【ホンダ フィットRS 試乗】どうせ売れないなら、フリークをうならせる足回りに…井元康一郎

試乗記 国産車
ホンダ フィットRS
ホンダ フィットRS 全 6 枚 拡大写真

今年6月末に大規模改良を受けたホンダのBセグメントサブコンパクト『フィット』をテストドライブする機会があった。ボディ、シャーシ、エンジン等、さまざまな部分に手が入ったことにより、ハイブリッドは期待値を大幅に上回る進化ぶりを見せた。それに対し、期待値を下回っていたのは1.5リットル自然吸気エンジンを搭載するRSだった。

クルマとして悪いというわけではない。運転してみれば、至って普通に良く走る。最高出力97kW(132ps)、リッターあたり88psと、今どきの自然吸気エンジンとしてはそこそこハイチューンなエンジンは相変わらずいい仕事をするし、シフトストロークが冗長でゲート感も明瞭でないものの、国産では貴重な6速MTによって得られる軽快なフィールも健在だ。

期待外れなのはシャシーチューニング。RSという名でイメージするのは、3列ミニバンにしておくのがもったいないような素晴らしいスポーツハッチ的挙動を見せた『ジェイドRS』。ステアリングの操作量とロール角が切り足し、切り戻しの両方向でぴったり正比例するような、ルノースポール的ハンドリングだった。

現行フィットRSの初期型はそういうハンドリングの質感はなかったが、アジリティ(敏捷性)自体は結構良かった。そこにジェイドRS的な味付けが加われば、ドライビングの楽しいミニツーリングカーになるという期待があったのだが、実際にはサスペンションが変に柔らかく、ハンドリングもぐにゃついたフィールに終始した。開発陣によれば、RSは専用チューニングの足回りを持つとのことだが、これなら同じ185/55R16サイズのダンロップ「SP SPORT2030」を履く「ハイブリッドS」の足のほうがむしろ素直だろうと感じた。

また、初期型では荒々しくも快音を立てていたエンジン音も、シリーズ全体の静粛性向上策が裏目に出てか、スポーティな音成分がカットされてしまい、カアァァンという金属音を伴うものからブオオオという鈍い音に変わっていた。ドライビングにおける体感のデザインは体へのGの伝わり方だけでなく、音や振動も重要な役割を果たす。これはちょっともったいない。

とはいえ、フィットで6速MT車が用意されているのはRSのみ。コンパクトスポーツハッチフリークにとっては貴重な選択肢のひとつとなろう。今の日本では販売比率はどう転んでも2%くらいにならざるを得ない。どうせ売れないのであれば、そういうフリークをうならせるような足回りに仕立てたほうが良かったのではないかと思われた。ホンダの技術力をもってすれば、乗り心地を大幅に悪化させずともそういう味付けにしようと思えばできるはずだし、そのほうがRSのバッジも光を放つというものだろう。

■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★
フットワーク:★★
オススメ度:★★

《井元康一郎》

井元康一郎

井元康一郎 鹿児島出身。大学卒業後、パイプオルガン奏者、高校教員、娯楽誌記者、経済誌記者などを経て独立。自動車、宇宙航空、電機、化学、映画、音楽、楽器などをフィールドに、取材・執筆活動を行っている。 著書に『プリウスvsインサイト』(小学館)、『レクサス─トヨタは世界的ブランドを打ち出せるのか』(プレジデント社)がある。

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