MaaS時代の隠れた主役:駐車場を再定義する…IHI運搬機械 村井厚則氏[インタビュー]

MaaS時代の隠れた主役:駐車場を再定義する…IHI運搬機械 村井厚則氏[インタビュー]
MaaS時代の隠れた主役:駐車場を再定義する…IHI運搬機械 村井厚則氏[インタビュー]全 1 枚

人の移動をトータルで考えるMaaSにおいて、移動手段が重要な機能として議論の中心となりがちだ。しかし、物理的な移動のために必要な機材、機器、車両の設置・保管場所も欠かせない存在だ。MaaSにおいて、駐車場問題はじつは隠れた主役といっても過言ではない。

IHI運搬機械 パーキングシステム事業部 プロジェクト推進統括部村井厚則部長に同社が考える次世代駐車場について聞いた。

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--- まず、IHI運搬機械について簡単に教えていただけますか?

村井氏(以下同):IHIグループのひとつとして、機械式駐車場の開発、販売をメインに行っている会社です。立体駐車場、パーキングタワー、パレット式の地下駐車場など、主に大型の設備・施設を手掛けています。小さいものではマンションなどの多段式パーキングも扱っています。オーナーが自分で運転して止める自走式の駐車場も開発していますが、いわゆるコインパークなど平面式の駐車場は扱っていません。平面式はコスト重視の市場なので、弊社の大型機械の技術が生かしきれません。差別化が難しい市場なのです。

--- 駐車場の会社がどうしてMaaSに取り組むようになったのでしょうか。

MaaSがこれまでの自動車の役割やビジネスを変えていく中で、駐車場の業界もその影響は避けられません。駐車場の稼働率の問題やマンションでも利用者の減少から、駐車場設備の維持ができないといった問題が顕在化しています。IHI運搬機械は、重厚長大な機械式駐車場について、グローバルでも高い技術力、信頼性、安全性に自信を持っていますが、既存のオーナーカーの移動を前提とした駐車場では新しいニーズに対応できていません。MaaSへの対応は必然といえるものです。

--- 確かにシェアリングカーの比率が高まってくると、車両の保管、駐車という意味も変わってきそうです。IHI運搬機械として、具体的にはどんな形でMaaSにかかわっていくのでしょうか。

これまでの駐車場は、建物の利用者や住人のためのインフラでした。MaaS時代では社会インフラとしての駐車場という機能を考えています。自動運転やシェアリングカーの台頭、交通や移動を統合的にとらえるMaaSの中で、例えば、都市外縁部(フリンジ)に大規模な駐車場を整備して、市街地は自動運転、シェアリング、公共交通などモビリティサービスを整備するとい都市設計を提案しています。

このとき、外縁部の駐車場は、単に車を停めるだけでなく、自動運転車両、ドローン、その他市街地交通のハブとしての機能も必要です。じつは、複数のモビリティ手段のハブとして考えたとき、駐車場は多層構造でかつ自走式(機械式ではなく車両が自走できる)駐車場である必要があります。

自走式駐車場ならば、人間と、さまざまな車両が自由に動けます。屋上にドローンポートを設けたり、スペース活用の幅も広がります。緊急時には防災拠点や避難場所にも使えます。このような新しい駐車場の機能を研究するための施設を沼津に作りました。平面、連続傾斜、ステップ式(屋上)の3層タイプで、外壁や路面塗装、構造や工法も複数の方式を取り入れて技術実証も兼ねています。もちろん、ドローンポートも備えています。沼津市とは災害時に弊社の自走式駐車場を活用する協定を結んでいます。また、災害時でなくても、イベント活用なども考えられます。

--- なるほど。まさに駐車場の新しい在り方の提案ですね。これから作る駐車場や都市計画には有効ですが、既存の駐車場設備についてはなにか考えはあるのでしょうか。マンション駐車場の過不足問題、稼働率の問題は、どちらかというと既存の駐車場の問題かと思います。

確かに、そこは弊社の弱点でもありました。大型店舗、施設、自治体などにタワー駐車場や自走式駐車場の提案はできていましたが、平面駐車場やマンション駐車場は、IHIの仕事ではないという意識さえありました。

この点は、IoT機器の開発とベンチャー企業との協業を軸に対応していきます。先日発表した「アクモ」という機器は、駐車場のゲートマシンに設置する小さいボックスです。これが、スマートフォンからの信号により開閉を制御する機能を後付けします。アクモの技術はIHI運搬機械が開発したもので、ゲートマシンのメーカーは選びません。工事は必要ですが、どのような駐車場ゲートにも対応します。

マンションの管理組合や駐車場オーナーは、アクモを取り付ければ、駐車場の予約、シェア、入出庫管理ができるようになります。予約やシェアリングについては、「軒先」さんとパートナーシップを組んで、営業とサービス運営をお願いしています。電動ポールやチェーンと連動させれば、出入り口のゲートだけでなく、駐車スペースごとの管理も可能です。優先車両スポットの管理、予約スポットの管理が無人化できます。

IHI運搬機械は、都市整備を伴うような大掛かりなMaaSには、市街・郊外の交通・物流をさばくモビリティゲートウェイとしての次世代自走式駐車場で対応し、既存の駐車場問題とシェアリングエコノミーにはIoT技術によってサービスプロバイダーとの協業モデルで対応する戦略だ。

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《中尾真二》

テクノロジージャーナリスト・ライター  中尾真二

アスキー(現KADOKAWA)、オライリー・ジャパンの技術書籍の企画・編集を経て独立。現在はWebメディアを中心に取材・執筆活動を展開。インターネットは、商用解放される前の学術ネットワークの時代から利用し、ネットワーク、プログラミング、セキュリティについては企業研修講師もこなす。エレクトロニクス、コンピュータのバックグラウンドを活かし、自動車業界についてもテクノロジーを中心に取材活動を行う。

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