フォーミュラEの第4シーズン(2017/2018シーズン)が現地14~15日、ニューヨーク市街地コースでの2連戦をもって終了。ジャン-エリック・ベルニュ(所属チーム:テチーター)が初のドライバーズチャンピオンに輝き、チーム部門タイトルはアウディが初めて獲得している。
昨年12月に始まったフォーミュラEの第4シーズン、ドライバーズチャンピオン争いはベルニュ対サム・バード(DSヴァージン)に絞られ、ベルニュの23点リードで最終ニューヨーク連戦、第11&12戦を迎えた(1レースあたりの個人最大得点は29)。そして第11戦の予選では、ベルニュをまさかの事態が襲う。
彼とアンドレ・ロッテラー、2台のテチーター勢は予選タイムをキャンセルされてしまうのだ。これは予選中、フルパワー(200kW)にスイッチするのが早過ぎた、という“フォーミュラEらしい”ペナルティで、ベルニュは18番グリッドからの決勝出走ということに。
ところが、ベルニュを追いかけるポイントランク2位のバードも予選14位と振るわず。チャンピオンを争う両雄が下位グリッドからのスタートという、波乱含みの状況で第11戦は決勝レースに突入する(フォーミュラEはワンデー開催の原則で、今回は14日が第11戦の予選&決勝、15日が第12戦の予選&決勝)。
終盤にセーフティカー導入となるアクシデントも発生した第11戦決勝は、アウディ(AUDI SPORT ABT SCHAEFFLER)の1-2フィニッシュで決着。勝ったのは前季王者ルーカス・ディ・グラッシで、予選11位から挽回しての勝利だった。ダニエル・アプトが2位。
そして勝者ディ・グラッシ以上の猛追劇を演じたのがベルニュである。王座争いのライバルであるバードもコース上で直接抜くなどして、ベルニュは都合13台抜きの5位でチェッカーを受ける。バードが9位に終わり、両者の得点差が31に開いたため、最終戦を残してベルニュの17/18シーズンドライバーズチャンピオン獲得が決まった。
ジャン-エリック・ベルニュはフランス出身の28歳。10年の英国F3王者で、12~14年にはF1にも参戦していた選手である。近年はフォーミュラEを活動の主舞台にしており、初の国際メジャーシリーズタイトル獲得を達成した。「信じられないよ。今日はとてもクレイジーなレースだった。ゴールした時点ではタイトルが決まるかどうかの状況を分かっていなかったけど、決まったことを知った瞬間には言葉がなかったよ」とベルニュは喜ぶ。今季はシーズン中盤に3勝を挙げて王座争いの主導権を確立、そのまま逃げ切る格好で初戴冠を果たしている。
翌日、最終第12戦の焦点はチーム部門タイトル争いとなった。こちらはテチーターとアウディの戦いである。アウディ1-2フィニッシュの第11戦を受けて、ランク首位テチーターと2位アウディの差は急激に詰まり、最終戦を前に5ポイントという僅差の攻防だ。
ウエット路面での戦いとなった予選、テチーター勢はロッテラー2位&ベルニュ3位、アウディ勢がアプト4位&ディ・グラッシ5位となり、まずはテチーターが先行した。ところがドライでの決勝レースでは、ロッテラーがジャンプスタートのペナルティを受けて大きく後退という厳しい事態がテチーターに発生する。ベルニュが1周目にトップ奪取に成功しているものの、ディ・グラッシとアプトが揃って上位を走るアウディの方がタイトル争いの面ではやや有利な状況へと転じた。
ベルニュは自身にとって有終の美となるシーズン4勝目で最終戦を終える。僚友ロッテラーも得点圏内の9位までカムバックして、テチーターの最終戦得点は25+2で27点。一方のアウディはディ・グラッシ2位、アプト3位でレースを終え、18+15+1の34点を獲得(10位以内のファステストラップに1点=アプト)。この結果、アウディがテチーターとの5点差をひっくり返し、最終的に2点差でチーム部門王座の初戴冠を果たした。チーム部門は過去3シーズンいずれもルノー(RENAULT E.DAMS)が王座を獲得しており、テチーターがルノーのパワートレインで走るチームであることを考えると、アウディがルノーの4連覇を阻止したともいえる最終結果となっている。
ニューヨーク連戦で2戦ともポールポジションを獲得したのはルノーのセバスチャン・ブエミだったが、決勝では第11戦が3位、第12戦が4位だった。また、第12戦でバードが決勝10位に終わったため、最終のドライバーズランキングではディ・グラッシがバードを1点逆転、シリーズ2位となっている。シリーズ3~5位はバード、ブエミ、アプトの順。
フォーミュラEの第5シーズン(18/19シーズン)は今年12月にサウジアラビアで開幕予定。ニューマシンへの切りかえや日産の参戦開始など、これまで以上に話題豊富なシーズンとなる。