【トヨタ スープラ プロトタイプ 試乗】胸を張って「日本の、トヨタの、スポーツカー」と言えるか…諸星陽一

歴代モデルと異なる雰囲気の正体は

欧州車に迫るスポーツ性、だが

「どうだ!日本ってすごいだろ」と胸を張って言えるか

トヨタ スープラ プロトタイプ
トヨタ スープラ プロトタイプ全 8 枚

歴代モデルと異なる雰囲気の正体は

2019年の自動車業界のなかで大きな話題になること間違いなしな1台がトヨタ『スープラ』。そのプロトタイプに袖ヶ浦フォレストレースウェイで試乗した。

かつてスープラは日本では『セリカ』の上位車種である『セリカXX』と呼ばれていた。初代デビューは1977年で、この時代から北米に輸出されていた。日本でスープラと呼ばれるモデルが登場するのは1986年の3代目からで、4代目終了の2002年でいったんその歴史を閉じる。

試乗車は何度もメディアに登場している赤白黒の偽装が施されたモデル。筆者は1977年の初代から4代目まで、歴代に乗ったことがあるが、新型はそれとは異なる雰囲気を持っていた。その第一の要因は、歴代がリヤシートを備えるモデルであったのに対し、新型は完全な2シーターなのだ。初代から4代目まではハッチバックやリフトバックといったネーミングがピッタリとくるが、新型はリヤセクションが短いデザインでクーペと呼ぶのがしっくりくる。

欧州車に迫るスポーツ性、だが

トヨタ スープラ プロトタイプトヨタ スープラ プロトタイプ
歴代モデルに比べてコンパクトなドアを開けて室内に入る。試乗車は外装だけでなく、内装も黒い布でカバーされている。もちろん必要な操作系は触れられるようになっているが、雰囲気は極力伝わらない努力が施されていた。

エンジンの吹け上がりは気持ちいい。トルクは低速からしっかりと出ていて、グングン前に進むことができる。シャシーの性能も高くハンドリングは軽快でコーナリングは安定していて懐が深い。しっかりとサスペンションが動き、タイヤが路面を追従していく。無理矢理タイヤを押しつけるタイプではないので、乗り心地も確保されている。

欧州車に迫るスポーツ性を持っているのは間違いない。乗ってすぐの時点ではその性能の高さに感心していたが、時間が経つに従っていろいろな思いが膨らんでくる。果たしてこのクルマは日本車なのだろうか?トヨタ車なのだろうか?という気持ちだ。新型スープラはBMW『Z4』と多くのコンポーネンツを共有する。どこまでがZ4、どこまでがBMWで、どこからがスープラ、どこからがトヨタなのだろうか? 

「どうだ!日本ってすごいだろ」と胸を張って言えるか

トヨタ スープラ プロトタイプトヨタ スープラ プロトタイプ
試乗車は右ハンドルであったがウインカーレバーは左にあった。開発責任者の多田哲哉氏に「市販車もこのままなのか?」とこのことを聞くと「このままでいきます。そこに使うお金があれば、別に使う」という答えだった。スポーツカー開発らしい答えといえば答えなのだが、それが果たしてトヨタのクルマになるのか?には疑問が残る。

ATのセレクトレバーはBMW式、走行モードの切り替えもBMWのもの。タイヤにはBMWの認証タイヤであることを示す「☆」印が刻印されていた。

開発にはトヨタの開発陣も初期から関わり、クルマを作り上げてきたという。実際まだ私はBMW Z4には乗っていないので、明確に比較することはできないが、スープラのプロトタイプからトヨタらしさが伝わってこないのである。この先、市販モデルに乗る機会、BMW Z4に乗る機会も出てくる。そうしたときに、どこまでトヨタらしさを感じさせてもらえるかに期待したい。

私が出会いたいのは、日本の、トヨタの、スポーツカーだ。そして世界中の人に「どうだ!日本ってすごいだろ」「トヨタってすごいだろ」と胸を張って言いたいのである。

■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
オススメ度:価格未発表段階なのでオススメ度は未採点とする

諸星陽一|モータージャーナリスト
自動車雑誌の編集部員を経て、23歳でフリーランスのジャーナリストとなる。20歳代後半からは、富士フレッシュマンレースなどに7年間参戦。サーキットでは写真撮影も行う、フォトジャーナリストとして活動中。趣味は料理。

《諸星陽一》

諸星陽一

自動車雑誌の編集部員を経て、23歳でフリーランスのジャーナリストとなる。20歳代後半からは、富士フレッシュマンレースなどに7年間参戦。サーキットでは写真撮影も行う、フォトジャーナリストとして活動中。趣味は料理。

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