政府の働き方改革推進で運輸産業の長時間労働に注目が集まっている。そんな中でトラック運輸における突出したある特徴が長時間労働に関連するものではないかと問題視されている。
厚生労働省がまとめる労災補償の支払い状況に「脳・心臓疾患の請求・支払決定件数」がある。
2015年度の請求件数の上位から実数を見てみる(請求件数/支払い決定件数)
自動車運転従事者 153 / 87
営業職業従事者 54 / 20
建設従事者(建設躯体工事を除く) 40 / 8
商品販売従事者 38 / 12
法人・団体管理職員 37 / 22
飲食物調理従事者 33 / 14
業種によって請求件数と支払い決定件数は前後するが、それでも自動車運転従事者の労災補償の多さは突出している。長時間労働は過労死など健康に大きな影響を与える。
「トラック運輸産業は統計を取り始めた2002年以降、すべての年で全産業中最も多いのです」(武井運輸労連労働政策部=全日本運輸産業労働組合連合会
また、過重労働と深い因果関係があるとされる自殺を含む精神障害でも首位に上がっている。運輸業・郵便業(道路運送業)は、請求件数69件、その支払い件数36件で、続く医療福祉(社会保険・社会福祉・介護事業)の157件中24件を引き離す。運輸労連も、この4月初めて運輸共済の死亡給付から自殺件数に関するメモを作成。公表に踏み切った。
こうした状況でも、政府の働かい方改革の実行計画案にみる自動車運転従事者の残業時間は、デスクワークなど他の職業より長く設定されたままだ。一般では年間720時間の上限に対して、ドライバーの上限は上限は960時間。それも一般より施行5年遅れとなっている。
こうした状況の改善を求めて運輸労連は、以下のように話す。
「施行が遅れることは仕方がないにしても、その上限時間は一般と同じ720時間、単月や月平均の残業についても単月100時間、月平均80時間を適応してもらいたい」(世永正伸産業政策部長)