OTAを急ぐ理由は3つある…矢野経済研究所 森健一郎 主席研究員【インタビュー】

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矢野経済研究所 森健一郎 主席研究員
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世界の自動車産業が「CASE」(Connected-Autonomous-Shared-Electric)に向かって加速している。2030年の時点で、はたして自動車産業はどのように変化しているのか。矢野経済研究所で自動車業界とIT業界をカバーする森健一郎主席研究員に聞いた。


CASEに向けて加速する自動車産業はどのように変化していくのか。5人のリサーチャーがその知見を語ります。詳しくはこちら。

CASEに対する危機感


---:世界的に自動車産業が変革期に差し掛かるなかで、日本国内の各社も危機感を持っています。

森氏:GAFA(Google/Apple/Facebook/Amazon)と言われるITのビッグプレーヤーが自動車産業にアプローチしている状況で、日本でも、自動車メーカーはもちろん、産業ピラミッドを支えてきた部品メーカーが、CASEと言われるムーブメントをどのように生き残っていくかということを一番不安に思っているでしょう。

現時点では受注も好調ですが、だんだんと市場が変化に飲み込まれて行くなかで、自分たちは身動きが取れないうちに、いつのまにかぬるま湯のなかで茹だってしまう、という漠然とした危機感を感じながらやっています。

---:そのような動きに対して、どのような準備が必要なのでしょうか。

森氏:部品メーカーがそれぞれの立場で、CASEという動きの中で生きていく方向性を探っていければ、日本の製造業は元気になると考えます。

日本の部品メーカーはこれまでのように、系列の上から仕様書が届くのを待っていればいい、という時代ではなくなってきています。各々の自社の強さを表に出して、世界に向けてアピールしていかなければ生き残れません。部品メーカーの元気がなくなってしまうと、日本の産業自体が衰えてしまいます。

コネクテッドが当面の勝負どころ


---:CASEのなかでも特に「コネクテッド」が当面のポイントになるとのことですが、そう考える理由をお聞かせください。

森氏:日本のメーカーではトヨタと日産が、2020年から2022年をめどに自社の車両に通信モジュールを全車搭載するということを掲げています。そういう状況もあり、CASEのなかでもコネクテッドカーというテーマが規模的にも、時間軸としても一番最初に動き出すのではないかと考えています。

---:トヨタが先日発表した新型『クラウン』『カローラスポーツ』もコネクテッドを前面に打ち出して訴求していますね。

森氏:そうですね。トヨタは 「T-Connect」 というブランドでコネクテッドサービスを展開しており、自社や関連企業が作ったアプリも展開しています。さらに今回は「LINE」がパートナーとしてコネクテッドサービスを展開しています。 そういう意味ではコネクテッドはもう動き出していると言ってもいいと思います

CASEに向けて加速する自動車産業はどのように変化していくのか。5人のリサーチャーがその知見を語ります。詳しくはこちら。

コネクテッドはメーカーにとって必須要件


---:自動車メーカーはOTA(On The Air update=無線アップデート機能)の導入を急いでいるという話もあります。

森氏:はい。OTAは自動車メーカーにとっては大きな動機のひとつです。OTA導入を急ぐ目的は大きく3つあります。まず一点目は、車載ソフトウェアのオンラインアップデートです。テスラがADAS(=運転支援機能)のOTAを実施したように、なんらかのバージョンアップをしたり、あるいは新たな脅威に対するセキュリティ面のアップデートも想定されます。

二点目は、ソフトウェアによる仕向地対応という目的です。世界戦略車は同一規格で生産しますが、仕向地ごとに法的な規制が違ったり、消費者の趣味嗜好が違います。それをソフトウェアによって対応するということです。

三点目は、これが最も必要性が高いのですが、リコール対策です。例えばドイツのディーゼル問題のように、リコールで会社が傾きかねないほどの費用がかかってしまうことがあります。そうでなくても今後、ソフトウェア起因のリコールがどんどん増えていくと考えられます。

ユーザーがディーラーに持って行くという方法は手間がかかりますし、日本国内では可能でも、世界的に見れば日本のディーラーほど技術レベルが高くない地域がたくさんあります。そういう意味でメーカーから直接ソフトウェアを遠隔でアップデートするということが有用な手段だと考えられているわけです。また、ディーラーがソフトウェアに詳しい技術者を抱えることが難しくなってきているという問題もあります。

ユーザーのベネフィットとは


---:なるほど。いっぽうでコネクテッドカーのユーザー側のベネフィットとは何でしょうか。

森氏:テスラの事例のように、オンラインで機能のバージョンアップができるということはベネフィットのひとつでしょう。

またバージョンアップだけでなく、地域によっては車両の遠隔診断のような機能が有効な国もあります。日本のように修理工場にアクセスしやすい環境であればいいのですが、例えば砂漠の真ん中を走る車にとって、故障は命取りです。そういったエリアでは、遠隔診断が受けられることが、安心安全という意味で大きな価値があるはずです。

CASEに向けて加速する自動車産業はどのように変化していくのか。5人のリサーチャーがその知見を語ります。詳しくはこちら。

《佐藤耕一》

日本自動車ジャーナリスト協会会員 佐藤耕一

自動車メディアの副編集長として活動したのち、IT企業にて自動車メーカー・サプライヤー向けのビジネス開発を経験し、のち独立。EV・電動車やCASE領域を中心に活動中。日本自動車ジャーナリスト協会会員

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