NAVI CARSピットでカレーを作る新人編集部員は筋金入りの元料理人

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NAVI CARSチーム自慢のカレーを作るシェフは、モータージャーナリスト志望の新人編集部員
NAVI CARSチーム自慢のカレーを作るシェフは、モータージャーナリスト志望の新人編集部員 全 10 枚 拡大写真

メディア対抗ロードスター4時間耐久レース。普段原稿でクルマを盛り上げようとするメディア関係者が、この日ばかりはステアリングを握り、クルマの楽しさを身をもって体験し示す、珍しいレースだ。

9月2日、筑波サーキットで今年もその暑い戦いが繰り広げられたが、当然この参戦記が、後日各メディアで紹介されることになる。その意味では勝ち負けだけではなく、どれだけ楽しめたか、どんなふうに戦ったかまでも各チームこだわっているレースだと言えるだろう。4時間耐久レースとはいっても、コンテンツになるまでが戦い。

そんな中、7号車NAVICARSロードスターで参戦した「NAVI CARS×LOVE CARS×CVSTOS RT」のピットでは白衣を纏ったシェフが、大きなカレーを鍋で仕込み、チームスタッフにサーブしていた。実はこのシェフ、料理人ではなくれっきとした『NAVI CARS』編集部のスタッフ、冨山晶行さんだ。

実は冨山さん、もともと本職でイタリアンを手掛けていた料理人だった。冨山さんのカレーを私も頂いた。肉がほろほろに煮込まれ、トマトの酸味が爽やかで、たっぷりと玉ねぎが入っているものの、ある程度大きめに切ってあるため、甘みが主張しすぎずすっきりと味がまとめられている。それでも口に含んだ後にしっかりと甘みを帯びた旨味を楽しむことができる絶品。お代わりを申し出る人もいた。

「ヨーグルトに漬け込んだ肉を煮ることで柔らかく仕上げています。ドライバーはじめ、サーキットクルーが食べるミールですので、煮込むというよりは、お腹にやさしく、しかも皆さんに美味しく食べてもらえるような仕上がりを目指しました」と話す冨山エディター。

なんでも実際にイタリアにも料理の修行に行っていたそうだ。「実は最初はモータージャーナリストになりたかったんです。しかし父がイタリアンの料理人で『イタリアで修行だけして来い』と言われたんです。最初は1年でもいいと言われたので、そのつもりでした。モータージャーナリストが父の後輩でいるから、そのあと紹介してやるということだったので」

「でも1年では帰ることができず。そして帰ってからも実家を手伝い、ほぼ休みなしで働いていました。話が違うので、父にもう勘弁してほしいと話したところ、父が癌であることを聞かされました。そして『俺が死んだらお前の好きな事をしろ』と言われたんです。そして亡くなりました」

手際のいい冨山さんはそんな話をしてくれていながら、カレーに続いて、トマトとモッツァレラチーズのパニーニと、ミネストローネスープの仕込みに取り掛かっていた。

「料理人をやめて編集の仕事をしていますが、案外同じだと思っています。料理は100%ではだめ。1000円の料理なら1500円くらいのものを食べた感動を与える、とにかくお客さんの期待を超えるものを目指してきました。そこで感謝や感動が生まれるんです。雑誌作りも似たようなものを感じます」

亡くなられた父上もクルマやバイクが好きだったのだそうだ。「父はクルマも残してくれました。シトロエン『SM』もその1台です。あのキャブレターのシトロエンは、ドライバーにクルマの方を向くことを強いるような面があります。季節や、いろいろのコンディションで、挙動が微妙に変わるのです。でもそんなクルマを動かす時、クルマと会話するというだけでなく、クルマを通して父と会話をするような気持ちになるんです」。

この話の間、それこそキャブレターを調整でもするかのように味見をしては塩をひとつまみずつ加える。丁寧に繰り返して調えられ完成したミネストローネもまた、本当にトマトと塩だけで味を決めていたのかと驚くほどに、旨味が出ている一品だった。

走る歓びを体感し、追及するドライバーの横で、チームのメンバーすなわち食べた人の喜びを追及して料理する編集部員がいる。雑誌作りとワンメイクレース、そして料理に共通すること。それは人に「よろこび」を与えることへの挑戦。冨山さんはそんなことを教えてくれたような気がした。

《中込健太郎》

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