クルマ定額サービス「SOMPOで乗ーる」自動運転時代の保険の行方…DeNA SOMPO Carlife取締役営業本部長久保田和史氏[インタビュー]

クルマ定額サービス「SOMPOで乗ーる」自動運転時代の保険の行方…DeNA SOMPO Carlife取締役営業本部長久保田和史氏[インタビュー]
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保険は「自動運転」時代にどうなるのか。その問いから生まれたサービスの一つが、2019年6月3日にディー・エヌ・エーとSOMPOホールディングスの合弁会社「DeNA SOMPO Carlife」がサービスを開始したクルマ定額サービス「SOMPOで乗ーる」だ。

「SOMPOで乗ーる」はクルマ定額制サービス、つまりカーリースだ。クルマの購入・維持費など必要な費用から、選んだ契約期間満了時の予想車両価格(残価)を差し引き、残りのクルマ代を支払ってもらうシステムになっている。また「SOMPOで乗ーる」でカーリースしたクルマを、ディー・エヌ・エーと、SOMPOホールディングスが設立した個人間カーシェア事業の合弁会社「DeNA SOMPO Mobility」が提供する「エニカ(Anyca)」で貸し出せることも特徴だ。

保険業界が直面する危機やそこから生まれた「SOMPOで乗ーる」のビジネスモデルはどうなっているのか。損害保険ジャパン日本興亜で主に自動車ディーラー向け営業及び営業推進、関連生命保険会社への出向にて代理店向け営業推進を担当した経験のあるDeNA SOMPO Carlife取締役営業本部長を務める久保田和史氏に話を聞いた。

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「自動運転」時代に保険の届け方が変わる?
---:なぜ保険会社がマイカーリースなのですか?
久保田氏: SOMPOホールディングスの損害保険料の収入の約6割がクルマに関係する保険です(2017年度の自動車保険が49.7%、自動車損害賠償責任保険が13.4%)です。そしてその売上の4割が保険の専業代理店によるものです。

クルマを取り巻く環境は所有から利用へシフトしています。そして事故をできるだけ減らそうとする自動運転技術の普及が進めば事故が減ります。

保険は国の認可に基づいて事業を行っていますので、事故が減ると保険料が下がるような仕組みになっています。したがって将来的にはクルマに関係する保険の売上げは減少することはが明らかです。

「自動運転」をキーワードに今後どのようなライフスタイルになるのか。所有から使用へシフトし、無人の自動運転車が走った場合、保険会社は保険をどのように“届ける”のか。

クルマを“所有”する時代は、クルマを所有したという事実を察知できた人が保険を届けていました。では“使用”する時代はどうなるのでしょうか。例えばカーシェアは保険込みのサービスです。そう考えれば、モビリティサービスを取り扱っている人が保険を届けるのではないか。これからは保険を専業で売っていた人も自分がモビリティサービスを手掛けないと生き残れないのではないか。研究しなければ保険の売上もさらに減少してしまうのではないかと考えたわけです。

---:ビジネスを取り巻く環境の変化により、大きなビジネスモデルの転換への対応がいよいよ待ったなしとなっているわけですね。

顧客接点をより多く個人間のカーシェアに着目した理由
久保田氏:自動運転の時代が来た時にその市場をとる人は、今のモビリティサービスでの顧客接点をより多くとった人だと考えています。また安心安全に資するものを提供したいと考えています。安心安全をより大きくできるものは何か。そこで目を付けたのが、カーシェアです。

しかしレンタカー型のカーシェアはすでに成熟してきています。後追いで参入しても勝ち目がない上に、自社に利益を出せるアセットがありませんし、展開できる地域が限られています。そこで裾野が広い個人間カーシェアに着目したわけです。CtoCの個人間のカーシェアではより安心安全が問われるので、保険が生かせると感じました。そこで個人間カーシェア「エニカ(Anyca)」のサービスを提供するディー・エヌ・エーとつながりました。

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マイカー離れ問題を解決したい
---:マイカー離れはクルマ業界の長年の問題です。しかし新しい売り方の提案は過去を振り返ってもあまり多くはなかったのではないでしょうか。

久保田氏:マイカー離れが進む理由はコストなのだと思います。コスト負担を減らすことで、マイカーに乗る人を増やしたいと考えています。定額制とカーシェアの組合せで、マイカーにかかるコストとハードルを下げて、マイカーを持つ人を増やしたい。

スマホやフリマアプリが影響?!支払い方法や感覚の変化
久保田氏:10年前からマイカーリースはありましたが、あまり浸透していませんでした。しかし近年マイカーリースは増えているのです。

マイカーリースが共感を呼んでいる理由は、まずスマートフォンの影響が大きいのではないでしょうか。スマートフォンは、本体代金と利用料金で2年契約が多い。この定額制モデルが世の中に浸透してきていて、マイカーリースも同じ感覚なので共感する人が増えているのではないでしょうか。

またフリマアプリが日常生活に浸透してきています。そうすると、モノを転売することを前提に購入する習慣ができてきています。“実質負担額”というかたちで購入するわけです。例えば、人気のあるバックは定価が16万円ですが、メルカリで売ると12万円で売れるらしく、4万円で高級バックが持てるのです。

これらをマイカーリースに置き換えました。ミニバンが欲しいとしましょう。あるミニバンは350万円の5年リースで残価が150万円つきます。リースで負担するのは200万円です。ある高級ミニバンは450万円で、新車価格は350万円のものと比較すると100万円の差があるため高くて買えないのですが、リースだと5年後の残価は250万円つきますので、約200万円の負担で乗れてしまうのです。

景気などの影響によりマイカー離れが進んでいます。そのため女性に聞くと、身の丈に合っていない高級車に乗っている男性を見ると「この人の経済観念は大丈夫なのかしら?」と思うようです。しかし多くの男性は良いクルマに乗りたいと思っています。

---:やはり良いクルマ欲しい。女性も経済的な観念はしっかり持っていて欲しい。けれども本当は女性も良いクルマに乗っていて欲しいと思っていると思います。

久保田氏:5年後の価値を示した上で、メンテナンスや保険料も込み実質負担額を定額で。しかも個人間カーシェアのエニカに登録してもらうと、乗らない時間を有効活用して、マイカーにかかる負担がさらに減るというのはいかがでしょうか。クルマは97%の時間が車庫に寝ている状態です。エニカ(Anyca)では予測ですが過去のデータに基づき、どのクルマならどこの地域でいくらくらい稼げるか試算が可能です。

---:クルマの保有に対するコストが、東京ですら限りなく低く抑えられるのかもしれませんね。こんな保有とシェアの仕方があるなんて驚きです。

カーシェアのできるカーリース
久保田氏:これらのサービスを実現するためには、“カーシェアができるカーリース商品”を作る必要がありました。カーリースは基本的には約款で「転貸禁止」となっています。しかしカーシェアは個人間の共同使用の概念を利用しているため転貸ではないのです。リース会社に認めてもらった上でエニカ(Anyca)の個人間カーシェアでつかえるカーリースを出すことができました。

保険専業代理店が扱えるモビリティサービス
久保田氏:保険会社は自動車業界のプレイヤーは取引先でもあります。基本的には共存共栄を第一に考えています。リース会社、提携修理工場、自動車販売会社の皆さまとのパートナーシップによりサービスを提供していきます。

専業代理店は、保険込みのクルマの買い方を提案することができるようになります。世の中のマイカーリースはネット販売が主流です。専業代理店の強みは、安心感です。対面でマイカーリースの説明を聞いて購入できる安心感、信頼してくれる人からの紹介で広げることができるのではないでしょうか。

お客さまがクルマを買い替えするタイミングは車検のタイミングが多いです。保険契約の情報を通じて、いつ車検になるかわかります。それをベースに新しいクルマの持ち方の提案をしてくことになると思います。

---:JV事業のストラクチャーは?
久保田氏:DeNAから個人間カーシェア「エニカ(Anyca)」を分社化してもらい、まずDeNA 51%、SOMPO HD 49%の個人間カーシェア事業のジョイントベンチャー「DeNA SOMPO Mobility」を設立しました。そしてその「DeNA SOMPO Mobility」が出資をして個人カーリース運営事業の「DeNA SOMPO Carlife」をつくりました。

ビジネスモデルはDeNA SOMPO Carlifeが専業保険代理店を通じてマイカーリースサービスを提供します。DeNA SOMPO Carlifeはマイカーリースの運営のみで、実際のリース契約の締結などはリース会社と行ってもらいます。

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《楠田悦子》

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