新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は8月8日、優れたAIベンチャー企業の研究テーマ6件を採択し、支援していくと発表した。2年をメドに各社が研究開発を行うAIの社会実装を進める。
NEDOは政府の「人工知能技術戦略」に基づき、AIの社会実装を促進し、新たな需要の創出や既存分野との融合による産業競争力の強化を目指している。特に「生産性」「健康、医療・介護」「空間の移動」の3分野に重点を置いている。
今回のAIベンチャー企業支援もその一環で、全国30件の応募の中から、コンテスト方式で研究テーマを選定した。「書面による1次審査と、デモンストレーションによるコンテスト方式の2次審査を行い、2年間である程度成果が出てくるものを選んだ」とロボット・AI部プロジェクトマネージャーの渡邊恒文氏。
最優秀賞には生産性からDeepXの「食品を定量でピックアップするAIアルゴリズムの研究開発」と、健康、医療・介護からPuRECと名古屋大学の「AI高純度間葉系幹細胞の品質検査高度化の調査研究」の2件が選ばれた。
DeepXは東京大学発のベンチャーで、ディープラーニングによる画像認識や強化学習を活用し、バットに盛られたパスタなど柔らかい大量の食品の山から「指定量」を産業用ロボットでピッキングし、弁当などの容器に移せるようにする。こういった作業はこれまで工場で人が行っていたが、それを機械化・自動化することによって、人手不足の解消が図れ、人件費を大幅に削減できるわけだ。
一方、PuRECは島根大学発のベンチャーで、画像解析と先端AI技術を融合することで、全く新しい実用的な再生医療用細胞の品質検査システムを開発し、再生医療用細胞製造現場における安定性と効率の向上、コストダウンを実現するというもの。これによって、再生医療をもっと身近なものにして、健康な長寿社会の実現に貢献していく。
そのほか、審査員特別賞として、MICINの「機械学習を用いた認知機能リスク因子の探索」(健康、医療・介護)、IDECファクトリーソリューションズとRapyuta Roboticsの「AI、クラウド、センサ、画像処理を活用したミドルウェア汎用ロボットコントローラの調査研究」(生産性)、MI-6の「マテリアルズ・インフォマティクスによる材料探索に関する調査研究」(生産性)、ロックガレッジの「AI/クラウドソーシング・ハイブリッド型広域人命捜索システム」(生産性)の4件が選ばれた。
それぞれ2000万円~4500万円の委託費をもらい、2年間で製品化するなどの成果を出す。空間の移動については、今回第1次審査で通過せず、該当なしという結果に終わった。
「今回は昨年度に続いて2回目になるが、昨年の受賞企業の中にはすでに成果が出ているところもあり、計画以上の効果を上げている」と渡邊氏は話し、金銭面の支援のほかに、イベントやプロモーションビデオなどさまざまなサポートを行っていくそうだ。