【人とくるまのテクノロジー2017名古屋】救急自動通報システム D-Call Net、2018年中の本格運用をめざす

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「D-Call Net」はクターヘリやドクターカーの出動を早期判断に役立つ新たな救急自動通報システム(写真はイメージ)
「D-Call Net」はクターヘリやドクターカーの出動を早期判断に役立つ新たな救急自動通報システム(写真はイメージ) 全 14 枚 拡大写真

車両側の安全対策が進んだこともあり、昨年は交通事故死亡者数が4000人を下回った。その一方で、運転中の事故や急病がゼロとはならない現実もある。そんな時に役立つサービスとして、新たに2018年中の本格運用を目指しているのが救急自動通報システム「D-Call Net」だ。

D-Call Netは、認定NPO法人の救急ヘリ病院ネットワーク(HEM-Net)が2015年11月末に、トヨタ自動車や本田技研工業、日本緊急通報サービスと共同で開始し、ドクターヘリやドクターカーの出動を早期判断する新たな救急自動通報システムとして、試験運用されているものだ。サービスのベースとなっているのは、2000年からサービスを開始していた緊急通報システム「ヘルプネット」で、D-Call Netはそのシステムをさらに発展させたものとなる。

ただ、現状ではヘルプネットの機能どころか、存在すら知らない人も多く、D-Call Netを本格スタートする前に広く告知するため「人とくるまのテクノロジー2017名古屋」への出展となったようだ。会場では、D-Call Netの活用例をビデオで紹介し、実際にヘルプネット機能を搭載しているレクサス『LX570』とホンダ『アコード』によるデモも行われた。

ヘルプネットとD-Call Netとの違いは、ドクターヘリやドクターカーの出動判断のタイミングにある。ヘルプネットでは事故発生時に通報を受けたヘルプネットのオペレーターが消防本部へ連絡を取り次ぎ、GPSによる位置情報を含めた形で救急要請を行っていたが、この方法では状況の確認などを順送りしていくため、救急出動までにラグが生じてしまう。さらに、事故に伴う被害状況を判断する術がなかったことも弱点として存在した。

それに対し、D-Call Netでは、交通事故発生時に車両に装備された各種センサーによって計測されたデータを活用。新開発の「死亡重傷確率推定アルゴリズム」に基づく乗員の緊急性を推定することができる。既存のGPS位置情報の送信やオペレーターによる会話での確認などと合わせ、その情報をほぼ同時にドクターヘリ基地の病院に事故発生を通報。それによって、ドクターヘリやドクターカーの早期の出動判断が行われることが最大のメリットだ。

レクサスLX570のデモでは55km/hで正面衝突し、運転者はシートベルトを着用していたものの、助手席は未装着だったとの想定で実施された。D-Call Netでは、消防本部への出動要請に加え、車両が感知したデータを「死亡重傷確率推定アルゴリズム」によって死亡・重傷確率を推定。このデータはドクターヘリ基地病院に設置されたタブレットにも送信されて、緊急事態発生を知らせるランプが点灯。隊員はこの情報をチェックしながら現場に出動するか判断するという流れとなる。

注目は「死亡重傷確率推定アルゴリズム」によってタブレットに送信されたデータだ。そこには事故が発生した位置や車両情報だけでなく、衝突した際の速度やシートベルト着用の有無による死亡・重症率の確率を分けて表示。LX570の事例ではシートベルト非装着とされた助手席乗員の重症率が高いと判断されている。この確率により、ドクターヘリ基地病院の出動が必要かどうかを早期に判断できるというわけだ。

なお、D-Call Netは基本的にヘルプネットのシステムで入っていけるため、車載機はヘルプネットに対応した機材であればOK。トヨタ車の場合なら、常時接続のDCMを装着した車種の一部では、エアバッグと連動して自動的にヘルプネットのオペレーターにつながり、現行のディーラーオプション純正ナビでも「HELPNET」のボタンを押すことで、オペレーターにつなぐことができる。

ホンダ車の場合は、メーカーオプションのナビであればすべての車種で対応し、エアバッグが開くとカーナビ側でヘルプネットへ接続するアイコンを自動表示。手持ちの携帯電話とBluetoothでつながっていることが条件だが、乗員がそのボタンを押すことでオペレーターとつながる。今のところ、D-Call Netに対応しているのはトヨタとホンダ車のみだが、今後はJNCAPでの予防安全性能アセスメントの項目にこの搭載が含まれるようになれば、搭載車は増えていくものと見られる。

《会田肇》

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