【Japan IT Week 春】 DeNA中島氏、モビリティプラットフォームの死守を訴える

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DeNA執行役員 オートモーティブ事業部長 中島宏氏
DeNA執行役員 オートモーティブ事業部長 中島宏氏 全 2 枚 拡大写真

DeNAの執行役員でオートモーティブ事業部長の中島宏氏は5月10日、Japan IT Week 春 の基調講演に登壇、『オートモーティブ業界 X インターネットの可能性に関して』と題して、DeNAのオートモーティブ事業の取り組みと狙い、そして、モビリティプラットフォームは日本が主導すべきだと訴えた。

中島氏は、DeNAの会社概要、自身のキャリアについて紹介したあと、オートモーティブ事業について説明を始めた。

■DeNAのオートモーティブ事業


DeNAが新規に手掛ける6つの事業領域のうちの一つがオートモーティブ領域。そのオートモーティブ事業部は5事業ある。

ロボットタクシー
Anyca(エニカ)
akippa(あきっぱ)
ロボットシャトル
ロボネコヤマト。

ロボットシャトルは全国でテスト走行を重ねており、先日は横浜の金沢動物園でも走らせた。現時点ではオペレターが同乗しているが、今後はオペレーターなしで走らせる開発計画だ。コミュニティバスなど、人件費が理由で従来技術だとペイしない場合などに利用できる。2018~19年には実現すると思う。

ロボネコヤマトはヤマト運輸との取り組み。すでに神奈川県藤沢市の一部のエリアで車が走っている。


現状は有人で走行しているが、ロボネコヤマトのコンセプトは非対面。いまの宅急便は、ドライバーによるホスピタリティが高品質なサービスを実現しているが、一方で、体力・運転技術も含め高度な人材が必要で、かつドライバーの負担が高いことが課題。

ロボネコヤマトの非対面のコンセプトは、ホスピタリティという面では下がるが、利便性を上げることでユーザーの満足度を高められるのではないかと考えている。現時点でも、10分単位で配達時間を選んで、すぐに車が到着するということが実現している。利用者においてはリピート率が高く、支持されている実感がある。

■なぜDeNAが交通・自動車事業に参入するのか


まず、単に市場が大きいこと。販売・カーライフなど、周辺市場を広く見ると50兆円以上とみている。また自動車産業は大変革期にあること。テクノロジーによってモビリティの価値が再定義されようとしている。海外の事例からも見て取れる。そして、ハードウェアからソフトウェアへ付加価値が移行している。簡単に言うと、大きな市場が、激変しようとしていて、ソフトウェアに価値が移行する、という状況に賭けているということ。

もうひとつは社会貢献という側面だ。例えばドライバーの人手不足、高齢化。地方に行くと70歳のタクシードライバーも珍しくないが、10年後はどうなるのか。課題先進国の日本でどういう変化が起きるのか、世界が注目している。また人件費について。コストに対する人件費は、タクシーでは72%、バスで56%、貨物で45%という統計がある。

問題は過疎地だけではない。都市部でも初期症状は出始めている。私が視察した川崎市の事例がある。高齢者の”足”として、コミュニティバスが大混雑で、行列ができていた。だがそれでも赤字だという。ニーズはあるがコスト構造のため赤字になっている。

■DeNAの強み


DeNAは、もともとECから事業を始めた。店子さんとエンドユーザーをつないでビジネスをしてきた経験値がある。自動車領域でも、車両・インフラとエンドユーザーをつなぐことができるのでは、と考えている。

そこで重要なのが、クラウド~オペレーター~ユーザー~車両レイヤーの機能を一気通貫で担うこと。Uberもそうだ。配車アプリに目が行ってしまうと分からないが、その裏でクラウド~オペレーター~ユーザー~車両を一社でうまく繋いでいる。

DeNAの強みはユーザー体験のデザインができることだ。使いやすいアプリやサービスの構築力。それに、AIを活用した配車および管制のアルゴリズムを加えていく。

■モビリティプラットフォームの重要性


ケータイ業界の事業構造で言うと、インフラは通信業者が提供する回線。ハードウェアはアップルに代表される端末メーカー。ソフトウェアは例えばAndroidOS。プラットフォームはAppStore。サービスは音楽、ゲームなどのことだ。プラットフォームで日本は負けた。DeNAはつまり小作人としてゲームビジネスをしているということだ。領主であるプラットフォーマーに30%を支払いながら。

同じことが交通の領域でも起きる。モビリティのプラットフォームを他国に取られるとどうなってしまうのか。言わずもがなであろう。日本経済において自動車産業が占める割合は非常に大きい。

幸いにして日本には、交通領域の各レイヤーでトップレベルの企業がそろっている。たとえDeNAは黒子になろうとも、皆様と連携して、モビリティプラットフォームは日本が主導し、必ず死守することが重要だ。そしてアジアや世界に展開しなければならない。小作人ではなく領主にならなければいけないと考えている。

《佐藤耕一》

日本自動車ジャーナリスト協会会員 佐藤耕一

自動車メディアの副編集長として活動したのち、IT企業にて自動車メーカー・サプライヤー向けのビジネス開発を経験し、のち独立。EV・電動車やCASE領域を中心に活動中。日本自動車ジャーナリスト協会会員

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