道路を使う全ての人に安全を…ZFの掲げる「インテグレーテッド・セーフティ」とは?

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ZFブース(人とくるまのテクノロジー展2019横浜)
ZFブース(人とくるまのテクノロジー展2019横浜)全 30 枚

ドイツのZFは創業から100年以上の長い歴史を誇るグローバル・サプライヤーである。20世紀はトランスミッションを中心とする駆動系やシャシー・テクノロジーの分野で世界をリードし、世界中の自動車メーカーに先端技術を提供してきた。

21世紀の今は、未来のモビリティへのソリューションを提供する、複眼の思想を持つサプライヤーへと成長を遂げている。電動化やハイブリッド技術に加え、近年ではコネクティッド・ビークル(インターネット常時接続車)やインテグレーテッド・セーフティなど、新しい分野の技術開発にも意欲的だ。

「Next Generation Mobility」に基づく総合ソリューションを提供

ZFブース(人とくるまのテクノロジー展2019横浜)ZFブース(人とくるまのテクノロジー展2019横浜)

ZFの企業使命は、クリーンで安全、誰にとっても快適な移動手段、モビリティソリューションを人々に提供することである。現在手がけている技術領域は、大きく分けると4つだ。車両の動作制御(コントロール)、統合安全、運転の自動化、そしてEモビリティである。5月22日から開催された「人とくるまのテクノロジー展2019横浜」ではZFが掲げているNext Generation Mobility(次世代のモビリティ)戦略に基づく、安全で快適な次世代のモビリティを生み出すための技術的な取り組みについて説明するとともに部品の展示を行った。

具体的には3つのセグメントに、4つのコアテクノロジーを使って社会に貢献したいと考えている。セグメントは、乗用車だけでなく、バスやトラックなどの乗り物を含めた商用車、商業車、そして産業機械という領域だ。この3つの領域に対し、自動運転、ビークル・モーション・コントロール、インテグレーテッド・セーフティ、エレクトロモビリティという4つのテクノロジーを用いて供給することがZFの戦略方針である。これを実行することによって安全で快適なモビリティを提供することを目指した。

事故のない世界と利便性の向上に向けた取り組みとしてはADAS(先進運転システム)が知られている。近年、話題になっている自動運転についてのキーワードは、ZFの基本的な考え方となっている「See、Think、Act」だ。見て、検知・認知し、それを判断して動作するということである。

ZFブース(人とくるまのテクノロジー展2019横浜)ZFブース(人とくるまのテクノロジー展2019横浜)

カメラやレーダー、光によって検知・測距を行うライダーで物体を認識し、データ化するのがSeeだ。認識したデータをZFの車載ECUを使って最適に制御するのがThinkである。このデータを受領し、最適に動かすアクチュエーターの部分がActになる。三位一体になって、安全な移動手段を、自動で誰にでも使えるようにした総合ソリューションを提供するのがZFの基本的な考え方だ。

より高度な技術を提供し事故の死傷者を減らす、という使命

ZFで乗員安全システムのシニア・マネージャーを務めている井関秀雄氏ZFで乗員安全システムのシニア・マネージャーを務めている井関秀雄氏

そこで近未来の自動運転技術と深く関わっているアクティブ&パッシブセーフティについて、乗員安全システムのシニア・マネージャーを務めている井関秀雄氏に話を聞いた。

----:ZFが掲げる4つのストラテジーのなかで「インテグレーテッド・セーフティ」とはどういった意味を持つのでしょうか?

井関氏(以下敬称略):これは統合型安全ということです。今まではアクティブセーフティという領域とパッシブセーフティという領域とを分けて考えていました。これを統合して、より安全なシステムを提供しようというのがインテグレーテッド・セーフティの考え方です。

----:より安全なシステムを人々に提供するために、カギを握るのがインテグレーテッド・セーフティなのでしょうか?

井関:今、地球上では年間に135万人もの人が事故で亡くなっています。22秒にひとり、お亡くなりになっているのですね。私たちは自動車関連のサプライヤーとして、シートベルトやSRSエアバッグなどの安全システムを提供してきました。が、それだけでは十分とは言えません。もっと努力して、高度な安全技術を提供していかないと、死傷者は減らせないと思っています。これはZFの使命ですね。

----:ここ数年、日本では交通事故による死者数が激減しています。高度成長期真っ只中の1970年は1万6000人以上の死者数を記録していますが、2018年は3532人と、過去最少を更新しました。これは公官庁の努力だけでなく自動車メーカーやサプライヤーが事故の防止に積極的に取り組んできた成果だと思います。

井関:日本だけでなくドイツでも同様の傾向があり、劇的に減っています。1970年代、ドイツは2万人もの人が交通事故で亡くなっていたのです。しかし、法規が改正されたり、私たちのようなサプライヤーの製品の技術が向上することによって死傷者数は大きく減ってきています。そうはいっても、未だに年間1830人ほどの人が交通事故で亡くなっているのです。

----:交通事故による悲惨な死傷者の数を、ZFはもっと減らそうと考えているのですね。

井関:はい。私たちは死傷者数を減らすために、インテグレーテッド・セーフティの目標を掲げました。それが「We protect people on the road」です。直訳すると、道路上の人を守る、という言葉になります。これは道路を使っている人すべてに安全なものを提供しようということで、私たちの使命だと捉えています。これまではクルマに乗っている人を守る、ということでした。が、これを一歩進めました。

さらにはインテグレーテッド・セーフティというところの製品は、アクティブセーフティとパッシブセーフティを融合させ、よりよいシステムを構築させ、これをユーザーに提供するようにしているのです。これこそが私たちZFの使命だと考えています。

----:どういうところにフォーカスを当てて目標を達成しようとしているのですか?

井関:私たちは5つのキーワードをあげています。1つ目は、道路やクルマがどのような状態にあるのか、に焦点を当て、これを製品に活かしていこうというものです。2つ目は、オートメーテッド、つまり自動化や自動運転ですね。これが世の中の流れになっているので、これに焦点を当てていきます。3つ目は、クルマの中にどういった人が乗っているのか。外にはどういった人がいるのか、ということを常に注視し、把握することですね。4つ目は、制御がより安全で、高い信頼性を持つ製品にすることです。5つ目は、ユーザーに対し付加価値をつけ、消費者目線で使いやすいものを作っていこうと考えています。この5つの切り口で、新しい製品の開発に取り組んでいるのです。

モニターやセンサーを活用し、事故の要因を早めに取り除く

ZF ACR8(アクティブ・コントロール・リトラクター)ZF ACR8(アクティブ・コントロール・リトラクター)

----:インテグレーテッド・セーフティを用いた製品にはどんなものがあるのでしょうか?

井関:ひとつは、乗員をモニターするシステムですね。たとえばドライバーなどがどういった体格で、どういった状態にあるのかを検知し、ドライバーが眠気を催したときなどはシートベルトを自動的に動かし、運転している人に分からせるようにしています。それがZFではACR8(アクティブ・コントロール・リトラクター)と呼んでいる製品です。シートベルトにモーターを追加してウェービングさせ、危ない状態にあることを気づかせます。

----:これまではぶつかった後にシートベルトを作動させていましたね。これからのシートベルトは事故を未然に防ぐ効果も期待できるのですね。

井関:このシステムはドライバーや同乗者が、今、どういった状態にあるのかを観察し、その機能をより有効的に使おうというものです。事故を起こしそうな要因を早めに取り除き、乗員を事故から守ります。

----:ZFは外部のセンサーなどの技術も長けていますね。ここ数年、ADAS系の技術を採用するクルマが一気に増えました。

井関:ADASシステムと連動させ、クルマがぶつかりそうになったときにはぶつかる直前にエアバッグを展開させるようなシステムを開発中です。これまでは単発的に製品を提供していましたが、これからは多くのものをひとつにまとめ、今まで以上に機能を有効に活用できるようにしたいと考えています。こうすれば安全性は大幅に高められます。これがインテグレーテッド・セーフティのコンセプトなのです。

----:これから先、期待されているオートメーテッド、自動運転技術についても少しお話を伺いたいと思います。自動運転技術は、誰がどの操作を行うかによってレベルを分けていますね。自動運転はレベル3からレベル5になります。

井関:現在、多くのメーカーがカバーし、私たちも製品化しているのは運転支援レベル2の領域ですね。これはステアリング操作や補正、スピードの加減速をサポートする機能を備えたクルマになります。私たちもこの領域まではカバーできています。しかし、これから5年後の2025年には大きく変わるだろうと予想しています。レベル3、レベル4、そしてレベル5まで行く可能性まで考えられます。

特定の場所では運転に関わるすべての操作を自動で行い、万一の緊急時にはドライバーが対応するのがレベル3です。緊急時を含め、特定の場所ではシステムがすべて操作してくれるのがレベル4で、その先に完全自動運転のレベル5があります。レベル4の領域からはクルマ自体のレイアウトや装備が大きく変わってくると思います。また、「ピーブルムーバー」と呼ぶ大勢の人が乗って移動する移動手段に対しても安全というものを考えていかなければならないですね。こういったモビリティに関しても、どういった安全装備が有効なのかを検証していく必要があります。

----:道路やクルマの状態がどのようにあるのか、これは国や地域によって差が大きいように思われます。日本とヨーロッパも違いますね。

井関:日本は突出して歩行者の事故が多いですね。高齢者の事故も増えています。ヨーロッパは日本ほど多くないのですが、代わりに自転車の事故がはるかに多いのです。トラフィック・シナリオは、国や地域によって違いがありますから、それを知ることが安全性向上のカギになりますね。乗員を守る、ここから一歩踏み出して道路上のすべての人を守る、というのがZFの基本的な考え方になっています。

----:ありがとうございました。

後席用エアバッグ後席用エアバッグ

2025年までに自動車の世界が大きく変わることは間違いない。ZFは4つのテクノロジーを用い、安全で快適なモビリティを提供する私たちも交通事故のないモビリティ社会の形成に関して大きな成果を期待できるインテグレーテッド・セーフティの今後の発展と製品展開に注目していきたい。

車外にふくらむサイドエアバッグ、ZFがプロトタイプ発表…重傷リスクを最大40%低減[動画]

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《片岡英明》

片岡英明

片岡英明│モータージャーナリスト 自動車専門誌の編集者を経てフリーのモータージャーナリストに。新車からクラシックカーまで、年代、ジャンルを問わず幅広く執筆を手掛け、EVや燃料電池自動車など、次世代の乗り物に関する造詣も深い。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。

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