クラシックカー文化醸成のため、技術を伝承するヤナセクラシックカーセンター…オートモビルカウンシル2019

ヤナセのスローガンを具現化するクラシックカーセンター

技術の伝承も目的

メーカー認証のボディショップとリビルト工場

由緒あるメルセデスを中心に展示

メルセデスベンツ600リムジーネ(左)とプルマン
メルセデスベンツ600リムジーネ(左)とプルマン全 12 枚

オートモビルカウンシル2019にヤナセが初出展し、昨年横浜にオープンしたヤナセクラシックカーセンターをアピールした。

ヤナセのスローガンを具現化するクラシックカーセンター

ヤナセ代表取締役社長の吉田多孝氏は、「年々クラシックカーに対する関心が日本においても広がっており、我々ヤナセもクラシックカーの普及に関し、主催者の熱意に賛同し今年初めて協賛会社として参加した」と今回の出展理由を語る。

ヤナセは昨年4月にヤナセクラシックカーセンターを横浜の事業所に設立した。展示ブースには、同社が所有しているクラシックカーやレストア済みの車両、から現在まさにレストア中の車両を展示している。

ヤナセは1915年に設立し、その創業以来輸入車の販売並びに整備を中心に事業を展開。社歴は既に100年を超え、輸入車新車販売台数も累計で200万台を超えている。創業以来GM、メルセデスベンツ、フォルクスワーゲン、アウディ、ボルボ、オペル、サーブ、ルノーなど多くの輸入車の輸入元として、各自動車メーカーが輸入販売の子会社を日本に設立するまでの間、それら輸入車を日本の市場に紹介してきた。

ヤナセ代表取締役社長の吉田多孝氏ヤナセ代表取締役社長の吉田多孝氏インポート時代のヤナセのスローガンは、“いいものだけを世界から”とし、「その当時当社が長年インポーターとして輸入販売してきたクルマが、今やクラシックカーとして脚光を浴びる時代になってきている」とコメント。そして、いま自動車業界が変革期の中、「クルマ本来の楽しみ方、走る喜び、胸をときめかす思いや趣味嗜好品としてのクルマが今後どうなるのか。世の中はモノからコトへの時代といわれているが、現在のヤナセのスローガンは“クルマは作らない、クルマのある豊かな人生を作っている”というものだ。ヤナセクラシックカーセンターは、まさに我々のスローガンを具現化する取り組みだと考えている」と述べた。

また、「ヤナセクラシックカーセンターは、クルマのある豊かな人生を楽しむ大人たちへ、憧れのクルマを手にする喜び、愛車を走らせる楽しさを提供したい」とその思いを語る。

技術の伝承も目的

吉田氏は、「現在のクルマはデジタル技術の集積であるが、これに対してクラシックカーはアナログだ。そのアナログの技術を伝承が大事で、いまのヤナセにはまだその技術のノウハウが残っている」と述べ、「いまこの時期にこの専門的な部署を立ち上げて、技術の伝承をしていかないと、我々が長年培ってきた大切なナレッジが後世に伝わらないのではないかという思いもありヤナセクラシックカーセンターを設立した」ともうひとつの理由を話す。

「長い歴史の中で培われた我々のナレッジを、専門組織を使って後継者に継承していくということは、優れた工業製品であるクルマを後世に伝えていくという意味においても、文化的にも意義があることだ」とし、「当社のクラシックカーセンターの活動を通じて、クルマのある豊かな社会を作ると共に、クラシックカーの持つ文化的な意義についても広く日本の市場に発信していきたい」と語った。

メーカー認証のボディショップとリビルト工場

ヤナセクラシックカーセンターは板金塗装を担当するボディショップと、エンジンミッションなどのリビルト工場が併設されている。最近急速に変化している先進的なクルマに対応するために、ボディショップでは最新の設備を投入し、多くの輸入車メーカーの認定ボディショップ取得にも積極的に取り組んでいる。現在メルセデスベンツ、アウディ、BMW、GMなどヤナセがディーラーとして取り扱っているメーカーだけでなく、ジャガーランドローバー、ボルボ、フェラーリ、ランボルギーニ、マクラーレン、テスラなど全部で11ブランドの認定工場だ。

さらに、ヨーロッパにはボディショップの認証制度があり、TUV(テュフ)のボディショップ認証(最高峰のプラチナ認証)を取得。同時にクラシックカーガレージ認証も取得している。

リビルト工場については、メルセデスベンツのミッション、デフ、パワーステアリングギアボックスなどの部品をオーバーホールしている部門だ。ヤナセは1954年から1987年まで、30年以上にわたってヤナセの子会社であったウエスタン自動車がメルセデスベンツの総輸入元で、「メルセデスベンツ認定の“スタンバイユニット制度”を採り入れ、ギアボックスなどのオーバーホール済みのコアを生産し、迅速に対応していた」と説明するのはヤナセオートシステムズ取締役の梶浦誠治氏だ。

現在もメルセデスベンツ日本の純正リビルトミッションとして、生産を継続。「メーカー専用ツールを使って、テストベンチでの計測、高品質なオーバーホールを実現している」という。

ヤナセクラシックカーセンターが提供するサービスは、同社が輸入したクルマについてだけでなく、30年以上前に生産されたオールドタイマーから、20年から30年前に作られたヤングタイマーなどを対象に、欧州車を中心に幅広い年代の旧車を復元修理している。

そこでキーとなるのが、部品の調達だ。梶浦氏は「オリジナルの持つ雰囲気を大切に考えつつ、国内外のクラシックカーに精通した取引先が以前からあるので、これらを通し、あるいは我々ヤナセが長年培ってきた部品の調達力を駆使して、お客様に最善の方法での修理を提供していきたい」と説明した。

由緒あるメルセデスを中心に展示

今回展示してある車両で注目すべきは3台のメルセデスだ。そのうちの1台であるブルーの『600リムジーネ』は、故梁瀬次郎会長の愛用していた車両。常にメンテナンスをして動態保存されている。もう1台の『600プルマン』も当時のヤナセが8台正規輸入したうちの1台で、レストア作業の最終工程まで来ている車両。

メルセデスベンツ 300SEランゲメルセデスベンツ 300SEランゲそして、『300SEラング』について梶浦氏は、「吉田元首相が当時の西ドイツのアデナウアー首相に購入を約束したが、戦後当時は外貨規制があり吉田首相といえども購入できなかった。後に規制が緩和され日本に輸入されたのがこの1号車だ。当時の梁瀬次郎社長が大磯の吉田邸に吉田首相の誕生日に直接届けた。吉田首相は大変喜ばれてアデナウアー首相に”我約束を果たしたり”と電報を送ったそうだ」と説明。

メルセデスベンツ 190SLメルセデスベンツ 190SLそのほか1950年代から1990年代までに販売されたメルセデスベンツの各『SL』や『190E』、ヤナセがフォルクスワーゲンの輸入元となるきっかけとなった、1952年のビートル輸入第1号が展示されている。

最後に梶浦氏は、「ヤナセは100年以上輸入車を日本のマーケットに紹介してきた会社として、クラシックカーを維持管理し、そして後世に優れた工業製品として残していきたい。また残していくことはヤナセの責任であると考えている」。そして、ヤナセクラシックカーセンターは、「現在もヤナセ内に継承されているあらゆるノウハウを活用して、クラシックカーを愛するお客様の要望に応え、日本におけるクラシックカー文化を醸成する役に立てば」とその思いを語った。

《内田俊一》

内田俊一

内田俊一(うちだしゅんいち) 日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員 1966年生まれ。自動車関連のマーケティングリサーチ会社に18年間在籍し、先行開発、ユーザー調査に携わる。その後独立し、これまでの経験を活かしデザイン、マーケティング等の視点を中心に執筆。また、クラシックカーの分野も得意としている。保有車は車検切れのルノー25バカラとルノー10。

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