MaaSにいま求められているのは「きめ細かさ」 実用化の鍵は…オートモーティブワールド2020

デロイト トーマツ コンサルティングのパートナー(執行役員)の周磊氏
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MaaSにいま求められているのは「きめ細かさ」

モビリティ・アズ・ア・サービス~MaaS。漠然とした表現であるが、世界各地のモビリティ最新事情に精通するデロイト トーマツ コンサルティング合同会社のパートナーであり大阪府立大学客員教授の周 磊氏は、「複雑に考えすぎないほうがいい」というポリシーを持っている。MaaSを「移動の中でのサービス」とシンプルに捉え、サービスを中心に据えて移動の効率化を進め、その中で収益性を議論していくことが重要ということだ。

その中で最近の流れとして挙げたのが、意外にも「きめ細かさ」というキーワードだった。

「たとえばUberは、英語圏生まれのサービスということでグローバルスタンダードを目指していますが、その中でカスタマイズを行いローカルマーケットに進出しています。具体的な例としては、病院患者専用モビリティサービスや、ペット乗車可能なモビリティサービスなど、その内容は多岐にわたります。一方DiDiは、アジア企業らしく進出先マーケットの風土に合わせるのが特徴で、日本でも合弁事業を立ち上げ、日本文化に適応したサービスを展開しています。今後、海外展開を視野に入れる日本のプレーヤーは、海外プレーヤーのローカル文化への適応事例を押さえておくべきでしょう」

Uberが始めたようなきめ細かいサービスは、すでに日本でもアナログな形で実現されている。日本のプレーヤーは、これをデジタル化することで海外マーケットへ進出できる。一方国内では、利用者に応じてアナログ・デジタル対応を使い分けることが重要というのが周氏の見解だ。これについては、今の高齢者とこれからの高齢者はデジタル機器への親和性が異なるので、今の高齢者に対しては電話などを使いながら利用率を増やし、若い人のためにデジタル対応を進めていくなど、双方のアプローチをミックスした進め方を取る必要があるとも語っていた。これも一種のきめ細かさだろう。

MaaS時代にこそ「ものづくり」が武器になる

メルセデスベンツ(ダイムラー)が提供する「car2go」
自動車業界ではダイムラーの対応が目立つという。カーシェアリングのcar2goやマルチモーダルアプリのmoovelなどのサービスを単独で立ち上げつつ、2016年あたりから世界各地のタクシー配車やバス予約などの事業者に積極的な出資を行なっている。moovelについては公共交通との連携も進めるなど、MaaSの取り組みを加速中だ。2018年にはダイムラーとBMWのモビリティサービス部門が一体化しており、スケールメリットを生かしたサービス拡充が期待されるとのことだった。

しかし自動車業界にとってはサービス部門との連携を強めていくだけでなく、ものづくりそのものを磨き上げることも重要になると周氏は語る。

「モビリティサービスに良いクルマを提供していけるか。これは自動運転になっても今まで同様に重要になります。具体的には稼動率の高さ、メンテナンスコストの低さなどが重視されるでしょう。日本のクルマは壊れないことで世界的に定評があります。これはMaaSにおいても武器になります。もちろん、ただの作り手のポジションに安住するのみならず、新しい時代に適応しつつ、自分たちの強い部分をアピールしていくことが必要とされます」

ひと口に「新時代への適応」と言っても、必要となる取り組み内容はかなり多彩であり、スマートフォンでのオーダーやアクセスがしやすいか、助手席や後部座席の構造はどうするか、会議室機能を目的とした、運転手に情報が漏れないような空間の設計をどうするか、高齢者を安全に病院に連れて行けるかなど、様々な観点から独自の作り込みを進めることが必要になる。こうしたコンテンツだけでなく、パーソナルモビリティやキックボードなど、モビリティの種類もまた多様化していく。ハードとコンテンツの掛け算がトピックになるとのことだった。

MaaS分野のGAFAを目指すために

モビリティサービスはいうまでもなく、利用しやすい料金であるかどうかも大事になる。事業者にとってはコスト計算も欠かせない。MaaSは儲からないという声も一部には存在する。多くの公共交通が経営に苦労している様子を見れば想像がしやすいだろう。そうした中でMaaSの運営はどうあるべきか、その将来像についても聞いた。

「GoogleやFacebookなどと違うのは、“モノ”のコストが存在することです。車両やドライバーが必要であり、それらに費用を支払わないとなりません。ゆえに収益構造は複雑になります。収益を出すにはボリュームを増やしていく必要がある。ボリュームの拡大には、先ほど言った、きめ細かいサービスを増やすことに加え、データセンターやAIエンジニアへの投資が大きな役目を果たします。実際、UberやDiDiはIT系の人材が何千人といます。」

UberやDiDiは世界各地に展開しているが、プラットフォームはあくまでひとつ。その単一のプラットフォームをベースに、膨大なデータを処理しなければならないのだが、UberやDiDiはITレベルが高いので、ほとんどシステムダウンはしない。ところが日本のプラットフォームは、国内のみのサービスであってもしばしばトラブルを起こしている。ITの技術力が足りないことを露呈していると周氏は指摘する。

DiDiはPayPay利用でタクシー代が半額になるキャンペーンを実施するなど、ローカルサービスに注力する
多くの人たちがGoogleやFacebookを使うのは、ひとことで言えば使いやすいからであり、そのためにも技術力、つまり人材の確保が重要。国内だけでなく海外にも視野を広げ、いかにして優秀な人材を取ってくるか、あるいは海外の会社と手を結ぶかなどが大事になると周氏は述べていた。

「2020年の東京オリンピック・パラリンピックは、もちろん日本のMaaSビジネスにとっては絶好の舞台です。ここで大事なのは、利用者のオーダーに対してスムーズに対応でき、そのサービスをリーズナブルに提供できるかどうか。オーダーしてもすぐに車両がやってこないというのでは困ります。そして日本のMaaSが、世界と比べて何が勝っていて何が劣っているかを検証する絶好の舞台にもなります」

「稼げるMaaS」の実現へ向けて

トヨタ e- Palette は東京オリンピックで活用される(写真は東京モーターショー2019)
その一方でMaaSで利益を出すには、得意分野に集中すべきであるとも周氏は指摘していた。たとえばUberはグローバルスタンダードを目指しながら、中国など一部の国からは早めに撤退している。MaaSでは前述のようにもののコストが嵩み、全部を自分で抱えると大きなコスト構造になるので、いかに効率化していくかも鍵になると語っていた。

「その上で、航空系と鉄道系など、異なる分野のプラットフォームが連携していくことが求められます。データの囲い込みをせず、議論を重ねながら、シナジー効果を出していく時期に来ていると思います。得意分野は違うのですから、他の業界、他の地域との掛け算をやっていけばいいのです。MaaSは自分たちだけですべてを制覇できるような世界ではないので、連携によってボリュームを実現していくことが大事なのです」

昨今の日本ではMaaSという言葉だけがひとり歩きし、議論ばかり先行しがちな印象がある。こうした状況について周氏は、小さなコミュニティでもいいので「稼げるMaaS」を実現してゆくことが重要と語る。そこで日本の良さを発揮できれば、国内外に日本版MaaSが広がっていくだろうと期待を示していた。

周氏は、2020年1月15日に開幕する自動車技術展「第12回 オートモーティブワールド」のMaaSフォーラム「迫る自動運転MaaSの実用化、その鍵は何か」の中で、DiDiゼネラルマネージャー、WeRideのCEOとともに講演をおこなう。MaaSの最前線を知る、またとない機会となる。

■本講演の詳細は
https://reed-speaker.jp/Conference/202001/tokyo/top/?id=AUTO&lang=jp

■第12回 オートモーティブワールド
自動運転、EV/HEV、カーエレクトロニクス、コネクティッド・カー、軽量化など、自動車業界における先端テーマの最新技術が一堂に出展。今年は新たに「MaaSフォーラム」を開催し、MaaS実用化に向けた注目テーマでの講演もおこなわれる。

■展示会のご入場には招待券が必要です。招待券請求(無料)受付中!
※招待券の事前登録により、入場料(5,000円)が無料になります。
https://regist.reedexpo.co.jp/expo/NWJ/?lg=jp&tp=inv&ec=AUTO

会期:2020年1月15日(水)~17日(金)10:00~18:00 (最終日のみ17:00まで)
会場:東京ビッグサイト
主催:リード エグジビション ジャパン株式会社
■第12回 オートモーティブワールド 詳細はコチラ!

《森口将之》

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