【SUPER GT×DTM 交流戦】GT500チャンピオン ジェンソン・バトンが見た両シリーズの違いとは?[インタビュー]

ジェンソン・バトン選手
ジェンソン・バトン選手全 12 枚

ドイツを中心としながらも、オランダやベルギー、イタリアなど欧州で拡大を続けるDTM(ドイツツーリングカー選手権)。来シーズンは、ロシア戦のカレンダーへの復帰やスウェーデンでの初開催も決まり、ドイツのシリーズから欧州で最も人気のあるモータースポーツの一つへと発展している。

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日本のSUPER GT(S-GT)も、毎レース数万人の観客を集め、マレーシアやタイでの海外戦でも現地ファンがサーキットに詰めかける。この2つのシリーズは、来シーズンから「クラス1」と呼ばれる新しいテクニカルレギュレーション(技術規定)に基づいて造られたレーシングカーによって行われる。

「クラス1」の初レースとして、ドイツ・ホッケンハイムで開催されたDTMの最終戦に、S-GTのGT500マシン3台が参戦した。GT500は今年まで「クラス1」成立以前の技術規定に基づいているため、特に空力面などでDTM勢よりも有利とされた。だが、DTMが使用するタイヤはハンコックが供給するワンメイク(同一規格)である一方、4メーカーによる「タイヤウォーズ」が行われているS-GTでは、各タイヤメーカーがマシンに合わせて用意したタイヤを供給している。全く初めてのタイヤに、GT500勢が短期間で「合わせる」ことは困難が予想されていた。

現状では、その他の機能にも違いがあり、厳密な意味でのコンペティションは難しい。しかし、同じコース上で2つの異なるシリーズに参戦するマシンが交流戦を行うことは、双方のシリーズがさらに発展していくための、非常に大きなステップとなる。「ハコ」のレースが大きく変わる時代の節目とも言えるべきイベントに参加した、元F1チャンピオンであり昨年のSGT王者でもあるジェンソン・バトン選手に密着した。

金曜日、初の合同練習走行を終えて

----:初の合同練習走行を終えて、まずこのレースについてどう思いますか?

ジェンソン・バトン選手(以下敬称略):ホッケンハイムには、1998年にフォーミュラフォードのレースで来たのが最初だった。その週末は、ちょうどこんな(小雨模様の)天気だったのを覚えているよ。その思い出のあるサーキットで、エキサイティングなレースができるのが楽しみだね。2つのシリーズが合同でレースをやる。ファンにとってはもちろん、僕たちドライバーを含め、両シリーズに携わるすべての人々にとっても特別な週末だよ。

----:今週末のレース、見通しはいかがですか?

バトン:木曜日に特別走行時間が設けられて、少しテストができた。サーキットの状態やタイヤの確認をしたけど、まだまだやることはたくさん残っているね。特に(ハンコック製)タイヤはかなり違うから、全く初めてのタイヤにマシンのセッティングやドライビングを合わせていくのは時間がかかるよ。

昨日は、サーキットはまだ「グリーン」(路面にほこりなどがたまり滑りやすい状態)だったし、今日はウェット。これから路面の状態がどうなるか分からないから、何とも言えないね。タイヤがキチンと働くように(マシンのセットアップを)作っていくのは大変だと思う。それから、GT500の場合ウェットタイヤとドライタイヤのラップタイム差はだいたい8~10秒だけど、DTMでは20秒くらい違うらしいんだ。

----:DTMとGT500では、まだマシンそのものにも違いがありますね。

バトン:空力面での自由度が高いからマシン性能はGT500の方が上だという見方もあるけど、コース上でどうなのかはまだ分からない。僕たちにはハンコックタイヤの経験が無いことがハンデだけど、マシンのダウンフォースは大きいことを考えると(GT500とDTMのマシンの間で)性能はバランスが取れているかも知れない。明日、予選、レースで一緒に走ればもっと良く分かるだろうね。とにかく楽しむよ!

土曜日の第1レースを終えて

----:6番グリッドからスタートして9位フィニッシュでした。SGTではスタンディングスタートを行わないため、第1コーナーまでがまず難しかったと思いますが、いかがでしたか?

バトン:1速ギヤに入りづらいときがあるので、スタートはかなり心配だった(笑) 。ポジションは1つ落としたと思うけど、まあまあのスタートが切れて安心した。やっぱり一番難しかったのは、タイヤの使い方だった。内圧がかなり上がって、グリップしなかったんだ。タイヤを替えてからはいいリズムでプッシュできたから、後半は本当に楽しんだよ。

----:実際にレースをしてみて、マシンの違いはどんなところに感じられましたか?

バトン:マシン特性はかなり違うね。(S-GTは)やっぱりストレートスピードが速いし、ブレーキ性能も高い。でも、前方向のトラクション性能はDTMマシンの方がかなり良い。DTM勢は、向きを変えてスロットルを踏むとスッと加速していくけど、僕ら(S-GT勢)はすぐにオーバーステア。だから、例えば高速コーナーでパワーをかけるのが難しい。

----:明日はどう戦いますか?

バトン:日本では、クルマの基本セッティングができていて、そのマシンに構造やコンパウンドの違うタイヤ装着して主にタイヤ側でセットアップを詰めていくんだ。でも、ここは全てがゼロから。今日までに分かった事を、明日のセッションに活かして頑張るけど、(ウェットタイヤに関しては)本当にデータが無くて苦労しているから、天気が回復するといいね。ドライタイヤなら、もう少し分かっているから…。

----:バトルは楽しめましたか? 特に、DTM勢は接触すれすれの走りをしますが。

バトン:(NSX-GTの)独特な重量バランスは、直線でのトラクションでは有利なんだけど、フロントタイヤの温度を上げるのに苦労するんだ。最初の数周はリズムがつかめなくてちょっと難しかったけど、中盤以降はペースが上げられた。バトル面では、DTMはSGTと違ってスペースを空けていれば(少しの)接触は許される。ほぼクリーンなバトルで本当に楽しめた。このコースは抜きどころもあって楽しいサーキットだね。明日はもっと楽しみだよ!

日曜日の第2レースを終えて

----:まず今日のレース、それからこの週末を通しての感想を聞かせて下さい。

バトン:ウェットタイヤには、やっぱりまだ苦労したよ。ベストは尽くしたんだけど、(ラップあたり)3秒の差を埋めるのは無理だった。富士でのレースに向けては、たくさんのことを学べた週末だったと思う。日本のドライバーには、良いレースができるよう、僕たちが学んだことを全部伝えておくよ。

----:例えばどんなことでしょう?

バトン:(DTMの)彼らは縁石に乗ってパワーをかけて、オーバーステアの状態でもそのままの姿勢をキープして、最後にピシッとグリップを得るタイミングがあるみたいだ。GT500はコーナー出口でグリップするようにして、スロットルをグッと踏んで加速していく。そんなマシン特性の違いがわかると、セッティングや走りの戦略など、日本でのレースに役立つと思う。

----:逆にDTM勢にアドバイスするとしたら?

バトン:何も教えないよ(笑)。まず、ここより富士の方がかなりバンピー。我々(ヨーロッパ出身のドライバー)にとっては、日本のサーキットは、例えばルマンみたいにクルマが跳ねると感じると思う。でもそれ以外はすごく似ている。ここのターン1のように縁石がある「ソーセージカーブ」があるし。いずれにしても、彼らはバランスの良いセッティングをすぐに見つけるだろうね。面白いレースになるはずだから、楽しみにしている。

----:DTMにフルシーズン参戦する予定はありますか?

バトン:今のところ、来年に関しては何も決まっていないので、どうなるかな(笑)。とにかく、この週末は本当に楽しめたよ。色んな人たちのサポートがあり、大きな自動車メーカーが3社関わっている、素晴らしいシリーズだよね。将来、彼らと一緒にレースをするのもいいかもね。

この週末を通して、バトン選手からは「楽しい・楽しむ」という言葉が繰り返し聞かれた。もちろん、チャンピオンシップに影響のないレースなため、リラックスしていたのは間違いないだろう。ただ同時に、「エキサイティング!」という表現で、「クラス1」という新しいカテゴリーの始まりに立ち会えた喜びも感じられた。DTMとの交流戦第2弾は、11月22~24日の週末に「富士ドリームレース」として静岡県の富士スピードウェイで開催される。4台のアウディと3台のBMWを迎え撃つGT500勢。ホッケンハイムの借りを返すようなレースを期待したい。

《石川徹》

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