【マクラーレン 720S】スーパーシリーズの2ndジェネレーション

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マクラーレン720S
マクラーレン720S 全 24 枚 拡大写真

マクラーレンオートモーティブは、ジュネーブモーターショー2017でワールドプレミアを果たしたばかりの『720S』を日本において公開した。価格は3338万3000円で、日本でのデリバリー開始は7月頃を予定している。

マクラーレンオートモーティブが設立されて6年。この間で3つのプロダクトシリーズを作り上げた。ひとつは「アルティメット」シリーズで、『P1』や『P1GTR』などをラインナップ。もうひとつは『570S』や、『570GT』、『540Cクーペ』からなるエントリーカテゴリーの「スポーツ」シリーズ。

そして720Sが属する「スーパー」シリーズで、「我々のプロダクトポートフォリオのコアになるラインだ」とは、マクラーレンオートモーティブアジア・パシフィックマネージング・ディレクターのジョージ・ビッグス氏の弁。
このスーパーシリーズは2011年にデビューした『MP4 12C』からスタート。『650S』、『625C』などに進化し、そして今回その最新モデル720Sがデビューした。

ビッグス氏は、「ほんの少し進化させる、あるいは正常進化したクルマを紹介するのはマクラーレン流ではない。我々は、大きくジャンプしよう、スタイリングやパフォーマンス、使い勝手、エンゲージメントの全てにおいて飛躍的進歩を遂げよう、と考え開発した。キーワードは“Raise your limits”、リミット上げよう」だと述べた。

■キャブフォワードを踏襲し、空力を追求したデザイン

デザインをシルエットで捉えると、これまでのマクラーレンの共通するマッシブでパワフルなイメージと共に、キャブフォワードであることが見て取れる。

マクラーレンオートモーティブ・アジアパシフィックリージョナルセールスマネージャーのピーター・セル氏は、「キャブフォワードデザインは、キャビンをフロントエンドに近づけることにより、特に視界を最大限に向上させるという狙いがある」と説明。また、マクラーレンの大きな特徴であるディヘドラルドアだが、「もしこれが通常の横開きのドアであればヒンジの関係でここまでキャブフォワードのデザインは出来なかっただろう」とコメント。

空力に関しても多くの特徴がある。ひとつはヘッドライト部分に手の入るほどの空間が設けられた。ここにはローテンパレーチャー・ラジエーターが搭載された。そのヘッドライトにはアダプティブLEDマトリックスヘッドランプを導入。通常照射角度を変えるためにはモーターを使うが、「マクラーレンはライトを部分的に点灯、消灯させることで照射角度を変えている。そうすることでモーターの重量を削減した」と話す。

ディヘドラルドアはルーフまで大きく切り欠きを入れ、「乗降性を高めた。更に、ドアを開いた時には650Sよりも片側で15cm内側に入っているので、駐車スペースを気にする必要が減った」とセル氏。同時のこのドアは「フォーミュラ1のバージボードと同様に空力に大きく貢献している。フロントホイールアーチから来る高圧のエアを利用し、バージボードでダウンフォースに変換しているのだ」という。

「室内空間はまさにグラスハウスというイメージで、ルーフがグラスになっている。またCピラーの真ん中を肉抜きしてガラスを入れた結果、360度全方位の視界が確保された」。ラゲッジスペースもフロントに150リットルを確保。オプションで360度パーキングカメラも採用するなど、実用性があることもアピールした。

インテリアについてもセル氏は、「レザーはBridge of Weir(ブリッジオブウィアー)というスコットランドの最上級のレザーを使用。アルミの部分は削り出しで、質感を大幅に向上させた」。またホールディングドライバーディスプレイという新しいディバイスも投入した。これは新しいTFTクラスターで、「スポーツ走行する時には情報を最小限まで落とすことが出来た」という。

■速さと共にドライビングプレジャーも

720Sのアーキテクチャは、「モノゲージ2という新開発したもので、トップ構造もカーボンファイバー化した結果、650Sと比較し18kgの軽量化に成功。Aピラーも非常に細くすることが出来たことからドライバーの視認性が大幅に向上した」とセル氏はいう。

またセル氏によると、現在マクラーレンはラップタイムや重量と共に新しい方向に目を向けているという。それは「“シアター”、クルマをどう見せるかだ。例えばドライバーがクルマに乗り込む時にどのように迎え入れるかは大切な要素。そこで、ドアを開けるとエンジンベイにも照明が入るなど見せ方を考えている。同時にエンジンサウンドも重要なので、コンロッドなどを軽量化しエンジンレスポンスを向上させている」と演出も重視したことを語る。

そのエンジンは、「ターボの回転スピードを速め、最高出力は720ps、最大トルクは770Nmを達成。0-100km/h加速は2.9秒、200km/hまで7.8秒で、ランボルギーニ『アヴェンタドール』よりコンマ8秒、フェラーリ『488GTB』よりもコンマ5秒速いタイムだ」と高い実力を備えていることを強調した。

パワーを上げ、軽量化しただけでなく、コントロール性能も高められた。「720Sのシャシーは、650Sのプロアクティブシャシーをベースに開発され、スタビライザーは装着されず、油圧で全てを制御する」とセル氏。具体的には新しく各ホイールあたり3つ、合計12個センサーを追加した。内訳は4つの加速度センサーと8つのプレッシャーセンサーだ。その結果、「非常にスムーズな走りと、タイヤと路面の接地性が向上。このセンサーからの情報を利用するために、アルゴリズムの開発にケンブリッジ大学と共同で6年の歳月を経て成功した」と述べる。

ドライビングテクノロジーとして、可変ドリフトコントロールが装備された。「これは新しいレベルまで達したESCにより、ジェンソン・バトンやフェルナンド・アロンソではなくてもドリフトアングルを設定するだけで、ヒーローになることが出来る」とセル氏は笑う。

このシステムは、「ラップタイムを重視したテクノロジーではなく、よりドライバーに楽しんでもらうことを考え、スリップアングル、ドリフトアングルを設定することによって通常のドライバーでも楽しく安全にドリフトが出来るシステムだ」とした。

■日本市場は重要。ワールドプレミア12時間後に発表したわけ

マクラーレンオートモーティブアジアオペレーションマネージャーの名取雅裕氏は、「スーパーシリーズはアルティメットとスポーツとの間に位置するが、この720Sの登場によりアルティメットに近づいた」とし、「スーパーシリーズの役割はマクラーレンが本来求めて行く商品作りの象徴で、一番大事なセグメントだ」と位置付ける。そして、「妥協を許さないクルマ作り、レースの技術を注ぎ込んだ重要なモデルなのだ」とした。

日本市場についてビッグス氏は、「日本市場はマクラーレンにとって非常に重要で、昨年は6%を日本で販売した」と明かす。そして、今回の発表については、「リージョナルの発表では日本が世界で一番早い。その理由は、日本のスーパーカー市場は成熟しており、スーパーカーが何たるかをよく知っているユーザーが多いからだ」という。

名取氏も、「日本市場で成功すればアジア諸外国はそこについてくると考えている。その理由はベンチマークを作りたいということと、スーパースポーツカーのカルチャーや文化自体も少なからず40年から50年の歴史があり、アジア諸外国の中で一番熟成している。ユーザーのクオリティも高く、数も多い。そこで日本で成功した実績が、諸外国に伝播して牽引役になるのだ」と日本市場の重要性を強調し、いち早く日本で発表した理由を述べた。

720Sについて名取氏は、「日本市場で確実に存在感を表すことが出来るモデルだ。セカンドジェネレーションになったことで、より一層認知度を上げられるモデルであり、そういう強力な商品が出来たという自負もある。マクラーレンの存在感はこのモデルを通じてより強化できた」と完成度に大きな自信を見せた。

《内田俊一》

内田俊一

内田俊一(うちだしゅんいち) 日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員 1966年生まれ。自動車関連のマーケティングリサーチ会社に18年間在籍し、先行開発、ユーザー調査に携わる。その後独立し、これまでの経験を活かしデザイン、マーケティング等の視点を中心に執筆。また、クラシックカーの分野も得意としている。保有車は車検切れのルノー25バカラとルノー10。

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