【スバル フォレスター 新型試乗】すべてが紳士的、だがナンパなSUVとは一味違う…木下隆之

試乗記 国産車
スバル フォレスター 新型
スバル フォレスター 新型 全 26 枚 拡大写真

今年のSUBARU(スバル)の一推しは『フォレスター』に違いない。フォレスターとしては第5世代となり、世界各地で販売される最量販車なのだからそれも道理。気合の入れ方が半端ない。

「スバルグローバルプラットフォーム」と呼ばれる新設計の骨格がベースに与えられている。これにより、クラストップレベルの衝突安全性と危険回避性能を誇るという。もちろんドライバーが気持ちいいと思うハンドリングにも貢献するはずだし、乗り心地も快適だという。期待したいモデルなのだ。

搭載されるエンジンは2種類。水平対抗4気筒2.5リットルNAと水平対抗4気筒2.0リッター+モーターアシストの2タイプである。ハイブリッドシステムは「e-BOXER」と命名され、バッテリーはニッケル水素からリチウムイオンに変更。モーターパワーの10kWで加勢する。
スバル フォレスター 新型
現車を前にしての第一印象は、アクティブユースをことさら意識したようなキャラクターになったと思えることだ。

最近アーバンユースを強調したモデルが多く、優しい雰囲気に慣れてしまったこともあり、相対的に力強さが増したように思った。基本的にフォルムは踏襲されているし、フロントマスクも大胆な意匠チェンジはない。詳細に見れば、フロントバンパーが攻撃的デザインになり、テールエンドも新鮮な趣になったのだが、最近流行りのクーペスタイルにするわけではなく、伝統的なSUVスタイルを踏襲している点が好感触なのだ。

2タイプのエンジンをドライブした印象からすれば、すべてが紳士的に正統派にまとめられている。

2.5リッターユニットは直噴化され、環境に優れているばかりか、動力性能に不満はない。超低回転域からトルクが立ち上がるように設定されているのが印象的だ。高回転まで回すことよりも、市街地での乗りやすさを優先しているかのようだった。
スバル フォレスター 新型
ハイブリッド仕様「e-BOXER」も超低回転域からのトルクが心地いい。モーターパワーは10kWと小さいから、実質的にモーター走行時間はない。赤信号待ちからブレーキ踏力を緩めた瞬間などに、スルスルとモーターで動き出すこともあるし、クルージング中に瞬間的なモーター走行も確認できたが、ハイブリッドとはいえ、モーター走行には重点を置いておらず、あくまでエンジンパワーが主体だ。そこにささやかに電気モーターアシストを加えるだけという思想で開発されているのだ。

とはいうものの、このささやかなモーターアシストが効いている。特に、アクセルを踏み込んだ瞬間に、つまり、レスポンス遅れすることなく加速に移行したい瞬間に補助してくれることで、格段にストレス軽減される。モーターパワーはミニマムだけど、逆にいえば自然な細工である。これ見よがしなハイブリッド感が薄い点も個性だと言えよう。

ちなみに、フォレスターは全グレードがAWDであり、必要とあらば内輪にブレーキをかけ、4輪に最適な駆動力を与えるようにも制御する。「アクティブトルクベクタリング」は、オンロードでのハンドリングにも影響するし、スリッピーな路面での安全性をも担保するのだ。

さらには悪路走破性にも手抜かりはない。「Xモード」は滑りやすい雪道や泥道で最適に制御をするばかりか、タイヤが埋まってしまうようなスタック脱出モードも備えている。ダイヤルひとつでアジャスト可能なそれを装備するほどオフロードにもこだわっているのである。

ちなみに、ルーフへの荷物の積み下ろしがしやすいように、リアドアを開くとちょうどいい足乗せステップになる。そんな細工をするように、キャンプやダート走行といったアクティブな使用に心憎い配慮がされているのだ。

試乗では、スタック覚悟の泥濘地にもトライしたのだが、何の不安もなく走破してしまった。急激な上り坂すらも躊躇することなく駆け上がったし、下りはヒルディセントコントロールが助けてくれた。

ナンパなSUVが多い中、ハードな走りをも許容するフォレスターが新鮮に見えた。

■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア居住性:★★★
パワーソース:★★★
フットワーク:★★★
おすすめ度:★★★

木下隆之|モータージャーナリスト
プロレーシングドライバーにして、大のクルマ好き。全日本GT選手権を始め、海外のレースでも大活躍。一方でカー・オブ・ザ・イヤー選考委員歴は長い。『ジェイズな奴ら』を上梓するなど、作家の肩書きも。

《木下隆之》

木下隆之

学生時代からモータースポーツをはじめ、出版社・編集部勤務を経て独立。クルマ好きの感動、思いを読者に伝えようとする。短編小説『ジェイズな奴ら』も上梓。日本・カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。「心躍るモデルに高得点を与えるつもり」。海外レース経験も豊富で、ライフワークとしているニュルブルクリンク24時間レースにおいては、日本人最高位(総合5位)と最多出場記録を更新中。

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