【MaaS】完成車メーカーのMaaS戦略とは…みずほ銀行産業調査部 安藤裕之氏[インタビュー]

みずほ銀行産業調査部 自動車・機械チームの安藤裕之氏
みずほ銀行産業調査部 自動車・機械チームの安藤裕之氏全 1 枚

社会全体の価値観が所有から利用へと移行していくなかで、消費者とクルマの関係も変化しつつある。そんななか、自動車メーカーやモビリティ企業は何を考え、どのような試みをしているのか。みずほ銀行産業調査部 自動車・機械チームの安藤裕之氏に聞いた。

【MaaSセミナー】完成車メーカのMaaSとオリックス、カルモ、電脳交通の戦略

モビリティサービスの差別化


---:安藤さんのお仕事柄、自動車メーカーと対話することもあると思いますが、自動車メーカーはこんにちの状況をどのように捉えていると思いますか。

安藤氏:消費者サイドの価値観が所有から利用へと変化しつつあり、自動車メーカーにとって従来の量販ビジネスでは対応しきれない部分が出てきているので、それに合わせたサービス化のビジネスモデルを考えなければいけないということだと思います。

サービス化には、シェアリングに限らず、最近少しずつ始まっている自動車のサブスクリプションなども含まれます。これは、クルマを手元に置いて必要な時に使う、というマイカーとしての利用形態はこれまでとあまり変わらないものの、所有から利用への変化ということができます。

---:リースという形態もありますよね。サブスクリプションとはどう違うんでしょうか。

安藤氏:リースだと、たとえば3年間など期間の縛りがありますよね。サブスクリプションだと、もっと柔軟で、毎月の支払いで必要に応じて利用するということになります。

---:期間の縛りがない分、毎月の利用料は高くなりますよね。

安藤氏:そうですね。価格設定がサブスクリプションサービスの難しいところです。これまで完成車メーカーは、コストを積み上げて価格を決める、ということをしてきましたが、サービスの値付けという点では経験がありません。

例えば利用頻度や走行距離、それぞれの使い方で複数のプライスを用意するなど、いろいろなトライアルをして、ノウハウを蓄積していくしかないと思います。いっぽうで、単に価格競争になってしまってもビジネスになりませんので、差別化が重要なテーマになると思います。

---:差別化とは、例えばどのようなことでしょうか。

安藤氏:たとえば、既存のディーラーネットワークをサービス提供のインフラとして活用することがあります。(トヨタと協業している)Grabでは、ドライバーの車のメンテナンスをトヨタディーラーが提供しています。こういった取り組みはメンテナンスの品質を上げてダウンタイムを減らすために有効で、地味ですが少しづつ利幅が変わってくるという点で重要です。

そのほかにも、Grabの事例ですが、決済機能の提供も差別化のひとつです。Grabはライドシェアを通じて大きなユーザー基盤ができました。それを活かして、個人間の決済や日常の買い物の決済に使用するアプリとして広まっています。

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クルマというアセットを誰が持つのか


---:自動車メーカーによって、MaaSに取り組む姿勢はどのような違いがありますか。

安藤氏:おおきく2つに分かれると思います。ロボットタクシーを活用した具体的なビジネスを志向する会社と、都市交通や都市空間といった大きなビジョンを掲げる会社です。

アメリカの状況は象徴的なのですが、GMはロボットタクシーのビジネスにフォーカスしていますし、いっぽうのFordは、都市交通という大きなビジョンに取り組んでいます。

---:ロボットタクシーはWaymoが昨年末にサービスを始めましたね。

安藤氏:ひとつ課題になりそうなのは、誰がアセット(※ここでは車両のこと)を持つかということです。例えばUBERはこれまでもそうでしたが、今後もアセットをみずから抱えたいとは思っていないでしょう。

しかし例えば、ショッピングセンターがお店への集客のためにロボットタクシーの車両を抱えたり、あるいは鉄道会社が駅までの交通手段として車両を抱え得る可能性もあります。もちろん、もともとアセットを抱えるタイプのビジネスをしているリース会社ということもあるでしょう。

いずれにせよ、消費者サイドとしては、誰がアセットを持っているかは関係ないので、消費者にとって利便性の高いモビリティサービスとして、差別化・囲い込みという観点が重要です。

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移動デマンドとモビリティが効率化される


---:ロボットタクシーもありますが、その前に自動運転シャトルもありますね。

安藤氏:そうですね。人やモノを運ぶための手段としての効率を考えると、ああいった形は合理的です。運賃低減や渋滞緩和にも効果が見込めると思います。

例えば、通勤通学の時間帯には効率的にヒトを運び、昼間の時間帯は宅配の荷物を運ぶなどという利用シーンでは、箱型のほうが使いまわしが効きます。ダウンタイムを少なく、稼働率を100%に近づけることを考えなければならないので。

---:なるほど、つまり複数のサービサーでひとつのシャトルを共有し、時間帯によって使い分けるということですね。

安藤氏:そうですね。具体的なサービサーとしては、バス・鉄道や物流、不動産デベロッパーなどが想定されます。そして、ひとつのサービスでその車両を24時間使い続けるのではなく、ダウンタイムを極限まで低くするために、必要性に応じて使い回すことになるでしょう。

あるいは逆に、鉄道会社が物流をやるなど、それによってサービサー自身がビジネス領域を広げる可能性もあります。

---:効率化を追求していくと、ヒトと荷物の移動デマンドと、自動運転シャトルを結びつけるデータベースとAIを持ったプラットフォームがコアな価値になりそうですね。

安藤氏:はい。個人的にはモネ・テクノロジーズがそこを狙っているのではないかと思います。人流と物流の最適化を究極まで求めようとすると、クルマのデータだけではなく、スマートフォンのデータなどを掛け合わせて、さらにはシャトルを実際に走らせてノウハウを蓄積する必要があります。

自動運転は後からついてくるものとして、まずはヒトとモノの流れが世の中でどう発生しているのかというデータを収集しようとしているのではないでしょうか。

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《佐藤耕一》

日本自動車ジャーナリスト協会会員 佐藤耕一

自動車メディアの副編集長として活動したのち、IT企業にて自動車メーカー・サプライヤー向けのビジネス開発を経験し、のち独立。EV・電動車やCASE領域を中心に活動中。日本自動車ジャーナリスト協会会員

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