開発者が語る4代目 スペースギア=セミキャブ+フラットフロアを採用…三菱 デリカ 50周年

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三菱デリカ・スペースギア
三菱デリカ・スペースギア 全 8 枚 拡大写真

三菱『デリカ』が今年で50周年を迎える。初代から3代目までワンボックスタイプのフルキャブボディから4代目スペースギアではセミキャブボディが採用された。そこで、当時の開発者にその理由や当時のエピソードなどの話を聞いた。

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◇関係担当者まで意思統一

「ちょうどバブル時期で所得の向上や週休二日制、余暇の生活重視、アウトドアブームなど、取り巻く環境がRV車に見合った時期で、市場も一段と拡大していた。三菱は『パジェロ』を発売し、市場からはRVの三菱といわれるようになった時期でもある」とデリカスペースギアのデビュー時を振り返るのは、当時商品企画を担当していた今崎剛氏だ。

スペースギアが成功した理由について今崎氏は、「開発者をはじめ関係部門の担当者まで意思統一を重視したことだ」と一言。そのために、「ワンボックスの取り巻く環境を伝えるべくデータブックを作り、それを関係部門に配布。市場が変化するごとにそのデータを見てもらうように取りまとめた」という。

ユーザーニーズやユーザーの生活実態については、量的調査とともに、現場主義を徹底し進めた。「一万人規模のサマーキャンプや三菱四駆フェスティバル、デリカオーナーズクラブや社内のデリカやパジェロユーザーに直接クルマを見てもらい評価してもらった」。そうした定性的な意見や要望を商品作りに活かしていったのだ。

◇4代目こそ実現したかったセミキャブ、フラットフロア

スペースギアの先代となる3代目スターワゴンでは、ユーザーから要望が強かった、ウォークスルーのためのフラットフロアや安全性向上のためセミキャブタイプが検討されていた。しかし、スペース効率の観点からフルキャブのまま登場。そして、4代目開発中に、トヨタ『エスティマルシーダ・エミーナ』、日産『セレナ』、『ラルゴ』がデビューした。

そこで、三菱は商品の差別化という観点で、「フロントエンジンレイアウトによる安全性の確保とともに、パジェロとの共用コンポーネントによるエンジンやパワートレイン関係の強化。そして、新スペースユーティリティとして、ユーザーニーズが非常に高かったフラットフロアを実現した」と話す。

特にこのフラットフロアは、「ゆとりあるワンルームマンションの感覚。自由にレイアウト出来、自由に自分の機能に合わせてスペースを有効に使えるようにした」と述べる。その結果、「各部門からのアイディアが活かされ、特に用品開発に至ってはこの車種だけで120品目の開発が行われた」という。

◇フロアシフトで四駆ユーザーの意見を反映

四駆へのこだわりのひとつにシフト形状があった。スペースギアのセールスポイントのひとつにウォークスルーがある。「開発時、スペースギアは全車種コラムシフトにすることで、ウォークスルーを活かすことを狙いとした」と振り返る。しかし調査結果を見ると、「ドライバーと家族とのコミュニケーションは当たり前だが、使用時の多くが長距離、雪道、オフロードを走るというようなシチュエーションが挙げられた。そういったときにドライバーであるお父さんは、自分のドライブテクニックを活かして楽しみたいという要望が非常に強かった」と述べる。

その際には、「フロアシフトがどうしても欲しい、ドライブテクニックを味わうにはコラムシフトでは難しいという意見が非常に多かった」という結果を踏まえ、「幹部らの、ウォークスルーだからコラムシフトにするということに対して、ユーザーニーズは逆だ、四駆ユーザーにはフロアシフトが必要だと主張し、スーパーセレクト4WDのトランスファーセレクトレバーをフロアに配した。これも四駆へのこだわりのひとつだ」と語った。

◇スターワゴンとの併売とネーミング

スターワゴンとスペースギアの併売について今崎氏は、「パジェロとスターワゴン、スペースギアのユーザー層の一部がクロスすることが予想されたが、ユーザー分析をすると、パジェロとスターワゴンは非常に近い位置にあるが、スペースギアは少し離れおり、一部だけクロスするのでユーザーの棲み分けは可能と考えた」と話す。また商品特徴が、「外観でもはっきりスペースギアとスターワゴンは違う。

さらに、バブルによりRV市場のボリュームが拡大。それに伴いスターワゴンの販売台数が年々拡大していることから、スペースギアを後継車としてそのユーザーを吸収出来るか難しいという判断から併売となった」と経緯を説明。

その結果、“デリカ”というブランドネームの下にペットネームとしてスペースギアとスターワゴンが出来上がった。しかし、新たなブランドは考えられなかったのか。今崎氏は、「カタログなどでは“スペースギア”、“スターワゴン”をメインに表記し、デリカが小さい文字での表記だった。やはりワンボックスシリーズはデリカがメイン。デリカというブランドは残したかった」と語る。

そこでスペースギアとスターワゴンという名称をメインに打ち出したのだ。また、「スターワゴンは商品的にデビューからかなり時間が経っており、RV市場もバブル時期を越えて1994から95年に縮小し始め、スターワゴンの四駆の台数が縮少していった」と、いずれ消滅することを見越してのネーミングだったのだ。

《内田俊一》

内田俊一

内田俊一(うちだしゅんいち) 日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員 1966年生まれ。自動車関連のマーケティングリサーチ会社に18年間在籍し、先行開発、ユーザー調査に携わる。その後独立し、これまでの経験を活かしデザイン、マーケティング等の視点を中心に執筆。また、クラシックカーの分野も得意としている。保有車は車検切れのルノー25バカラとルノー10。

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