【アウディ SQ5 試乗】SUVでもここまで調律できるものか…木下隆之

試乗記 輸入車
アウディ SQ5
アウディ SQ5 全 14 枚 拡大写真

2代目となる新型アウディ『Q5』を目にした時、エクステリアデザインの安定感に気持ちが吸い寄せられただけではなく、いささか大柄になったなぁという印象を持った。

伝統的なワンモーションのグリルはバランスがいいし、フロントフェンダーから流れるサイドのキャラクターラインも抑揚があって、都会的になった。それでいて、前後に50mmも長く、5mmも高く、ホイールベースは15mm延長されていたから、その体躯は堂々と感じられたのだ。その時、僕は思った。アウディの武器である走りの性能を忘れたアーバンSUVに成り下がってはいないだろうな。そう心配したのである。

だが、結論から言えば答えは否だ。心配はまったくの杞憂に終わった。ボディは大きくなったけれど、全幅は旧型との違いはない。2リットル直列4気筒ターボの「2.0TFSIクワトロ」は60kgものダイエットに成功しているし、さらに強力な3リットルV型6気筒ターボエンジンを搭載する『SQ5』は、70kgも軽いのである。しかも、最新のMLBevoプラットフォームを採用することで、走りの性能は格段に高まっているのだ。アウディQ5の羽をもがれたわけではまったくないのである。

むしろ、圧倒的に洗練されていた。2.0TFSIクワトロは、とても優しい常識的な走り味を披露。小排気量ターボのデメリットである極低回転レスポンスも悪くはない。走りも鈍重ではない。

だがそれよりも感動したのはSQ5である。エンジンは想像通り力強く、低回転域からグイグイとトルクを嵩上げしていく。サウンドも爽快であり、駆動系から伝わるバイブレーションも心地いい。ボディは肥大化していながらも、鈍さはまったくないのだ。70kgダイエットが効いているのだろう。

さらに感動したのは、軽快なフットワークである。秀逸なのは、ステアリング応答性が実に小気味いいことだ。ワインディングを意識したハイペースではないのに、舵角に忠実にノーズが反応する。車高の高いSUV だからと、軽快なハンドリングなど諦めていたけれど、アウディマジックにかかれば切れ味は増す。スポーツカーのそれを超える節度感なのである。

もちろん足回りがガチガチにハードであるわけもない。ほどよくロールしてしすぎない。切れ味は鋭くて鋭すぎない。SUVでもここまで調律できるものかと感心して口が開いた。久しぶりの感動である。アウディSQ5、おそるべし…。

■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
オススメ度:★★★★★

木下隆之| モータージャーナリスト
プロレーシングドライバーにして、大のクルマ好き。全日本GT選手権を始め、海外のレースでも大活躍。一方でカー・オブ・ザ・イヤー選考委員歴は長い。『ジェイズな奴ら』を上梓するなど、作家の肩書きも。

《木下隆之》

木下隆之

学生時代からモータースポーツをはじめ、出版社・編集部勤務を経て独立。クルマ好きの感動、思いを読者に伝えようとする。短編小説『ジェイズな奴ら』も上梓。日本・カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。「心躍るモデルに高得点を与えるつもり」。海外レース経験も豊富で、ライフワークとしているニュルブルクリンク24時間レースにおいては、日本人最高位(総合5位)と最多出場記録を更新中。

+ 続きを読む

【注目の記事】[PR]

ピックアップ

教えて!はじめてEV

アクセスランキング

  1. 軽オープンスポーツカー、2代目ダイハツ『コペン』が誕生!!
  2. ランドローバーが『ベイビーディフェンダー』発売ってほんと? これが市販デザインだ!
  3. 「さすが俺達の日産技術陣!」日産の新型EVセダン『N7』にSNS反応、「カッコ良すぎないか」などデザイン評価
  4. ヤマハの125ccスクーター『NMAX 125 Tech MAX』が世界的デザイン賞、ヤマハとしては14年連続受賞
  5. ゴミ回収箱に人が入ることは予見不能
ランキングをもっと見る

ブックマークランキング

  1. トヨタ「GRファクトリー」の意味…モータースポーツのクルマづくりを生産現場で実現【池田直渡の着眼大局】
  2. “走る巨大バッテリー”の実力! BEV+家電は悪天候でも快適に遊べる組み合わせだった
  3. BYDが「軽EV」の日本導入を正式発表、2026年後半に
  4. EVシフトの大減速、COP消滅の危機…2024年を振り返りこの先を考える 【池田直渡の着眼大局】
  5. 住友ゴム、タイヤ製造に水素活用…年間1000トンのCO2削減へ
ランキングをもっと見る