陶器のノウハウでEV技術を提供する日本特殊陶業…人とくるまのテクノロジー2019

日本特殊陶業(人とくるまのテクノロジー2019)
日本特殊陶業(人とくるまのテクノロジー2019)全 16 枚

日本特殊陶業はNGKスパークプラグとNTKニューセラミックの2つのブランドを、人とくるまのテクノロジー展2019で展開した。今回の展示物でもっとも注目を浴びていたのが、全個体電池。

全個体電池とは全個体リチウムイオン二次電池のこと。従来のリチウムイオン電池は電解液を用いているが、電解液の代わりとしてセラミックスを使うことで、電解液式リチウムイオン電池の弱点である「燃えやすい」、「スペース効率が悪い」、「エネルギー密度が低い」といったことを克服している。

日本特殊陶業は、その名とおり陶業からスタートした企業で、陶器製造になどから得たノウハウがある。今回の全固体電池は固体電解質を粉末としたのち圧縮、陽極材、陰極材を積層、圧縮することで電池として成立させている。

陶器のように焼くのではなく、積層させるだけで整形しているところもポイント。焼くと反りなどが発生するが、圧縮だとそうしたことが起きないので有利だ。電解液を使うと高温で蒸発、定温で凍結などが起きるが、そうした心配もなく、宇宙空間や極地での使用も可能となる。

NTKではすぐそこまで迫っている5G時代に関する開発も進んでいる。高周波用多層LTCC「NOC」は、低誘電、低損失の特性を生かして5Gにおける通信を理想的に行うためのアンテナを作るための部品。日本特殊陶業がもつセラミックス技術を生かしてグリーンシートと呼ばれるベース部分をセラミックス化、6GHzでの通信はもちろん28GHz帯での通信も可能としている。自動運転用の車載向け通信デバイスなどの高速、低遅延での送受信が求められるアプリケーションへの対応を可能としている。

HGAS-HL(水素漏れ検知センサ)は、日本特殊陶業のセラミックス技術そのものと言っていい製品。センサー本体に使われるのがセラミックス。水素は熱を伝えやすい性質があるため、セラミックスのセンサーを温めておくとセンサーの温度が変化し水素漏れを検知する。触媒式などに比べて被毒などの劣化が起きず、過酷な条件でも使用が可能。

NGKブランドとして展示されたのは、「MOTO DX」と名付けられたオートバイ専用のスパークプラグだ。外側電極を細いD断面形状とすることで、吸気時の抵抗を低減。点火後の火炎伝播効率も高くなる。電極を細くするのには高い技術が必要で、NGKが長きにわたって積み上げてきたスパークプラグのノウハウが生かされている。なお、NGKとしてオートバイ専用品としてラインアップが形成されるのは初のことである。

《諸星陽一》

諸星陽一

自動車雑誌の編集部員を経て、23歳でフリーランスのジャーナリストとなる。20歳代後半からは、富士フレッシュマンレースなどに7年間参戦。サーキットでは写真撮影も行う、フォトジャーナリストとして活動中。趣味は料理。

+ 続きを読む

【注目の記事】[PR]

ピックアップ

教えて!はじめてEV

アクセスランキング

  1. レクサス『LM』対抗!これがメルセデスベンツ最高級ミニバン、『Vクラス』後継の最終デザインだ
  2. 販売わずか3年の希少車種、「角目」のいすゞ『117クーペ』【懐かしのカーカタログ】
  3. トヨタの新型『ヤリスセダン』がタイで登場!「アティブ HEV」にはGRスポーツも
  4. 「完璧なフルモデルチェンジ」三菱『デリカミニ』が2代目に! 可愛さも機能も大幅進化で「後世に受け継がれる名車」と話題に
  5. 三菱ふそう、『スーパーグレート』3万1122台をリコール…ACMブラケットに不具合
ランキングをもっと見る

ブックマークランキング

  1. 「AIディファインド」の衝撃、日本の自動車産業は新たな波に飲み込まれるのか…アクセンチュア シニア・マネジャー 藤本雄一郎氏[インタビュー]
  2. EV充電インフラ-停滞する世界と“異常値”を示す日本…富士経済 山田賢司氏[インタビュー]
  3. ステランティスの水素事業撤退、シンビオに深刻な影響…フォルヴィアとミシュランが懸念表明
  4. SUBARUの次世代アイサイト、画像認識技術と最新AI技術融合へ…開発にHPEサーバー導入
  5. 「ハンズオフ」は本当に必要なのか? 高速での手離し運転を実現したホンダ『アコード』を試乗して感じた「意識の変化」
ランキングをもっと見る