デジタル化、自動運転時代の保険…「保険の先」が見据える未来 SOMPOホールディングス 楢崎浩一CDOに訊く

自動車 ビジネス 企業動向
SOMPOホールディングス株式会社<br>常務執行役員 グループCDO<br>楢崎浩一氏
SOMPOホールディングス株式会社<br>常務執行役員 グループCDO<br>楢崎浩一氏 全 6 枚 拡大写真

収入保険料が2兆円を超えるメガ損保、損保ジャパン日本興亜が動き出した。自動車保険が転換期を迎えているのはもちろん、保険市場全体の頭打ちを迎え、「保険の先へ、挑む。」というブランドスローガンを旗印に、まったく新しい業態への変革を目指しているのだ。シリコンバレーから単身メガ損保に乗り込み、デジタル変革をもたらそうと奮闘しているSOMPOホールディングス常務執行役員でグループCDO(最高デジタル責任者)を務める楢崎浩一氏に、話を聞いた。

デジタル化が意味するところ


---:まず、損保会社のデジタル化とは具体的に何を指しているのでしょうか。

楢崎:当社は「保険の先へ、挑む。」というキーワードであらわされるように、保険会社から、「安心・安全・健康」の真のサービス企業になろうと考えています。例えば自動車保険は、事故の際に顧客のロスをカバーするものです。もちろんこれは保険会社の務めですが、そもそもこれは事故が起きた後の話です。

これをたとえば「損保ジャパン日本興亜のサービスに入っていると、事故が減る、事故が起きない」、ということが実現できれば、お客様もハッピーだし、当社もハッピーです。お互いにポジティブな形でお付き合いいただける。これが、「安心・安全・健康」を提供する真のサービス企業ということです。

では事故を無くすためにどうするか。フリート(註:法人で社用車をまとめて契約する形態)向けにはスマイリングロードというサービスを提供しています。また、子会社のセゾン自動車火災から「つながるボタン」というデバイスをリリースします。これらのサービスでは、デバイスを通じてお客様の運転パターンを取得し、「こういうところが良かった」「ここは気を付けて」というフィードバックをすることによって、事故を減らす試みをしています。

---:損保会社の資産や強みは、強力な営業体制、膨大な顧客リストにあると思いますが、そういった強みが、「安心・安全・健康」の真のサービス企業、という方向性に活かせるとお考えでしょうか。

楢崎:そうでうね。加えて我々は様々なデータを持っています。自動車保険で言えば、ものすごい量の事故の画像データを持っている。今は事案ごとにファイルで持っているだけですが、これを集めてAIで分析して、ビックデータ化すれば、大きな知見になります。これもデジタルです。

---:そういった大量のデータをビッグデータ化して価値に変えていく、というのが楢崎さんのミッションになるのでしょうか。

楢崎:それはミッションのうちのひとつです。私が(入社する際に)言われたのはただ一点、グループ全体のデジタル変革を先導しろ、ということです。昨年5月の新中期経営計画で「安心・安全・健康に資する最高品質のサービス提供」をテーマとして掲げました。これを実現ならしめるためのデジタル変革がミッションです。

---:そのデジタル変革について、何をするのか具体的に聞かせてください。

楢崎:4つテーマがあります。ひとつは業務効率改善。ふたつ目は顧客接点の拡大。現状は、契約の時・更新の時・事故の時しか接点がありませんが、「安心・安全・健康」をいつも提供するために、「損保ジャパンが今日も見守ってくれているな」と感じていただけるようなデジタルな顧客接点をつくることです。みっつ目は、市場の拡大です。あまり保険に親しみのない若い方などに対してデジタルでマーケティングする、という意味です。最後は新たなビジネスモデルの構築です。まだ詳しくは話せませんが、「えっ、保険会社がこんなことやるの!?」ということを考えています。


---:それは、保険会社の強みが活きる何か、ということですか。

楢崎:活きる部分もありますが、保険会社のレガシー、既存の業務プロセス、ビジネスモデルからは生まれない、全然違うことをやります。ただ、よくビジネスを分解してみると、保険会社のこういう強みを活かしていますよ、というものです。

2ページ目:自動運転時代の保険はどうなる!?

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《佐藤耕一》

日本自動車ジャーナリスト協会会員 佐藤耕一

自動車メディアの副編集長として活動したのち、IT企業にて自動車メーカー・サプライヤー向けのビジネス開発を経験し、のち独立。EV・電動車やCASE領域を中心に活動中。日本自動車ジャーナリスト協会会員

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