【フランクフルトモーターショー2017】「ビジョンゼロ」の実現へと加速するZF

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ZF プレスカンファレンス(フランクフルトモーターショー2017)
ZF プレスカンファレンス(フランクフルトモーターショー2017) 全 35 枚 拡大写真

ドイツ・メガサプライヤーの一角であるZF。幅広い守備範囲を誇る部品メーカーであり、日本市場においては昨年話題になった日産の運転支援技術「プロ・パイロット」の前方カメラを供給したサプライヤーとしても知られている。

そのZFは、2015年に大手部品メーカーTRWを買収し、先日両社の統合プログラムの大部分が完了したと発表した。これにより、名実ともに世界で三本の指に入る巨大部品メーカーとなった。その直近の動向を追いながら、ZFの現在地、そして目指すところを紐解いてみたい。

◆現時点での集大成

9月12日、ZFのお膝元であるドイツにおいてフランクフルトモーターショー2017が開幕した。

「see. think. act.:見て、考えて、動かす」というスローガンのもと、電動化および自動運転に向けた製品ラインナップを拡充してきたZFは、大型買収となったTRWとの統合プログラムもほぼ完了し「ワンカンパニー」として出展することになった。メインテーマは「ビジョンゼロ」。クルマの安全性向上と電動化によって、死亡事故ゼロ、排出ガスゼロを目指すものである。

ZFの最高経営責任者(CEO)であるシュテファン・ゾンマー博士は、「TRWの乗員保護、エレクトロニクスおよびステアリングとブレーキ関連技術が、ZFの製品ラインナップを理想的に補完し、今後の発展に貢献しています。TRWとの統合は『ビジョンゼロ・エコシステム』の考えの基盤になっています」と説明している。

「ビジョンゼロ・エコシステム」とは、高度に専門化した企業と提携し、その協力関係を成長させることでZF自らの総合的な技術力拡大を図る、という考え方だ。まさに、ZFのこれまでの取り組みをあらわした言葉と言える。

フランクフルトモーターショーでは、その象徴としての「ビジョンゼロ・ビークル」をはじめビジョンゼロを実現するための最新の技術提案が行われた。現時点でのZFの集大成である。このように、ZFの動きを通してフランクフルトモーターショーの展示をみると、彼らの現在地そして目指すところが立体的に見えてくるはずだ。

◆戦略目標である「see. think. act.」

昨年来、ZFは戦略の柱として 「see. think. act.:見て、考えて、動かす」を掲げている。このスローガンは、具体的には何を指すのだろうか。

取締役のピーター・レイク氏は以下のように語っている。「see(見る)はレーダー、カメラ、レーザースキャニングなどによって、車両の周囲360度を見渡せるようになるということ。think(考える)はハードウェアとソフトウェアにAIが加わり、車両自体が思考できるようになるということです。act(動かす)はアクチュエーターを車体の各所に配置することで実現します」。

この言葉と直近のZFの動向をあわせて考えると、彼らがこのキーワードのもとに事業ドメインを定め、リソースの選択と集中をしていることがはっきりとわかる。自社の技術開発はもちろん、他社との提携や出資に関しても明らかに「see. think. act.」のもとに事業を加速しているのだ。

◆他社との提携で広がる可能性

TRW買収を皮切りに、ZFは「see. think. act.」に基づいた提携、出資を加速する。今年を振り返ってみると、1月のCESではNVIDIA社との提携を発表。自動運転用の車載コンピュータ「ZF ProAI」を2018年までに製品化するとした。

3月には、極ミリ波レーダーの開発を手掛けるドイツのアスティクス・コミュニケーション&センサー社に出資。自律走行に向けたセンシング技術の補完が目的となる。そして5月、フランスのフォーレシア社と提携。自動運転に向けたコックピットやパッシブセーフティ技術の共同開発を目指す。6月には、運転支援用カメラを手掛けるドイツの大手部品メーカー、ヘラー社とも提携した。

さらにフランクフルトモーターショーにあわせて、中国のITジャイアントである百度(Baidu=バイドゥ)と、自動運転技術に関する提携を発表。同時に、IBMおよびUBSとの共同開発となる電子決済システム「Car eWallet」の提供を進めるという。IBMのブロックチェーン技術によって、安全で透明性が高い決済をサポートするものだ。

電子決済システム「Car eWallet」のデモ

◆そして「ビジョンゼロ」へ

これら他社との提携や出資だけでなく、ZFの元々の守備範囲であるシャシーやサスペンションなどの領域も、技術開発の手を止めているわけではない。トランスミッションとモーターをモジュール化したEV/ハイブリッドカー向けの電動アクスルドライブ「eVD2」は、2018年に量産が開始される。これに関連して、2017年6月には、電動化を見据えた次世代モジュラー式リアアクスル「mSTARS」を発表。電動パワートレインとシャシー技術をひとつのシステムに結合し、非常に省スペースなのが特徴だ。まさにZFの本領発揮である。

同じく6月には、新開発のインテリジェントシャシー技術「ICC(Integral Chassis Control)」を発表した。フロントアクスルの電動パワーステアリング、フロントアクスルの電動パワーステアリング、リアの操舵システムであるAKC(アクティブキネマティックコントロール)、アクティブダンピング、電子ブレーキなどの先進機能を、すべて接続している。自動運転、電動化に必要な要素技術を統合制御するシステムである。

パワートレインにおいても、2017年の2月に、ハイブリッドカー対応の8速DCT(デュアルクラッチトランスミッション)を発表。高い運動性能とゼロエミッションを両立したもので、ポルシェ『パナメーラ』に搭載されている。

安全面でも抜かりはない。2017年6月には、シート一体型のセンター・エアバッグを開発。車両の中央に展開するサイドエアバッグで、衝突時に乗員が車室内で移動するのを抑制するものだ。頭部の保護や、乗員同士の衝突を避ける目的がある。

コネクテッド領域でも開発は進んでいる。2016年11月に、車両とスマートフォン、スマートウォッチなどが連携して衝突の危険性を伝える「X2Safeインテリジェント・アルゴリズム」を発表。同時に、カーシェアリングやレンタカー会社向けのフリート管理アプリケーション「オープンマティックス・ダッシュボード」も提供するとした。

今回のフランクフルトモーターショーで、技術力のショーケースとして発表されたのが、ZFの次世代安全システムを搭載した研究開発車両、「ビジョンゼロ・ビークル」だ。ZFが掲げる死亡事故ゼロ、排出ガスゼロというテーマ、「ビジョンゼロ」達成への道のりにおける大きなマイルストーンでもある。

屋外会場では「ビジョンゼロ・ビークル」のデモンストレーションも実施。より具体的にZFの方向性と技術力を示した。

ZFジャパンのホームページはこちら

《佐藤耕一》

日本自動車ジャーナリスト協会会員 佐藤耕一

自動車メディアの副編集長として活動したのち、IT企業にて自動車メーカー・サプライヤー向けのビジネス開発を経験し、のち独立。EV・電動車やCASE領域を中心に活動中。日本自動車ジャーナリスト協会会員

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