ムーベルを使ってみて分かったこと日本初観光型MaaSアプリ「Izuko」の舞台裏…東急電鉄交通インフラ事業部森田創氏

ムーベルを使ってみて分かったこと日本初観光型MaaSアプリ「Izuko」の舞台裏…東急電鉄交通インフラ事業部森田創氏
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モビリティサービスに対する攻防が国内外の自動車メーカー間でも繰り広げられている。

ドイツのダイムラーグループの子会社で、多様な事業者や交通事業者などの課題に柔軟にカスタマイズできるように、ホワイトラベル、予約決済システムなどMaaSに関係するシステムのパーツを提供しているのが「moovel(ムーベル)」社だ。

そのムーベル社のシステムを採用したのが東京の渋谷に本社を置く東急電鉄(東急)。東急は都市開発や生活サービスにも力を入れており少子高齢化社会なども見据え、多様な移動選択肢の整備を通じて沿線価値向上を目指す「郊外型MaaS」の実証実験を東急田園都市線「たまプラーザ駅北側地区」を中心に、国内外観光客が駅や空港からの2次交通をスマートフォンなどで検索・予約・決済し、目的地までシームレスに移動できる2次交通統合型サービス「観光型MaaS」の実証実験を静岡県の伊豆エリアで行っている。ムーベル社のアプリは後者用に選ばれた。

6月19日、20日に東京オリ・パラとCASE・MaaSのキープレイヤーが一堂に会するセミナーが開催されます。詳細はこちらから。

豪華な組織体制 東急、JR東日本、楽天など


観光型MaaSの対象は静岡県の伊豆半島だ。本実証実験の推進にあたって、各社は「伊豆における観光型MaaS実証実験実行員会」を設立。会長は、一般社団法人美しい伊豆創造センター。委員長は東急、ジェイアール東日本企画。副委員長はJR東日本、楽天、伊豆急行。委員は東海自動車、伊豆箱根鉄道、伊豆箱根バス、伊豆クルーズ、伊豆半島創造研究所、静岡県タクシー協会伊豆支部、JR東日本横浜支社、JR東日本レンタリース、静岡県庁。アドバイザーは国土交通省静岡県支局が務める。資金はJR東日本と東急から。豪華なメンバー構成。

実行委員会事務局をジェイアール東日本企画が務め事業内容は、調査事業、商品・アプリ開発事業、広報宣伝事業、受入れ体制整備事業、次世代二次交通実証実験事業、活動期間は2019年1月17日~12月31日の予定)。

2019年4月1日から実証実験を開始、Izuko当初目標数2万ダウンロードを突破


この豪華な組織体制のもと2019年4月1日からIzukoを用いた実証実験がはじまった(第1弾は2019年4月~6月30日、第2弾は9月1日から11月30日)。他のアプリのダウンロード数を参考に、全6か月の目標値を2万ダウンロードに設定。その目標値を実験開始後のわずか57日目で突破した。

成功要因は何か。ムーベル社をホワイトラベルとして使ってみてどうか。本格的に走り始めたMaaSアプリ「Izuko」を牽引する東急電鉄交通インフラ事業部都市交通戦略企画グル―プ次世代インフラ担当課長森田創氏に失敗談も含めて聞いた。

早期の2万ダウンロードを達成、成功要因は組織体制


---:2万ダウンロード突破おめでとうございます。成功要因は何でしょうか?
森田氏:伊豆における観光型MaaS実証実験実行委員会のメンバーがそれぞれ営業活動を頑張ってくれたおかげです。JR東日本のスーパービュー踊り子号などの電車の車内、楽天を通じて地元旅館での宣伝。私も大型連休の際に、地域のお祭りに出向いて営業しました。またマスコミで幅広く取り上げられたことも、後押しとなりました。

予想外だったことは、三島のような伊豆半島の都市でデジタルマップが住民に受けたことでした。最寄のバス停はどこか、おいしいレストランはどこかなど、ご友人やビジネスパートナーが三島に来た時に案内する上で役立つなどの声が多く聞かれ、観光用途以外にそんな需要もあるのかと大変勉強になりました。

何より伊豆という首都圏から近く、魅力ある観光地が対象地であったことも大きいでしょう。実行委員会のメンバーの協力もあり、ダウンロードまでは大変好調でした。アプリでは、伊豆半島内の電車やバスが一定エリアで乗り放題のデジタルフリーパスを2種類用意しています(Izukoイースト3,700円、Izukoワイド4,300円)が、そのパスがアプリで買いにくい仕様上の問題もあり、売上は少々伸び悩んでいます。アプリ改善は順次行っていますが、9月1日から始めるフェーズ2に向けて、さらに魅力ある商品を用意することで、多くの方にご利用頂けるようにしたいと考えています。

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関係調整が肝だが骨が折れる


---:美しいお話だけではないと思います。失敗談は?

森田氏:伊豆半島により多くの方にお越し頂きたいという共通の志のもと、複数の交通事業者や自治体など多くの方々に実行委員会にご参加頂いています。

だからこそ、ダウンロード営業など一丸となって進む時は威力を発揮しますが、利害調整などが難しいこともあります難し。独立採算で収支を各社が問われ、またMaaS自体が新しい取り組みである以上、仕方のないことだと思います。何度も何度も足を運び、関係構築し、こちらの考えやビジョンをご理解いただくように努めるほか、近道はないと考えています。

一方で、バスやタクシー運転手の高齢化や深刻な人手不足により、鉄道の接続交通の維持はかなり難しくなっています。各社が意地を張りあうことは伊豆の未来を考えるとサステナブルではありません。時間をかけても、新しい協調体制を築くことを原則としながら活動していくつもりです。

住民のITリテラシーにも左右される


---:アプリ開発についての課題は?
森田氏:昨年末からドイツのムーベル社と開発に取り組みました。わずか4か月程度の開発期間であったため、使い勝手に課題も多くあります。順次改善していっていますが、今後も実証実験を進める中で、より進化させていきたいと思います。

ムーべル社も誠意と熱意を持って対応してくれていますが、時差や言語の壁、またドイツ人と日本人のユーザーインターフェンスの好みの違いがあり、それらをすり合わせることに手間がかかったのは事実です。これも良い経験だったと考えています。

また同じ伊豆半島でも、地域によってITリテラシーは大きく異なります。たとえば三島と下田のスマホ普及率や浸透度は、実感として、かなり違うのではないかと感じます。そうした地域差にも留意しながら、今後戦略拠点を作って、様々なサービスメニューを浸透させていきたいと思います。

観光用のMaaSアプリは、都市型のそれと異なり、数か月に1回しか使わない観光客がユーザーの大半を占めます。わずか57日で2万ダウンロードを突破したといっても、真の意味でのアクティブユーザーはさほど多くありません。いかにアクティブユーザーを増やしていくかが、今後このアプリを定着させるうえでの課題だと認識しています。

MaaSはデジタルによる世直し


---:なぜ苦労してまで東急は観光型MaaSに挑むのでしょうか?
森田氏:MaaSは、デジタル「世直し」だと思います。アプリは大事ですが、アプリを使ってどう世の中のためになる仕事をするかが、MaaSの本質だと信じています。伊豆半島に置き換えれば、高齢化、人口減少、交通を含む各産業の人手不足により、素晴らしい地域資源がありながら観光地としての持続可能性に赤信号が灯りかけているなかで、MaaSによる移動環境の改善をきっかけに、一つ一つ課題解決していかねばならないということです。伊豆にはキャッシュレスや多言語対応など、移動環境以外にも、観光客を受け入れるうえでの課題がいくつもあります。住民に目を移しても、高齢者が多いことでのITリテラシーの問題など、地域のスマート化には課題があります。これらを解決するには、組織の壁を越え、志を同じくする「仲間」が必要です。

---:東京オリンピック・パラリンピックに合わせては?
森田氏:伊豆最古の温泉街の修善寺で、自転車の競技が開催されることもあり、MaaSと組み合わせた自転車ツーリズムを作れると面白いと思っています。海外からのお客さまにも楽しんでいただける体制づくりを並行して進めていきたいですね。

6月19日、20日に東京オリ・パラとCASE・MaaSのキープレイヤーが一堂に会するセミナーが開催されます。詳細はこちらから。

《楠田悦子》

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