1万台を超えて景色が変わった…タイムズカープラス事業部長 齋藤章氏[インタビュー]

タイムズ24 タイムズカープラス事業部長 齋藤章氏
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カーシェアリングで圧倒的なシェアを持ちながら、毎年その数をさらに増やしている「タイムズカープラス」。全国47都道府県に展開し、MaaSを実現するうえで欠くことのできないキープレイヤーに、現状と課題、これからの展開について聞いた。

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全国47都道府県に2万4000台


---:タイムズカープラスの現在の規模はどのくらいなのでしょうか。

タイムズ24株式会社 タイムズカープラス事業部長 齋藤章氏(以下、齋藤氏):2009年からスタートして今年で11年目になります。現在は約1万1500ステーションに約2万4000台を展開しています。会員数は110万人を超えました。全国47都道府県で展開しています。いま日本全国で約3万台のカーシェアがあると言われているそうですが台数の面では当社が約8割のシェアになることになります。

---:圧倒的なシェアですね。

齋藤氏:最近は特に法人の会員数が非常に伸びています。現在は会員数の約4割が法人の会員です。

---:以前から営業の仕方を変えたのですか?

齋藤氏:特に明確に変えているというわけではありません。台数が1万台超えたあたりから、街中で目に触れる機会が増えたようで、「こんなにたくさんクルマがあるなら」ということで、社用車からカーシェアに切り替えるという流れが出てきたように感じます。

また、これもだいぶ以前から取り組んでいることですが、ご利用者の方から、電車などの公共交通機関と組み合わせてカーシェアを利用したいというご意見を多くいただいていたので、ステーションを駅前などの交通結節点に戦略的に増やしています。

電車とカーシェアを組み合わせると、渋滞で時間をロスすることもないので、時間効率が良いこともありますし、運転に不慣れな新入社員の方が、都内から遠距離ドライブをするより、最寄り駅まで電車で行ってから郊外を運転する、という使い方を推奨している企業も多いようです。

東海道・山陽新幹線沿線では、既に全駅にステーションを展開しています。こだまの停車駅への展開は、最初は少し迷ったのですが、実際は好評でした。

---:現場では以前から交通機関を横断的に利用するケースが増えてきているんですね。

齋藤氏:そうですね。当社としてもMaaSと言われる前、もう4年ほど前から駅の近くに配備を増やしてきました。今になって電車とカーシェアの利用が脚光を浴びていますが、やっていることは以前と変わっていません。

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スピードを上げていきたい


---:現時点での課題は何ですか?

齋藤氏:成長スピードをまだまだ上げていきたいということです。このようなサービスは車の両輪と同じで、会員数と台数、どちらかを押し上げてもうまくいかない。両輪一緒に増やしていかないと上手くいかないんです。

いまは車両を毎年3000-4000台増やしていますが、借りたいという人がまだまだいらっしゃるので、配備スピードを上げて、借りたい人がきちんと借りられるように早く環境整備をしていかなければなりません。

---:駐車場を持っているという点で、同様の条件のサービス事業者もいますが、御社が圧倒的なシェアとなっている理由は何だと考えていますか。

齋藤氏:(タイムズカープラスを始めた)10年前は、だれも今の状況を予想していなかったのではないでしょうか。一番大きかったと思うのは、そんな誰も想定していなかった10年前にカーシェアリングを(リソースを投入して)しっかりと始めたことだと思います。そのチャレンジに対して、多くの会員様が使ってくださる、という好循環が始まったことではないでしょうか

始めた当初は、時間貸しにしておいたままの方が儲かる、という声もあったと思います。ただ、いま振り返ってみると、最初にしっかりと勝負したからということが大きかったですね。

最初は赤字が続いたんです。その状況で、ほどよくやっていくこともできたのですが、それでもきちんと投資して、こちらがクルマを用意すれば、お客様が付いてきてくれるに違いないということで進めてきました。

台数が1万台を超えたあたりから景色が変わってきました。(タイムズカープラスが)近くにある、と思ってもらえるようになりました。2020年に3万台(*現在2万4000台)という目標を掲げて、これからもどんどん増やしますよ、と宣言していますし、ご期待もしていただいています。それに応えていきたいと思います。
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2万4000台のビッグデータ


---:台数がここまで増えて、エリアも拡大すると、いろいろなビッグデータをお持ちだと思いますが、どのように活用していますか。

齋藤氏:データを売って儲けようということではなく、お客様の移動が便利になるような使い方をしたいですね。例えば、「ドライブチェックイン」というサービスをタイムズカープラスで実施しています。これは、対象施設周辺で一定時間、例えばエンジンを30分以上オフにした、というデータを利用して、優待券をプレゼントするという企画をしています。カーシェアで特定の施設いくとオトクになる、というサービスを実現するために、エンジンの動作とGPSのデータを組み合わせて利用して、お客様にメリットを提供する、というものです。

---:トヨタ自動車とデータの利用について提携していますが(2018年4月3日プレスリリース)、これはどのような取り組みなのでしょうか。

齋藤氏:クルマのデータについては、餅は餅屋ということで、自動車メーカーならではの知見があるだろうということで(取り組みを始めました)。例えば、クルマが壊れそう、ということをデータから知ることができれば、お客様に車両を貸し出す前に、事前に修理したり、我々のサービスをより良くすることができないか、という視点です。車両周りのデータを使って、我々のサービスをどうやって進化させていこうか、という試みですね。

MaaSに向けた取り組み


---:これからのMaaS時代に向けて、どのようなことに取り組んでいきたい、という考えはありますか。

齋藤氏:MaaSの概念として、1つの会社だけではなく、複数の会社が知恵を持ち合って、お客様にとってなくてはならないモビリティを創っていく、ということが一つの解だと思っています。

既にタイムズカープラスの会員様は、電車などの公共交通機関で移動したあとのラストワンマイルをカーシェアで、というご利用をされている方は多いと思います。その会員様がより便利に組み合わせて移動ができるようにご利用していただけるか、ご案内できるか。

出発地から目的地まで一気通貫で予約できるということも便利かもしれませんが、駅で降りて食事や買い物をすることもあるし、駅で待ち合わせした後に移動というケースもあろうかと思います。

または、主要ターミナル駅からどこかに向かう場合、主要ターミナル駅は巨大ですから、改札を降りてカーシェア乗り場まで長い距離を歩くよりも、一つ手前の小さめの駅で降りたほうが、カーシェアの車両がある駐車場まで近くて結果的に早くてラク、いうこともあり得ます。

こういったことも含めて、机上の空論ではなく、持ち前のやってみて進化させる姿勢で、鉄道会社やパートナーといろいろやっていきたいと思っています。

このように、(交通手段の)組み合わせは一つのキーワードですが、それをいかにストレスなくスムーズに繋げられるかがポイントです。例えば交通系ICカードも、以前は地域限定だったのが、いつの間にかどこでも使えるようになって、とても便利になり、もうみんな当たり前のようにそれを使っています。

皆さんの当たり前になって、ようやく世の中変わったな、ということだと思います。そういう使い勝手をイメージしてやっていきたいと思います。

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《佐藤耕一》

日本自動車ジャーナリスト協会会員 佐藤耕一

自動車メディアの副編集長として活動したのち、IT企業にて自動車メーカー・サプライヤー向けのビジネス開発を経験し、のち独立。EV・電動車やCASE領域を中心に活動中。日本自動車ジャーナリスト協会会員

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