「2018年もCOTYを狙いたい」ボルボカージャパン木村社長[インタビュー]

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ボルボ・カー・ジャパン代表取締役社長の木村隆之氏
ボルボ・カー・ジャパン代表取締役社長の木村隆之氏 全 8 枚 拡大写真

2017-2018日本カーオブザイヤー(以下COTY)に輝いたのはボルボ『XC60』だ。そこで早速ボルボ・カー・ジャパンの木村社長にその感想や、授賞要因等を聞いてみた。

◇最新のボルボが最良の安全が勝因

---:この度は本当におめでとうございます。まさに快挙でしたね。

ボルボ・カー・ジャパン代表取締役社長の木村隆之氏(以下敬称略):BMWに勝ちたいと頑張っていました。開票を見るとBMWが僅差で2位だったのでしびれましたね(笑)。

---:ボルボXC60という商品の勝因は何だとお考えですか。

木村:XC60も、最新のボルボが最良の安全だというお約束は守っていますので、90シリーズに装備されていない安全装備がXC60に付いているものもあります。これは正しい考えだと思っておりますし、そういうところが評価されたのでしょう。

それから個人的には同じSPAというプラットフォームを使いながらも、90シリーズとは全く味付けが変わり、かなり軽快でカジュアル方向に振られています。ボルボブランドのクルマが全部、松竹梅のラインナップだとつまらないでしょう。このように横に広がるホリゾンタルなラインナップで、お好きなものをお選びくださいというイメージになっています。

個人的にはこの2つ。XC60なりのポジショニングをしっかり打ち出しているということと、最新のボルボが最良の安全というところがキモかなと思っています。

◇もっとボルボを知ってもらうための活動の成果

---:今回ボルボ・カー・ジャパンとして受賞に至るまでどのような活動をしてきたのでしょうか。

木村:我々は素直な気持ちで賞狙い以前に、新生ボルボをアピールすることを考えました。ジャーナリストの影響力は非常に大きいので、きちんと我々の商品をアピールして、それが世の中に伝わっていく。そのために、COTY関係のジャーナリストの人脈作りをして、皆にボルボが変わったとか、良いと書いてもらえるようにしていきました。そして、今年の10ベストカーを見て、何とか輸入車の中では1位になりたい、1位を目指そうという活動をしたのです。

一方でRJCカーオブザイヤーを受賞いたしましたので、少し不利かなと(笑)。社内を見渡すと元商品担当や元広報担当など、たくさんジャーナリストを知っている者がいます。その全員が、新生ボルボはこう変わったのだから乗ってくださいとか、その良さを喋ろう。それでもう一度この劣勢の中どこまでいけるかやってみようと、色々な活動を行いました。その結果、本当にありがたいことに評価してもらえる方が多くて、こういう結果になりとても嬉しく思っています。

実は私が就任したとき、『V40』という素晴らしいクルマを導入しながら、“なんてへぼいブランドだ”と思っていました。それは、クルマは良いにも関わらずブランドの評判は大したことがない。逆にV40を安売りしてプレミアムイメージを毀損していたのです。そこからスタートして、じわじわと様々な取り組みをして、最近は商品も更に良くなって来ましたので、我々がやってきたことの後押しが出来るようになりました。そして今回、このようにお墨付きをもらいましたで、思わずブランドの復活宣言をしました。これも皆様に後押ししてもらったおかげだと思っています。

◇2018年も目指す!!

---:今回COTYを受賞しましたが、2018年はいかがでしょう。

木村:2018年も、もう一度COTYを頂いても良いクルマが出ますから、真剣に挑戦してきます。インポートは絶対に頂こうと思っています。2018年に導入する新モデル、『XC40』も新生ボルボという意味では、スタイリングのテイストといい、パッケージングの新しさといい、皆さんに乗ってもらって世に問うだけのものあると考えていますのでとても楽しみです。

また新しいプラットフォームもとても評判が良く、スウェーデンで乗ったジャーナリストからは、今回COTYを受賞したXC60以上に良いかもしれないといわれています。デザインも、ブランドのアイデンティティは貫かれていながら、少し小ぶりのSUVには欲しい性格、いまでのボルボらしくない、なんとなくやんちゃな感じが出ていて良いですね。

更に日本はこのようなクルマのユニークなテイストをわかる人たちが結構多いのでアタルのではないかと期待しています。

◇安全という企業理念とメイドバイスウェーデンが訴求ポイント

---:ボルボは歴史の長い会社であり、かつ日本には古くから輸入されていますので、ボルボというブランド自体はすごく馴染みがあります。しかし、ボルボというクルマはわかっていても、ブランドのイメージがなかったように思います。

木村:そうですね。四角いとか頑丈とか、質実剛健、ぶつかっても安全というイメージはありますが、それ以外はあまり皆さんに知られていませんでした。

---:そして特に訴求もして来なかったようにも思います。例えば、『PV544』に初めて3点式シートベルトを標準装備したなどということも、とても重要なことですが、訴求されていません。

木村:やはりニッチであまり台数が出ないということもあり、訴求はしていたものの、あまり伝わっていないストーリーはたくさんあると思っています。

---:今後はそういったことをも含めて訴求していくという考えはありますか。

木村:もちろん安全については一番の訴求ポイントですし、そこは変わりません。ただ、安全で(他メーカーと)差別化するのかといわれることがあるのですが、我々は安全を差別化のためにやっているのではないということを申し上げておきたい。スウェーデンのエンジニアは、昔からこれが一番大事だという企業理念として、信じてやって来ているのです。そこをきちんと伝えていきたいと考えています。我々は開発出来る立場ではありませんが、例えば事故調査隊などの取り組みや歴史なども含めて、その考え方をきちんと伝えていきたいと思っています。

もうひとつ、スウェーデンも伝えていきたいポイントです。ボルボのイメージを聞くと、特に日本人は四角くて頑丈、安全は出て来ますが、メイドバイスウェーデンということが全く伝わっていません。しかし最近ではボルボのデザインも変わって来て、スウェーデン製の良さである、シンプルさ、室内のやさしさ、明るい色使いの上手さがクルマの中に取り込まれていますので、より訴求していきたいのです。

---:特にそのデザインの部分はものすごく訴求する意義があると思います。

木村:本当にスウェーデンらしさを内外デザイン、特に内装で表現出来るようになってきたのは大きいですね。

---:例えばXC60のインテリアで使われている流木をイメージしたドリフトウッドやそのアイディアのひらめきなどをもっと訴求すると、オーナーの満足度が上がり、また、これから買おうかなと思っている人はそういったこだわりでデザインが出来ているのかという気づきがあります。

木村:デザインは明らかにこだわっています。ドリフトウッドなどは私も見て感心しました。あとは我々の出来ることを取り組んでいくために、例えば内装は黒の用意もあるのですが極力導入しないようにしています。

黒ではデザインの特徴がわからなくなってしまいますし、ジャーマンとどうやって差別化するのか。そこで、思い切って90シリーズからR-Design以外の黒の内装は一切導入していません。インテリアのコーティング剤も開発し、3年経っても汚れない取り組みも行っていますので、お客様からは一切黒がないことに対しての不満はありません。それどころか、むしろボルボの内装は良くなった、こういう明るい内装は是非欲しいといわれるようになり、非常にありがたいと思っています。

◇ユーザー層は変わらず、ただリーチの範囲は広がった

---:そうするとお客様層も変わってきているのですか。

木村:どうでしょう。たぶん今までのお客様層とほとんど価値観やテイストは変わらないのですが、リーチする範囲が“ふわっ”と広がって来たのです。価値観などは同じお客様だと思います。

---:その価値観とはどういうものですか。

木村:ボルボを買う人は間違いなくセルフコンフィデントな人です。クルマのブランドで自分のステータスを表そうということにはほとんど興味がない人たちですね。自分がブランドですし、自分の考えはしっかり持っている人たちが選ぶクルマだということは強く感じています。ドイツ系のブランドには何割かはクルマでステータスを示したい人たちがいて、そういう人たちが販売を支えていますが、ボルボにはそういう人たちはいません。

◇ボルボから離れられなくなる魅力

---:個人的な話なのですが、友人がずっとボルボに乗り継いでいて、つい先日、『XC90 T8』に買い替えました。彼曰く、一度ボルボに乗ると離れられないというのですね。その理由は、まずは家族も含めて守ってくれるという安全性とそこから来る安心感だそうです。そしてもうひとつは、実際に乗ると楽しく走らせることが出来ることでした。この乗ったときの楽しさと安心感、家族を乗せたときの安全性を考えると、ボルボ以外は考えられないといいます。そういうユーザーがボルボにはとても多いと思いますし、そこをXC60も訴求しているのだと思っています。

木村:その通りですね。ブランド商品の伝統として、例えば私の古い『P1800』もそういう味があります。シートが良く、乗りやすいし、クラシックカーとは思えないと皆さんおっしゃる。気難しくないし、安心安全でもあります。実はうちの妻もはまっているんですよ。私は二十数年間国産メーカーに勤めていましたので、ずっと国産車に乗っていました。しかし、こんなにいいクルマがあるのならもっと若いうちから、早くから乗りたかったといっています(笑)。

◇ボルボを売るのはエキサイティングな体験

---:木村さんはこれまでトヨタや日産などの大手メーカーに勤めた経験をお持ちです。そういった会社と比較し、今のボルボをどう思いますか。

木村:私はこういうニッチなプレミアムブランドに勤めたことはありませんので、一概にはいえません。トヨタも日産もマスを追いかけていましたし、マスの会社としてもやっていたことは全然違い、トヨタでは、弱いヨーロッパ市場でブランドをどう打ち立てるか。日産では、インドネシアのようにモータリゼーション真っ只中のところにダットサンを導入するために、そこにどう上手く乗っていくかでした。

また、日本でのレクサスの立ち上げを3年半やりましたが、そこで日本市場にある価値観や意識などが一番進んでいることがわかりました。消費行動が二極化しているのです。

社会階層が二極化しているのではなく、可処分所得の中でクルマが好きな人はクルマにお金をいっぱい使うでしょうし、ものにこだわらなければ100円ショップに行く。その中で、シェアリングのクルマとプレミアムのクルマがどんどん別れていっています。そういう意味で日本は世界最先端で、その成熟市場でボルボのような非常にユニークで面白く良い商材を扱うというのは、これはこれでエキサイティングな経験だと思っています。

《内田俊一》

内田俊一

内田俊一(うちだしゅんいち) 日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員 1966年生まれ。自動車関連のマーケティングリサーチ会社に18年間在籍し、先行開発、ユーザー調査に携わる。その後独立し、これまでの経験を活かしデザイン、マーケティング等の視点を中心に執筆。また、クラシックカーの分野も得意としている。保有車は車検切れのルノー25バカラとルノー10。

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