【インタビュー】 新東名で自動運転の実証実験が始まる…国土交通省 自動車局 蛯原勇紀氏

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【インタビュー】 新東名で自動運転の実証実験が始まる…国土交通省 自動車局 蛯原勇紀氏
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2020年の東京オリンピック開幕まであと3年となった2017年夏。自動運転の実現を掲げる政府のロードマップを踏まえ、各省庁の動きはますます具体化してきている。なかでも大きな役割を担うことになる国土交通省自動車局に、国土交通省の自動運転の実現に向けた取り組みの動向を聞いた。

国土交通省の担当する領域について

---:自動運転の実現に向けて、国土交通省はどのような役割を担っているのでしょうか。

国土交通省 自動車局 技術政策課
蛯原勇紀氏:政府の内閣官房や内閣府が旗振り役となって、国土交通省、経済産業省、総務省、警察庁等の関係省庁が自動運転の実現に向けて取り組みを進めています。

国土交通省においては、次の3つのテーマについて取り組みを進めています。第一に、自動運転の実現に向けた環境整備です。車両の安全対策、いわゆる保安基準と呼ばれる車両の安全基準の策定に向けた取り組みや、自動運転車が人に損害を与えた場合の責任のあり方、事故時の賠償ルールについて、自賠責保険の視点で検討しています。

第二に、自動運転技術の開発・普及促進です。自動ブレーキやペダル踏み間違い時加速抑制装置など一定の安全運転支援機能を備えた車、いわゆる「安全運転サポート車」(サポカー)の普及促進等を関係省庁と連携して進めています。また、道路と車両の連携技術についても検討を進めています。

第三に、自動運転の実現に向けた実証実験・社会実証であり、地域の公共交通や国民のモビリティの確保・維持、生産性向上という点で自動運転をどのように活用していくか検討を進めており、最寄駅や道の駅を拠点として、自動運転を活用する形で実証実験を行うこと等を検討しています。

最寄駅や道の駅をハブとする自動運転サービス

---:地域交通のハブとして、最寄駅や道の駅を活用するというコンセプトが形になるということですね。

蛯原氏:最寄駅と自宅等の最終目的地の「ラストワンマイル」を自動運転サービスで結ぶ実証実験や、物産拠点だけではなく自治体の行政窓口や診療所などが併設されるなど中山間地域における道の駅が鉄道における”駅”の立ち位置と同じようになってきており、超高齢化等が進行する中山間地域において、人流・物流を確保するため、道の駅を拠点とした自動運転サービスの実証実験を関係省庁と連携して行うこととしています。

---:最寄駅や新たに生活インフラとしての役割が産まれつつある道の駅等を拠点として自動運転車が走るということでしょうか。

蛯原氏:はい。それぞれの地域の交通環境に応じて、バスタイプの車両や電磁誘導線に沿って走るゴルフカート型の車両など、さまざまなタイプの車両を用いて各地で実証実験を始めることを計画しています。また、最寄駅や道の駅だけではなく、高齢化が進んでいる各地のニュータウンでも、ニュータウン内の拠点をつないだり、あるいは最寄り駅や病院とつなぐ形で自動運転車を走らせる検討も開始しています。

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乗用車の自動運転に関する基準について

---:一方で、パーソナルモビリティとしての乗用車の自動運転について、近年レベル2の乗用車の普及が始まっています。こちらも検討が進んでいるのでしょうか。

蛯原氏:まず前提として、自動車の安全・環境基準は国際連合のWP.29という会議体で議論・策定しており、自動運転に関する基準、例えば自動操舵や自動ブレーキに関する基準も国連で検討を進めています。我が国は自動運転の基準策定を行う各ワーキンググループの議長や副議長として国際的な議論を主導しています。

まず国際間で大枠のしっかりとしたルール作りを行い、これに沿う形で我が国の自動運転車の安全基準を設定することとなります。なお、実証実験に用いる車両については、個々の車両の性能や試験を行う環境等に応じて柔軟に設定することになると考えています。

2017年度は実証実験が本格化

---:2020年の自動運転の実現に向けて、いまはどのような進捗なのでしょうか。

蛯原氏:政府のロードマップ(官民ITS構想・ロードマップ2017)が示されており、それに沿って各種取り組みを進めていくことになります。今年度から来年の早い時期にかけて、国土交通省が実施する実証実験だけでも10か所以上、そのほかに民間企業と地方自治体が組んで進める実証実験も増えていきます。ラストマイル自動走行の実証実験のほか、物流の生産性向上の観点からトラックの隊列走行の実現に向けた取り組みも進めており、今年度から後続有人での実証実験を開始する予定です。

その他、羽田空港周辺地域等の特区を活用した自動走行システムの実証実験や、SIP(戦略的イノベーション創造プログラム)における都内から新東名を利用して行われる大規模実証実験など、関係省庁や地方自治体が実施する実証実験も行われる予定です。

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《佐藤耕一》

日本自動車ジャーナリスト協会会員 佐藤耕一

自動車メディアの副編集長として活動したのち、IT企業にて自動車メーカー・サプライヤー向けのビジネス開発を経験し、のち独立。EV・電動車やCASE領域を中心に活動中。日本自動車ジャーナリスト協会会員

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