【ホンダ N-BOX 新型】軽自動車にも「ホンダセンシング」…搭載の裏にあった開発者の苦労とは

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ホンダセンシングを標準装備した新型N-BOX。手前がN-BOX カスタム G、奥がN-BOX G・EXターボ
ホンダセンシングを標準装備した新型N-BOX。手前がN-BOX カスタム G、奥がN-BOX G・EXターボ 全 16 枚 拡大写真

ACCまでもサポートした「ホンダセンシング」を、軽自動車として初めて標準搭載した新型『N-BOX』。その機能は全10種類にも及び、搭載するにあたっては軽自動車ならではの苦労もあったようだ。本田技術研究所四輪R&Dセンター 統合制御開発室主任研究員 中西裕一氏に話を伺った。

ホンダ車の中でも“最新版”

中西氏によれば「新型N-BOXの開発が始まったのは3年半ほど前で、その当初よりホンダセンシングの搭載は決定事項だった」という。「最初は機能すべてを搭載するか、あるいは一部だけにとどめるか議論となったが、最終的にはホンダ車であれば安全機能やドライバーサポートについて区別すべきではない」との結論に至った。特に注目すべきは、そのセンシングにカメラとミリ波レーダーを組み合わせたフルスペックのホンダセンシングを採用したことだ。これまで軽自動車では、カメラや赤外線レーダーを組み合わせることはあっても、比較的コストがかかるミリ波レーダーと組み合わせした例はない。にもかかわらずN-BOXではそれを標準装備としたのだ。

しかも、搭載したホンダセンシングはホンダ車の中でも“最新版”と言えるものとなっている。最近社会問題化している誤発進については「誤発進抑制機能」を前方だけでなく後方に対しても装備しており、これはホンダ車として初めての対応だ。中西氏は「ライバルを意識したことはない」と話すが、他社ではこの機能を搭載する車が相次いでいる今、これを非搭載とすれば商品性としてハンデを抱えるのは疑いのない事実。これは「オートハイビーム」についても然り。ホンダ車としてはレジェンドやグレースにしか搭載してなかった機能でもあるが、今や軽自動車にも搭載するクルマが増えている状況にある。その意味でこれらの搭載は自然な流れだったとも言える。

見逃せないのはそのセンシングで、新型N-BOXではフロントウインドウに組み込むカメラにその機能を持たせた。中西氏によれば「カメラと一体化したことでコストも下がると同時に信頼性の向上にもつながった」。一石二鳥のホンダセンシング最新版であるというわけだ。

センサーの取り付け位置に苦労

では、新型N-BOXへホンダセンシングを搭載するに当たって、障害はなかったのだろうか。中西氏は「実はこれがとても大変だった」と打ち明ける。軽自動車の多くはすべてがギリギリのせめぎ合いの中で構成されており、新型N-BOXも例外ではない。通常ならホンダのロゴマーク裏に取り付けるところだが、とてもその辺りに取り付けるスペースはない。結局スペースを確保できたのはバンパーの右側で、ここに完全シールドする形で収納したという。心配だったのはその位置が路面に近いところにあり、誤動作はしないのかという点。中西氏は「正直に言えば、取り付け位置はエンブレムのところがベスト。しかし、検証を重ねることで誤動作の発生は最小限にとどめた」と話す。

特に気遣ったのが冬場の着氷雪付きだったという。「気温が低い厳寒期ではほとんど影響は出ないが、雪解けが始まる春先になると先行車が跳ね上げた雪が影響を及ぼしやすくなる」(中西氏)。そんな時はホンダセンシングは機能をやむなく停止し、モニター上にそのことを告げるメッセージが表示される仕組みになっているという。しかし、中西氏が2シーズンに渡って検証した結果では、よほどのことがない限りそのような状況にはならなかったようだ。

一方で、「ホンダセンシングが持つ高機能をどこまで使ってもらえるかは未知数だ」とも話す。特にACCについては先行車に自動追従するとは言え、N-BOXでは車速が25km/h以下になると追従をやめてしまう。その意味であくまでクルーズコントロールの延長線上にある機能なのだが、制御そのものについてきちんと理解して使える人はおそらく少数だろう。ただ、こればかりは使ってみて初めて実感できるものであって、その意味でも月間生産予定台数の2倍となる3万台を受注(9月3日現在)したN-BOXにこの機能を搭載したことの意義は大きい。ACCを含む先進安全装備(ADAS)の裾野を広げる試金石ともなる可能性があるからだ。

新型N-BOXがきっかけとなり、数年後にはもしかしたら日本は世界で最もACCが普及した“ADAS先進国”になっているかもしれない。

《会田肇》

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