【土井正己のMove the World】AI時代のものづくりは「ロボットから人間へ」トヨタの意外な戦略

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トヨタ九州苅田工場
トヨタ九州苅田工場 全 1 枚 拡大写真

AIは、今や未来の産業の常識として語られている。また、昨今、少子高齢化や労働力不足という理由から65歳以降の「高齢者雇用」という問題も議論されている。この2つは、全く異なるものとして見られているが、実は「ものづくり現場」では大きな関係がある。

現在の「ものづくり現場」でのロボットは、人間がやってきた仕事をデータ化し、それをロボット体内のシステムにインストールすることで、人間の仕事を代替することから広がっていった。ロボットだと24時間無休憩(メンテナンスは必要としても)で働けるわけだから、当然生産性は上がり、投資回収ができれば大きなコストダウンにも繋がる。しかし、ロボットには絶対にできない仕事がある。それは、「ものづくり現場」における「改善」だ。そして、その「改善」の能力は、「ものづくり現場」の叩き上げのベテランであるほど高い。(もちろん、将来、AIが発達すればロボットでも改善はできる可能性はあるが、価格なども考慮すると当面は非現実的)

◆ロボット・ラインを人間に戻すトヨタ

トヨタの生産現場では、数年前からロボットの作業ラインを人間に戻すことをしている。世の中の流れから言えば、全くの逆行に見えるが、「改善」を行えるのは、やはり人間だからだ。

例えば、ロボットが、ある大きさ鉄板をくり貫いて、製品を作っているとする。余った鉄板の縁は捨てられるが、その無駄に捨てられる部分をいかに減らすかについては、ロボットは考えない。そこで一旦、ロボットから人間に置き換えて、加工方法を変更することで、捨てる部分を減らす「改善」を人間が行う。そして、それが完成したら、そのスキルをデータ化して、再度ロボットにインストールするという手法である。

ところが、このロボット作業の「改善」を考案する「巧み」を備えた工場の従業員が少なくなってきた。「巧み」は、工場の現場で、ベテランから若手に教えられ確立されていく。つまり、若手を育てる現場の「親方」が最も重要ということだ。トヨタは2016年から工場での社員を対象に60歳の定年後の再雇用でも同レベルの給与とし、「親方」を極力社内に確保する手段に出ている。

すなわち、改善を続ける「ものづくり現場」においては、「AI・ロボット」と「親方」は、セットで考えなくてはならない。

◆トヨタの役員人事に見る「ものづくりの本質」

昨年末に大幅な刷新が発表されたトヨタの役員人事では、この辺りが読み取れる。副社長に昇格した友山茂樹氏はAIを理解しており、また、米国のAIの研究所所「トヨタ・リサーチ・インスティチュート」所長のギル・プラット氏を「フェロー」役員として迎い入れ、副社長並の位置づけとしている。一方、工場を統括する副社長の河合満氏は、トヨタ技能者養成所(現・トヨタ工業学園)出身の現場の叩き上げ、まさに「親方」の「親方」と言える人だ。先ほど説明した「ロボットから一旦人間に置き換える改善」というのも河合氏の発案によるものらしい。豊田章男社長は、こうした「ものづくりの本質」と未来を読んで、役員人事を行っているのだと思う。

AIが騒がれる現在、日本は「ものづくりの本質」を考え、世界と競争をしなければいけない。AIやロボットは、お金さえあれば導入できる。おそらく、中国などもこれからロボット、AI化を日本以上のスピードで進めていくだろう。日本は、「日本のものづくりの強みは何か、持っているアセットは何か」を良く理解し、AIと「親方」の両面作戦でいくことこそ日本流の戦い方であろう。

<土井正己 プロフィール>
グローバル・コミュニケーションを専門とする国際コンサルティング・ファームである「クレアブ」代表取締役社長。山形大学特任教授。2013年末まで、トヨタ自動車に31年間勤務。主に広報分野、グローバル・マーケティング(宣伝)分野で活躍。2000年から2004年までチェコのプラハに駐在。帰国後、グローバル・コミュニケーション室長、広報部担当部長を歴任。2014年より、「クレアブ」で、官公庁や企業のコンサルタント業務に従事。

《土井 正己》

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