ESPによるブレーキLSDは機械式LSDを超えるか?…スズキ ジムニー 新型

自動車 ニューモデル 新型車
新型ジムニーのブレーキLSDコントロールシステム
新型ジムニーのブレーキLSDコントロールシステム 全 10 枚 拡大写真

4WDの場合、一般的にディファレンシャルは3つになる。前後輪の回転差を吸収するセンターデフ、それぞれの左右の回転差を吸収するフロントデフ、リアデフだ。そして、悪路走破を考えると、差動機能を制限するなんらかのしくみ(いわゆるLSD)が必要だ。

これがないと、ぬかるみなどでタイヤが空転すると、反対側のタイヤにトルクが伝わらなくなり、脱出ができない。そのため、多くのSUV、4WD車(フルタイム4WD車)は、機械式LSDあるいはアクティブ制御されたディファレンシャルが必須となる。

新型スズキ『ジムニー』は、副変速機によって2WD(FR)と4WDを切り替えるパートタイム4WDだ。そのためセンターデフは必要ないが、前後のディファレンシャルには差動を制限する機構が必要だ。しかし、新型ジムニーには、フロントデフもリアデフもラインオフでのLSDの設定はない。その代わり、ESPによるトラクションコントロールと、4輪のブレーキを独立して制御できる「ブレーキLSDトラクションコントロール」機能が備わっている。

つまり、空転したタイヤにブレーキをかけることで、反対側のタイヤにもトラクションがかかるようにできる。電子制御のため、4輪がどのような状態でも、設置タイヤに最適なトラクションを発生させることができる。実はこれは(機械式)LSDより悪路走行において有効な方法といえる。

まず機械式LSDの場合、内部のシムプレートの枚数などで発生させるトルクを調整する。リニアなトルク制御はしにくい(ほぼできない)機構だ。通常のディファレンシャルで、空転タイヤをブレーキで制御すれば、脱出に最適なトルク制御が可能だ。この制御は副変速機を4Lにすれば、ESPがすべて行ってくれる。

機械式LSDのダイレクトな反応や、プレッシャーリングによるイニシャルトルクは、確かに空転と止めているイメージが強いが、それはあくまで両輪(または4輪)が接地している場合のフィーリングだ。ぬかるみなどで本当に空転すると、LSDはあまり役に立たない。LSDはもともとレーシングカーや競技車両のチューニングパーツで、オフロード走行のためのパーツではない。オフロード、極悪路では、差動制限ではなくロックさせる(つまりすべて直結)機構のほうが効果的だ。

また、LSDはオイル交換、シム交換、トルク調整など定期的なオーバーホールやメンテナンスが大変だ。電子制御方式だとしても機構は複雑になりパーツ点数も増える。その点、ジムニーの方式は、LSDは必要ない。ブレーキの制御系は必要だが、もともとある油圧ラインもブレーキ機構(ジムニーはフロントディスク、リアドラム)に、アクチュエータを4輪別々に用意するだけだ。

オフロードや業務を含む悪路走行において、シンプルな構造、低いメンテナンスコストは、馬力やトルク以上のパフォーマンスを発揮する。なんらかのLSD機構と独立ブレーキ制御を組み合わせている車種も存在するが、シンプルさやコスト面ではジムニー方式のほうが有利だろう。

《中尾真二》

【注目の記事】[PR]

ピックアップ

教えて!はじめてEV

アクセスランキング

  1. 「やっと日本仕様が見れるのか」新世代ワーゲンバス『ID. Buzz』ついに上陸! 気になるのはサイズ?価格?
  2. 最後のフォードエンジン搭載ケータハム、「セブン 310アンコール」発表
  3. 船上で水素を製造できる「エナジー・オブザーバー」が9年間の航海へ
  4. 高機能ヘルメットスタンド、梅雨・湿気から解放する乾燥ファン搭載でMakuake登場
  5. 「三菱っぽくないけどカッコいい」ルノーの兄弟車となる『エクリプス クロス』次期型デザインに反響
ランキングをもっと見る

ブックマークランキング

  1. 米国EV市場の課題と消費者意識、充電インフラが最大の懸念…J.D.パワー調査
  2. 低速の自動運転遠隔サポートシステム、日本主導で国際規格が世界初制定
  3. 「やっと日本仕様が見れるのか」新世代ワーゲンバス『ID. Buzz』ついに上陸! 気になるのはサイズ?価格?
  4. BYD、認定中古車にも「10年30万km」バッテリーSoH保証適用
  5. 「あれはなんだ?」BYDが“軽EV”を作る気になった会長の一言
ランキングをもっと見る