トヨタの国内販売リフォーム、部品・用品販売会社も一本化へ…そのねらいは【藤井真治のフォーカス・オン】

トヨタは新車販売チャネル一本化に続き、部品用品販売会社を一本化。

33社の販売会社は全国一つに統一され従業員9300人の大組織が出来上がる。

ねらいは一兆円規模の部品用品物流の構造改革による労働力不足などへの対応。

トヨタは国内の補給部品や用品/アクセサリー販売流通体制の一本化にも着手する。
トヨタは国内の補給部品や用品/アクセサリー販売流通体制の一本化にも着手する。全 2 枚

トヨタは国内新車販売系列の一本化に続き、補給部品や用品/アクセサリーの販売流通体制の一本化にも着手する。都道府県をベースに33社ある部品用品販売会社を一つに全国統一する。少子高齢化や労働力不足、国内市場での生き残り、という大義面分はあるが大手術をする背景はどこにあるのだろうか?

一兆円規模のトヨタの部品用品ビジネス

高い新車販売シェアと保有期間の長期化に伴って、トヨタ車の国内での保有台数は登録車だけでも2100万台を超える。その膨大な数の保有車両をメンテナンスや修理で支えるのがトヨタ品質を保証する補給部品。トヨタ純正部品と呼ばれている。

また、メーカー標準車に飽き足らない新車購入客のため販売店で装着されるナビやドライブレコーダー、エアロパーツなど用品/アクセサリーの需要も大きい。トヨタが国内で取り扱う部品と用品を合わせたビジネス規模は何と8000億~9000億にものぼる。

この大きな部品用品ビジネスは、都道府県を単位とする全国33店の部品販売会社がベースとなっている。各社は都道府県の冠のついた「部品共販」と言う社名を持つ。メーカーやメーカー傘下の用品会社から品質の確保された商品を仕入れ、地元トヨタ系販売のみならず提携の部品商、修理店、ガソリンスタンド、板金ショップに流すというクローズドなビジネス構造をとっている。

部品共販店は昭和の時代にトヨタの国内販売網整備と同時並行し各地に設立が進み現在に至っている。海外と異なり保守的な日本のユーザーは純正品志向が強く、トヨタの強い販売サービス網に支えられたこともあり、各部品共販店は部品や本用品を流し気持ちよく利益を出してきたと言えよう。仕組みを作りあげてきた先人の苦労をベースにしたトヨタの独占ビジネスとも言える。各社はトヨタ自動車が50%の株式を保有し、残りは地場のトヨタ販売店が持つという資本構成で各社社長はトヨタからの出向者が占めている。

真のねらいはロジスティクスの改善か

7月の記者発表資料によると、トヨタはその儲かっている共販店とトヨタの子会社タクティを2020年4月に統合し一つの会社にする。33社の共販店に存在した経営陣が一挙にいなくなり、すべて名古屋の本社傘下の事業所になるという前代未聞の大手術だ。まさに100年に一度の大変革に望むトヨタの本気度が伺える。

オーナーの異なる新車販売店4系列の一本化とは異なり、33社は全て資本の50%をトヨタが抑えているため会社統合自体はスムーズに実行されものと思われる。また、新会社の従業員数も33社プラス タクティとなっていて、マネージメント以外はドラスティックなリストラは当面行われないと思われる。それにしても従業員9300人の大組織。取引先との決済の全国一元管理や倉庫管理の統合などの作業は膨大になるであろう。

前述のとおり、トヨタの部品用品ビジネスは1兆円弱。その物流スケールはアマゾンジャパンの1.5兆、楽天の1.1兆に匹敵する。まさに両者が直面している配送、倉庫保管など物流上の人手不足問題を共有しているはずだ。ジャストインタイムのトヨタ的なオーダー、在庫、物流管理の仕組みは確立しているものの、新時代に即した改善を更にすすめるためにはやはり昭和の体制自体のリフォームが必要との結論に至ったようだ。

会社の一本化によって、倉庫自体の統廃合や配送業者の集中管理による効果が期待できそうだ。今回の統合の先には車両物流との統合、グループ内のダイハツや日野の部品物流との統合も念頭に置かれていると考えられる。

トヨタの国内体制リフォームはとどまるところを知らない。

日本一の会社トヨタは先人が築き上げた仕組みや体制を新時代に合わせリフォームしようとしている。時代が変わっているにもかかわらず、昭和の仕組みや制度を根本から変えようせずに新税や新制度、新既得権を積み上げる人たちも少しは見習うべきではないだろうか?

<藤井真治 プロフィール>
(株)APスターコンサルティング代表。アジア戦略コンサルタント&アセアンビジネス・プロデューサー。自動車メーカーの広報部門、海外部門、ITSなど新規事業部門経験30年。内インドネシアや香港の現地法人トップとして海外の企業マネージメント経験12年。その経験と人脈を生かしインドネシアをはじめとするアセアン&アジアへの進出企業や事業拡大企業をご支援中。自動車の製造、販売、アフター、中古車関係から IT業界まで幅広いお客様のご相談に応える。『現地現物現実』を重視しクライアント様と一緒に汗をかくことがポリシー。

《藤井真治》

藤井真治

株式会社APスターコンサルティング CEO。35年間自動車メーカーでアジア地域の事業企画やマーケティング業務に従事。インドネシアや香港の現地法人トップの経験も活かし、2013年よりアジア進出企業や事業拡大を目指す日系企業の戦略コンサルティング活動を展開。守備範囲は自動車産業とモビリティの川上から川下まで全ての領域。著書に『アセアンにおける日系企業のダイナミズム』(共著)。現在インドネシアジャカルタ在住で、趣味はスキューバダイビングと山登り。仕事のスタイルは自動車メーカーのカルチャーである「現地現物現実」主義がベース。プライベートライフは 「シン・やんちゃジジイ」を標榜。

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