。

ドライブ開始。走り出してみてまず印象的だったのは、2名乗車であったにもかかわらずクルマの転がりが非常に軽いことだった。カタログスペックではこのハイブリッドRSの車両重量はたったの910kg。それに1.2リットルエンジンという組み合わせは余裕十分で、クリープ現象だけでもそこそこ加速するほど。これは現行『アルト』以降のスズキの超軽量モデルに共通したフィールで、その特性を生かしたエコランを行えば、燃費はかなり伸ばせそうな感じであった。

スタート後しばらくは市街地での撮影を行うため、短い距離で発進、停止を繰り返す路地を走り回った。試乗枠が朝一番であったうえ、気温も0度前後と、アイドリングストップには厳しいコンディションであったが、システムの電力量に余裕があることが奏功してか、アイドリングストップは着実に効いた。このあたりは鉛電池だけを使う簡便なアイドリングストップに比べると確実に優位性があると言えそうだった。また、スターターモーターではなく、ISGをエンジン始動に使うため、ブレーキを放した時にキュッキュッというクランク音なしに、ほとんどタイムラグなくエンジンがかかるのも美点だ。

次に比較的流れの良い幹線道を走行。本線への合流時、走行車線の流れに乗るようスロットルを踏み増してみたが、エンジンパワーの盛り上がりはあまりリニアではなく、加速はもたつき気味。市街地での軽いフィールからすると、ちょっと意外であった。スロットルを深く踏めばちゃんと勢い良く加速する。アイドリングストップなしのXLはスムーズだったことから、エンジン、ISG、CVTを協調制御するマイルドハイブリッドシステム固有の性格である可能性がある。

走り味のほうは、車体が軽くなったぶん、クルマの動きの敏捷性は確実に上がった感があった。その軽さは交差点で曲がるようなごく普通のドライブにおいてもすぐに実感できる。鼻先が軽く、思い通りにひょいと曲がる感覚だ。また、流れの良い幹線道でのレーンチェンジの身のこなしも機敏で、ストレスが小さい。おそらくワインディングでもそこそこの速さを発揮するだろう。BセグメントでありながらAセグメントと張り合う軽快感が新型スイフトの身上とみることができそうだった。

ただ、性能とは別の“走り味”については、旧型スイフトが車両価格からはちょっと想像できないくらいにスムーズな走行フィールを持っていたのに比べるとやや後退した。試乗会があった幕張の市街地には石畳風の道路や減速を促す舗装の盛り上がりなどがあちこちにあったが、路面のざらつき感や石畳のゴロゴロ感のカット、盛り上がり部分でのサスペンションの上下動のスムーズさなどは凡庸。もともと軽い車を良い走り味にするのはとても難しいことで、スズキも旧型と同じように一生懸命チューニングしているそうなのだが、まだチューニングのツボをつかむまでには至っていないようだった。

走行フィールが大きく変わった原因として、タイヤの変更が影響している可能性もある。旧型モデルは中位グレード以上にはブリヂストンの『トランザ』というツーリング向けのタイヤが装着されていたのに対し、新型は同じブリヂストンの省燃費タイヤ『エコピア』。これはトレッドパターンこそ市販のものと同じだがスペックはスズキ専用、さらにRS系とノーマル系でコンパウンドやトレッドの柔らかさなどを作り変えるという念の入れようなのだが、乗ってみると「エコピアはやっぱりエコピアだよね」という感が拭えなかった。別のタイヤだったらどう変わるだろうと、ちょっぴり興味を持った次第だった。

パッケージングは旧型に比べて空間確保の効率が上がり、居住性は大幅に改善されていた。とくに旧型との違いが大きいのは後席の居住性と荷室。後席は『バレーノ』のように広大という感じではないものの膝元空間にはしっかりとした余裕があり、また前席の下に深々とつま先を入れることができた。これなら少々の長距離でも大人3人、4人で移動するのはそれほど苦痛ではなさそうだと思われた。また、旧型の大弱点であった荷室の狭さは大幅に改善された。新型もBセグメントの中では広いほうではないが、それでも日常ユースや軽めのレジャーに出かけるさいの利便性は旧型の比ではないだろう。

■5つ星評価
パッケージング:★★★
インテリア/居住性:★★★
パワーソース:★★
フットワーク:★★★
オススメ度:★★★

《井元康一郎》

井元康一郎

井元康一郎 鹿児島出身。大学卒業後、パイプオルガン奏者、高校教員、娯楽誌記者、経済誌記者などを経て独立。自動車、宇宙航空、電機、化学、映画、音楽、楽器などをフィールドに、取材・執筆活動を行っている。 著書に『プリウスvsインサイト』(小学館)、『レクサス─トヨタは世界的ブランドを打ち出せるのか』(プレジデント社)がある。

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