【マツダ デミオ 試乗】マツダ車の買い時「今でしょ」と言えぬもどかしさ…中村孝仁

試乗記 国産車
マツダ デミオ 改良新型(左は特別仕様車の「Tailored Brown」)
マツダ デミオ 改良新型(左は特別仕様車の「Tailored Brown」) 全 8 枚 拡大写真

2014年にデビューしてその年のカーオブザイヤーを獲得したマツダ『デミオ』。近年の日本では初となるコンパクトクリーンディーゼル搭載車をラインナップする野心的モデルだったことは自他ともに認めるところである。

そのデミオ、商品改良と称する変更がこれまでに2度加えられている。最初は2015年。この時はディーゼルのノック音を打ち消す「ナチュラルサウンドスムーザー」を取り込んだことが大きなテーマ。そして昨年は「G-ベクタリングコントロール」の導入が主要テーマであった。

勿論、そのほかにも細かい部分があれやこれやと変わり、元々Bセグメントのモデルとしては高級感あふれる、これまでの日本製Bセグメントカーに在りがちだった、我慢を強いるクルマから、小さくても堂々と乗れるクルマへと脱皮したあか抜けた性格が人気を呼んでいた。一方で最初のインパクトで飛びついて購入したユーザーにとっては、車検に至る前に2度も改良されて大きく進化したことには少なからず不満もくすぶるのではないかと心配する。

誰あろうこの筆者自身も、そのデビュー時に飛びついて購入した一人。ナチュラルサウンドスムーザーにしてもG-ベクタリングにしても、レトロフィットさせることが出来ないもののようで、初代ユーザーは買い替え以外にこの新しい技術を享受できないわけで、こうなるとマツダのクルマはいつが買い時?「今でしょ!」とは言えないもどかしさが出てくる。

さて、今回の変更についてである。前述したG-ベクタリングに関しては既に『アテンザ』や『アクセラ』に装備されてデビューしたものが、デミオにまで降りて装備されたということ。また、 燃料の噴射タイミングを微妙に変えてノック音の減少をさせる、周波数コントロールも導入している点は、要するにアクセラに投入された1.5リットルディーゼルが、そのまま搭載されているということである。

一方で装備の点では、まずヘッドアップディスプレイがカラー化されて、小さくなった文字でも俄然見易い高精度化し、同時に情報量もこれまでのスピード表示のみから複数の表示を同時に行えるものへと変化している。さらに、さすがにオプション設定の域を出ないが、常に上向きの状態を保ち、必要に応じて対向車や前走車を幻惑しないアダプティブヘッドライトも設定された。Bセグメントとしては非常に頑張った装備といえよう。そしてACCの用意もある。ただしこれは全車速対応ではない。エンジンラインナップは従来と変わりない。

試乗したのは1.5リットルディーゼルの「XD」の上級モデル、「ツーリングLパッケージ」。まあ、デビュー時のモデルである自分のクルマと比べると、目の前に見えるヘッドアップディスプレイは綺麗だわ、この時期には欠かせないシートヒーターは付いてるわで、快適性がぐっと向上している。静々と走り出しても、ディーゼル音はだいぶ希薄になった。さすがに発進してすぐはダメだけれど、街中に出てしまうとディーゼルと認識するのが難しいほど周囲の騒音にかき消される。嗚呼、これも改良だわ…とオーナーとしては不快に納得させられる。

G-ベクタリングに関しては、既にアクセラやアテンザで体験しているのでわかっているつもりでも、高速上での転舵の際のスムーズさが今更ながらうーん…と唸らされる。足にも手が入れられた。細かいことは端折るが、ここでもスムーズライドへの拘りを出していて、かなりいい線行っていると感じる。ただし、まだ僕が理想としているルノーの足には追い付いていない。

とは言うものの、Bセグメントのモデルとしては世界広しといえども、ここまで頑張っているクルマはほとんど見当たらず、装備などの点から言えばルノー『ルーテシア』などは完全に置いてきぼり。だから総合点を与えるとデミオは世界的にもほとんどトップクラスと言ってよい商品力を持っている。

■5つ星評価
パッケージング ★★★★
インテリア居住性 ★★★★
パワーソース ★★★★★
フットワーク ★★★★
おすすめ度 ★★★★★

中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、その後ドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来39年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。

《中村 孝仁》

中村 孝仁

中村孝仁(なかむらたかひと)|AJAJ会員 1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来45年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。

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