低消費電力と性能を両立した自動運転用SoC向けハードウェアアクセラレーター『aiWare』

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aiWareの評価ボード近影。AlteraのFPGA『Arria-10』にaiWareが組み込まれている。
aiWareの評価ボード近影。AlteraのFPGA『Arria-10』にaiWareが組み込まれている。 全 9 枚 拡大写真

ハンガリーの自動運転技術企業AImotive 社は12月11日、東京都内において、自動運転向けハードウェアアクセラレーター『aiWare』の説明会を開催した。車載AIの大きな課題となっている消費電力の問題を解決しながら、高い処理能力を実現するものだ。

AImotive社は、ハンガリーのブダペストに本拠を置く企業で、自動運転のAIソフトウェアや、自動運転用SoC(システムオンチップ)に組み込むためのハードウェアアクセラレーターを提供している。自動運転向けAIソフトウェア『aiDrive』は、すでにPSAグループやボルボなど複数の自動車メーカーとビジネスの実績があり、日本国内のTier1とも取り組みを進めている。
AImotiveの商材

今回の発表会のメインとなったのは、ハードウェアアクセラレーターのaiWare。AImotive社のチップテクノロジー責任者のマートン・フィーファー氏がプレゼンテーションに登壇した。まずフィーファー氏は、現在の自動運転向け車載SoC(システムオンチップ)の課題について言及した。

「現在、消費電力の大きさとレイテンシ(遅延)が問題視されている。また今後は(カメラの性能が向上し)、画像はますます高精細化する。つまり、一つの画像をできるだけ早く解析するためには、いかにスケーラブルなシステムであるかが重要になる。」
aiWareと競合製品との比較

そして、aiWareのメリットをアピールした。aiWareは、同じ消費電力であれば現行GPUの3-5倍のパフォーマンスを発揮するという。

「aiWareは、低消費電力でスケーラブル、かつレイテンシの問題を解決するニューラルネットワーク用のハードウェアアクセラレーターだ。GPUは消費電力の問題、FPGAには大量生産の問題がある。aiWareは、AIのニューラルネットワーク専用に作りこんだアドバンテージがある」

「IP(知的財産)の形でaiWareを半導体ベンダーにライセンス提供していく。NNEF(NEURAL NETWORK EXCHANGE FORMAT:ニューラルネットワークの標準規格)にも準拠している。NNEFによって、様々なハードウェアでニューラルネットワークを動作・再利用できるので、多くの半導体ベンダーが利用できる。これまでは(ニューラルネットワーク向けの)半導体ベンダーとしてNVIDIAが中心だったが、これによって今後、(aiWareを組み込んだ)いろいろな半導体ベンダーが出てくるだろう」
今回発表されたaiWare評価ボード。FPGAとaiWare(アクセラレーター)の組み合わせとなっている。

デモンストレーションでは、aiWareをAltera(Intelが一昨年に買収したFPGAベンダー)のFPGAに組み込んだ評価ボードが発表された。デモンストレーションの説明に立ったAImotive 日本オフィス代表のアクセル・ビアルケ氏は、ビジネスモデルやビジネスの進捗をアピールした。

「aiWareはIPの形でライセンス提供する。現在ほぼすべての半導体ベンダーと商談を進めており、もちろん日本のルネサスエレクトロニクス(車載SoCで首位級のTier1)も含まれる。現在PoCの段階であり、おそらく2年から2年半で量産に移行することが見込まれる」

「競合については、独自のIPを持っている半導体ベンダーとなるだろう。ただ現時点では、消費電力、スケーラブル、レイテンシの3つの問題を解決するソリューションはaiWare以外にないと認識している」

また記者会見では、半導体商社の菱洋エレクトロが、AImotive社の活動をサポートすることが併せて発表された。技術的なバックアップのほか、日本国内の自動車メーカーやTier1へのプロモーションでも協力するという。

《佐藤耕一》

日本自動車ジャーナリスト協会会員 佐藤耕一

自動車メディアの副編集長として活動したのち、IT企業にて自動車メーカー・サプライヤー向けのビジネス開発を経験し、のち独立。EV・電動車やCASE領域を中心に活動中。日本自動車ジャーナリスト協会会員

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