【懐かしのカーカタログ】“新時代”のアルファは今も色褪せない…アルファロメオ 156 1998年5月

アルファロメオ アルファ156(1998年5月)
アルファロメオ アルファ156(1998年5月)全 8 枚

もう20年以上も前のことになるのかぁ……とこのカタログの表紙はそんな感慨を呼び起こす。何を隠そう僕自身、仕事で実車に試乗するや否や心を奪われ、自身の3台目のアルファロメオとしてこの『156』のV6(6速MTだった)に乗り換えたのだった。

それ以前は『164』、『GTV』、さらにその後は『166』を2台続けて。いずれもV6で乗ったのだが、このエンジンの高回転側の色気あるエンジン音、鼓動にすっかり身体がハマってしまった。

今も色褪せない、唯一無二のカタチ

アルファロメオ アルファ156(1998年5月)アルファロメオ アルファ156(1998年5月)
『156』について言えば、日本仕様のエンジンは当初その2.5リットルのV6と“ツインスパーク”と呼ばれた、これまた活きのいい生き物のようにレスポンシブだった2リットルの4気筒の2本立て。いずれも最初はMTのみの設定だったが、その時点で当時のBMW『3シリーズ』(E36)やアウディ『A4』(B5)を検討していたユーザーが、わざわざショールームに見に来る現象も起きたほどで、後にアルファロメオの大ヒット作となったのだった。

クルマ自身はそれまでの『155』『75』の直線基調のスタイリングから一転、クラシカルなディテールを隠し味に、セダンながら実にモダンで、いかにも新時代のクルマを思わせ、その鮮度は今みても決して色褪せていない。

アルファロメオ アルファ156(1998年5月)アルファロメオ アルファ156(1998年5月)
似たカタチがない(強いて挙げれば先代の『155』のハの字型のモチーフを引用した)ヘッドランプ、バンパーに大きく食い込ませた盾型グリルとその回りの旧車のような空気孔、前後ホイールアーチ上で浮かび上がって途中では薄く消えるボディサイドのキャラクターライン、金属製のドアハンドルとウインドゥにカモフラージュした後部ドアのハンドル……。

全体的にあっさりとシンプルであるが、ディテールはさり気なく凝ったもので、そうしたひとつひとつがオーナー心をくすぐった。ショーモデル由来の“ヌボーラブルー”と呼ぶ、光の加減でブルーにも薄黄色にも見える不思議なボディ色も(オプションだったが)用意された。

痛い目に遭っても、それを忘れさせた

後に『スポーツワゴン』と名付けられた、セダンとまったく同一の全長で仕上げられたスタイリッシュなワゴンも登場。その頃には2ペダル(“セレスピード”と“Qシステム”)が設定され、ユーザーの間口も広げた。一方で後期モデルはフェイスリフトを受け、次世代の『ブレラ』や『159』に繋がるフロントデザインとなったが、個人的には『156』の場合は当初のオリジナルデザイン以外は認められない……と今でも思っている。

日本仕様は(当初は)すべてスポーツサスペンションが組み込まれやや車高を落としていたが、走らせると、ハード一辺倒の一般的なスポーツモデルとは一線を画す、しなやかな足で駆け回る、アルファロメオ独特の爽快な走行フィーリングが味わえた。

アルファロメオ アルファ156(1998年5月)アルファロメオ アルファ156(1998年5月)
数少ないウィークポイントは最小回転半径の大きさ(ボディの大きな『166』のほうが小回りが効いた)と、やや危うげだった品質、耐久性(僕のV6マニュアル車も運転中にクラッチレリーズがバスン!とイッた。5万km超えたかどうかという頃だったと思う)。

けれどどんなに痛い目に遭ってもそのことを忘れさせる、眺めても乗っても心弾むコンパクトなスポーツセダンだった。

アルファロメオ アルファ156(写真は海外仕様)アルファロメオ アルファ156(写真は海外仕様)

《島崎七生人》

島崎七生人

島崎七生人|AJAJ会員/モータージャーナリスト 1958年・東京生まれ。大学卒業後、編集制作会社に9年余勤務。雑誌・単行本の編集/執筆/撮影を経験後、1991年よりフリーランスとして活動を開始。以来自動車専門誌ほか、ウェブなどで執筆活動を展開、現在に至る。便宜上ジャーナリストを名乗るも、一般ユーザーの視点でクルマと接し、レポートするスタンスをとっている。

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