ボルグワーナー、電動化技術開発にも積極的な姿勢を見せる…人とくるまのテクノロジー2019

ボルグワーナー(人とくるまのテクノロジー展2019)
ボルグワーナー(人とくるまのテクノロジー展2019)全 18 枚

ボルグワーナーは、アメリカのミシガン州アーバンヒルズに本拠を構えるグローバルなリーディングカンパニーだ。内燃機関、ハイブリッド、そしてEV(電気自動車)向けのクリーンで高効率な技術ソリューションを提供している。また、インディ500で勝者を讃える記念トロフィーを贈呈していることでも有名な企業だ。それだけではない。インディカーシリーズにターボユニットを供給している独占サプライヤーとしても知られている。

EVを中心とする電動化技術が躍進

2019年、ボルグワーナーは今につながる会社組織となって90年の節目を迎えた。第二次世界大戦後の成長期には、時代の先端を行くオートマチック・トランスミッションの分野で高い技術力を知られている。その後はターボチャージャーや4WDシステムなど、自動車の中核となる部品の開発と販売においても大きく業績を伸ばした。また、エンジン内部の可変バルブタイミング機構や電子制御スロットル、EGR(排気ガス再循環システム)などの分野にも進出し、高い評価を獲得している。

21世紀になると、自動車業界に大きな変革の波が押し寄せてきた。とくに急速な変化と進歩を遂げたのが、EVを中心とする電動化技術だ。また、電動モビリティ向けの統合ドライブモジュール「iDM」も注目を集めるようになっている。これは最先端のトランスミッション、電気モーター、パワーエレクトロニクスを統合した製品だ。用途によって乗用車、軽量の商用車のフロントアクスルやリアアクスルに容易く統合できる。

また、高効率なP2オンアクシスハイブリッドモジュール、バッテリーやキャビンヒーターなどのサーマルマネージメント(熱や温度管理)コンポーネントなどの電動化関連部品も大きな伸びを見せるようになった。

車載バッテリーチャージャーを日本初公開

ボルグワーナーは、長い経験と専門的な知識を活かし、次世代の電動化技術を積極的に開発するようになっている。これからの時代に望まれる高効率なソリューションを分かりやすく展示し説明したのが、先月パシフィコ横浜で開催された「人とくるまのテクノロジー展」のボルグワーナーブースだ。

この展示会で注目を集めたのが、ボルグワーナーが新たに開発した車載バッテリーチャージャー(OBC)である。これは効率向上を求める市場の要求に対し、ボルグワーナーが送り出した意欲的な作品だ。最高の効率を実現するために先駆的なシリコンカーバイト技術を採用し、クラス最高の電力密度と電力変換効率、安全規制の遵守を実現した。このOBCを搭載できるのは、バッテリー充電を行うプラグインハイブリッド車やピュアEVだ。送電網から送られる交流電源(AC)を、充電に用いる直流電源(DC)に変換してくれる。

7.4kW、11kW、22kWの定格電力を含む幅広い範囲のAC入力に対応し、オプションで2.3~3.6kWのDC/DCコンバーターを内蔵することが可能だ。それだけではなく、あらゆる化学バッテリーと、互換性のある400V、650V、および800Vの電圧レンジに対応することができる革新的な製品でもある。

ボルグワーナーのOBCの充電能力と機能は多岐にわたり、とても魅力的だ。定格7.4kWの充電力を持つOBCは、1.8kW、3.3kW、そして6.6kWの充電力にも使用でき、送電網からの単相電源を使用する。定格充電力11kWのOBCは、三相グリッド電源の高速充電方式により効率がよいのが特長だ。また、定格22kWのOBCは三相電源で、さらに効率的で迅速な高速充電が可能になった。

もちろん、ボルグワーナーのOBCは、アメリカだけでなく、ヨーロッパや日本、中国など、多くの地域の規格を満たすように設計されている。メイン入力とDC出力の間の絶縁性能がよく、防水かつ防塵で、ISO26262の安全規格にも対応させた。最新のシリコンカーバイト技術によって最高電力変換効率による省エネルギー化を実現したのが、このオンポードバッテリーチャージャーだ。見どころが多い。

「よりクリーンで、エネルギー効率に優れた製品を開発していく」

世界19カ国に68の拠点を持ち、従業員数は3万人になるボルグワーナーの副社長兼エミッションズ&サーマルシステムズ・アジア事業本部長のクリストファー・J.ランカー氏は、プレゼンテーションでボルグワーナーの今後のビジョンやEVを中心とした先進的ソリューションについて語ってくれた。

「世の中は内燃機関からハイブリッドシステム、そしてEV用へと動いています。ボルグワーナーは、この3つの推進システムのリーディングカンパニーです。EVが増えてきても、私たちは気にすることなくソリューションを提供できます。これからもボルグワーナーは、エネルギー消費と排気を抑えたモビリティのソリューションに意欲的に取り組み、クリーンでエネルギー効率のいい社会の実現を目指していきます。

燃費規制は、カテゴリーや駆動システムに関わらず年を追うごとに厳しくなっています。北米ではCARB(カリフォルニア州大気資源局)/セクション177州が市場全体の38%を占めているため無視できません。しかも12州は厳しい燃費規制を設けています。燃費が良くなれば環境にいいと考えているからです。私たちは内燃機関の効率をもっと高めようとしています。燃焼などの効率を高め、排出ガスを減らすとともに性能を向上させることに努めているのです。

ですが、電動化は避けて通れません。2030年にはハイブリッド車に加え、プラグインハイブリッドが増えていくし、EVも増えるでしょう。ヨーロッパと中国の市場予測も北米とほとんど同じで、一定のプラグインハイブリッド車やEVシェアが必要になります。EV市場は成長していますが、ボルグワーナーはモーターからバッテリー、パワーエレクトロニクス、サーマルマネージメントなど、ほぼすべての電気の分野をカバーできます。また、温度管理についてもやっていきます。

さらにロメオパワーテクノロジー社との合弁会社の設立に合意したことも強みになるでしょう。この合弁会社は内燃機関、ハイブリッド、EVの推進システムにおけるリーダーシップ強化に、大きなステップになるはずです。専門知識が増えたので成長が見込めます。

包括的な製品ポートフォリオにより、ボルグワーナーは世界中の自動車メーカーに最先端のソリューションを提供できるのです。いかなる困難があろうとも、ボルグワーナーは未来の可能性を切り開き、推進ソリューションを提供していきます。よりクリーンで、さらにエネルギー効率に優れた製品を開発していくので、期待してください」。

《片岡英明》

片岡英明

片岡英明│モータージャーナリスト 自動車専門誌の編集者を経てフリーのモータージャーナリストに。新車からクラシックカーまで、年代、ジャンルを問わず幅広く執筆を手掛け、EVや燃料電池自動車など、次世代の乗り物に関する造詣も深い。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。

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