レオナルド・ダ・ヴィンチを蘇らせる…ロボット・AI開発のもうひとつのアプローチ

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レオナルド・ダ・ヴィンチのアンドロイドとともにスピーチ
レオナルド・ダ・ヴィンチのアンドロイドとともにスピーチ 全 6 枚 拡大写真

ジェイテクトルーム銀座(東京都中央区)では、1月31日まで「レオナルド・ダ・ヴィンチの描いた夢とジェイテクトの技術」という展示を行っている。そのオープンとなる11月27日、大阪大学大学院 浅田稔教授によるキーノートスピーチが行われた。

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浅田教授は、ロボカップ(自律ロボットによるサッカー競技)の創設者のひとりで、国内ロボット、人工知能研究の一人者だ。ジェイテクトの技術アドバイザーも務めており、今回の展示イベントには、教授らが開発・制作したダ・ヴィンチのアンドロイドを期間限定(12月8日まで)で提供している。アンドロイドは、イタリア・ミラノのレオナルド・ダビンチ国立科学技術博物館の協力もあり、非常に精巧に作られている。表情や会話するときの唇の動きも正確にシミュレーションされるものだ。

浅田教授がダ・ヴィンチのアンドロイドを作り始めたきっかけは、2003年に開催されたロボカップ イタリア大会だそうだ。レオナルド・ダ・ヴィンチは、科学、技術・芸術を極めた偉人として名高い。現在、科学・技術・芸術はそれぞれ別々の学問または領域として広がっているが、浅田教授ら研究しているロボットや人工知能は、これらが高度に融合する必要があるという点で共通するという。

近年、メディアを賑わしているAIやロボットは、アルゴリズムや機械学習(および深層学習)によって人間の行動や機能を代替させるアプローチをとっている。これに対して、浅田教授のアプローチは、人間をより正確に観察し、本質を見出すことでその機能を機械にまねさせようというものだ。前者のアプローチは、なぜそのような結果になるか解析が非常に困難で、いわば「こうするとうまくいく」という現象に頼る人工知能だ。後者は、人間の知能や意識の発現を脳細胞や触覚・知覚といった神経細胞のシミュレーションで実現させる人工知能ともいえる。

前者の人工知能は、犬や猫は識別できるが概念の理解できないが、後者の人工知能は、犬や猫を概念として理解できる可能性がある、言い換えることができるかもしれない。

どのような研究をしているかというと、たとえば、260万の脳細胞と5.1兆のシナプス結合、400の筋肉や感覚器官をモデル化することで、胎児の行動をシミュレーションする。この研究は、早産した胎児のケアや発達障害の研究に役立てているという。人工声帯の研究では、プログラムされた言葉を発音させるのではなく、学習によって発音を覚えさせている。あるいは目や耳、手足を持った赤ちゃんロボットを開発し、それが刺激によってどのように動くか、どんな学習をしていくかを研究することで、脳の発達、人工知能の研究に役立てている。

浅田教授らのグループが人間にそっくりなアンドロイド、手足、触覚・知覚センサー、声などにこだわるのは、これらの物質的な入出力がなければ知性は再現できないと考えているからだ。

しかし、このアプローチには否定的な意見もあるという。人工知能研究と飛行機の研究を対比させて「飛行機は鳥のマネをして羽ばたいても実現せず、鳥とは似ていない形が成功している。人工知能も人間の脳や人間をマネてもうまくいかない」という反論だ。これに対して浅田教授は、「飛行機の形は、鳥が飛ぶという機能を流体力学のレベルで抽象化したもので、鳥や翼を本質まで観察した結果だ」とする。

ジェイテクトルーム銀座の展示は、レオナルド・ダ・ヴィンチのアンドロイド(12月8日まで)以外に、ダ・ヴィンチが考案した世界初のベアリングや自動車の再現模型、各種自動車ベアリング、パワーステアリングなどジェイテクトの製品・技術も展示されている。なお、土日は休館日なので注意してほしい。


《中尾真二》

テクノロジージャーナリスト・ライター  中尾真二

アスキー(現KADOKAWA)、オライリー・ジャパンの技術書籍の企画・編集を経て独立。現在はWebメディアを中心に取材・執筆活動を展開。インターネットは、商用解放される前の学術ネットワークの時代から利用し、ネットワーク、プログラミング、セキュリティについては企業研修講師もこなす。エレクトロニクス、コンピュータのバックグラウンドを活かし、自動車業界についてもテクノロジーを中心に取材活動を行う。

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