キャタピラー、次世代ショベルカーの無人化施工デモを実施

無人のCat320による自動掘削・積込作業
無人のCat320による自動掘削・積込作業全 13 枚

キャタピラージャパンは7月5日、次世代油圧ショベルによる無人化施工のデモンストレーションをメディア向けに行った。

【画像全13枚】

今回行われた無人化施工デモは、キャタピラーの油圧ショベル『Cat320(キャット・サンニーマル)』を使って、掘削(くっさく)・積込作業を自動で行うもの。開発は大成建設と共同で行われており、今回のデモも三重県員弁郡にある大成建設の実験場で行われた。

建設現場を再現した実験場には、本日の主役であるCat320が待っていた。Cat320は、油圧ショベルで最もポピュラーな20トンクラス(機体の総重量が約20トン)の機体。2017年秋に発売された現行のCat320が「次世代ショベル」と呼ばれるのは、最近の乗用車のように操作系がすべて「CAN」(Controller Area Network)でフル電子制御化された「デジタルプラットフォーム」モデルだからだ。これによって、ロボット機構などのデバイスを後付けすることなく、オプションの専用リモコンキットや各種プログラムによって機体を自在に動かすことができる。

「一つのゲーム機でも、ソフトを入れ替えることで様々なゲームを実行できるように、Cat320もプログラムを入れ替えるだけで様々な作業をさせることができる」と大成建設の生産技術開発部チームリーダー、青木浩章氏は説明する。

ちなみに大成建設は、2014年から建設機械の遠隔操作や自動化の開発をスタートしており、2018年にはCat320に自律割岩システムを実装したモデルを開発している。今回のショベルカーによる掘削・積込作業の自動化は、それに続く第2弾だ。無人化施工の実証実験場無人化施工の実証実験場

お手本はベテランオペレーターの操作

この日のデモは、大型ダンプトラックにショベルカーで掘った土を積むという、建設現場やトンネル工事などでよく見られる現場を再現したもの。

まずはベテランオペレーターによる有人で、お手本となる掘削・積込作業が披露される。Cat320のバケットは一回で約2トンの土を掘削・積込することが可能なため、10トンダンプであれば4~5回で積載量の上限に達する。

続いて、無人になった同じショベルカーによって掘削・積込作業を開始。有人のダンプトラックが近づいていくと、ショベルカーのクラクションが自動で鳴る。有人の時と同じで「作業開始」の合図だ。

この時、ショベルカーとダンプトラックの距離を測っているのは、作業現場の横に配置されたLiDAR(ライダー)。このLiDARは、対象の位置関係だけでなく、積載車の形状から一般的なタイヤ式のダンプカーか、履帯を備えたクローラダンプかの機種判定も行っており、ショベルカーの積込制御に反映される。

ショベルカーは、ベテランオペレーターの操作をモデルとしたプログラムによって、有人の時と同じように土を掘り、円滑な動きでダンプカーに積んでいく。土がすくえる場所へ機体を微妙に横移動させる動作も、有人の時と同じだ。

また、Cat320には、実際にバケットがすくった土の重さを計測する「Catペイロード」機能が標準装備されており、実際にダンプに積んだ土の総量を把握している。この日は土が湿って粘土状となっていたため、一回の掘削で積める土は多めだったが、この機能によって作業を4回目で終えたり、最後の一回を少なめにしたり、といった加減も自動で行われる。また、遠隔地からリアルタイムで作業軌跡や作業量をモニタリング・記録することも可能だ。

なお、作業現場から歩いて5分ほどのところには遠隔操作室があり、ショベルカーを監視・操作するためのモニターやコントローラーがある。ここから、人が立ち入れない災害現場などでの作業を想定したマニュアル遠隔操作も可能だが、今回のような無人化施工の場合は、基本的にはボタン一つだ。昨年はすでにソフトバンクと共同で5Gを使っての実証実験も行わているが、この日はWi-Fiのみで操作されていた。

意外だったのは、現時点ではこうした一連の自動化作業を、車両側のセンサーもカメラもなしで行っていたこと。将来的には作業現場横のLiDARの代わりに、センサーやカメラを車載することになりそうだが、現時点でも、どの部分をすくったか、どれだけの量を積んだか、といった情報で、ベテランオペレーターと同じように掘削・積込作業が出来ている。ショベルカーには「見えていない」のに、土を積み終わった後、荷台の土をバケットで平らにならす動作もスムーズだ。

また、ダンプへの積込操作が滑らかであることも重要だという。有人のダンプトラックに乱暴に土を積むと、その衝撃でドライバーに不安感を与えてしまうからだ。自動機(この場合は無人ショベルカー)と普通機(有人ダンプトラック)を連携させる場合、自動機には「優しさ」が必要になる。「自動機と自動機という組み合わせは過去にもあったが、自動機と普通機との組み合わせは今回が初ではないか」と青木氏は言う。遠隔操作室の様子遠隔操作室の様子

建設業界が自動化に期待すること

このように、自動化されたCat320の作業は見事だったが、現時点で開発はまだ始まったばかりで、キャタピラー、大成建設の両社も、まだ実用化の目途を話す段階ではない、としている。

とはいえ今後は、ショベルカーに限らず、各種建設機械の自動化技術を開発し、将来的にはAI技術の活用も視野に入れながら、複数の建設機械を自動連携させた無人化の実現を目指す予定だ。

建設業界が施工の自動化を目指す最大の理由は、やはり人不足だ。ただし、見学会に同行したキャタピラーのハリー・コブラック代表執行役員は、「人が工事現場から突然消えるとは思っていないし、それが私たちの目標でもない」とし、「私たちは一人一人の力を拡大させるテクノロジーを開発している」と語る。

さらにもう一つ重要なのは、将来こうした自動化や遠隔操作が可能になれば、若い人にもロボットやゲームのような感覚で建設業に興味を持ってもらえるのではないか、という期待だ。建設機械の自動化に、業界のイメージや働き方を変える可能性は確かにある、と実感した一日だった。

《丹羽圭@DAYS》

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